カナダのオンタリオ州で開催される「RBCカナディアンオープン」。現地メディアの関心を一身に集めていたのは、メジャー2勝を誇るコリン・モリカワだ。5月の「全米プロゴルフ選手権」以来、約1カ月ぶりのツアー復帰となる彼だが、その間、人生にはゴルフ以上の劇的な変化が訪れていた。待望の第一子が誕生し、「父親」として新たなスタートを切ったのである。

新米パパのリアルな日常

モリカワにとってこのRBCカナディアンオープンという大会は、非常に感慨深い場所だ。会見で彼は、「実は2019年に、プロとして初めて出場したのがこの大会だったんだ」と語っている。独身の若者としてプロデビューを果たした思い出の地に、7年後の今、メジャー王者となり、さらに「父親」という新たな肩書きを背負って帰ってきた。まさに「新たなスタート」を切るにふさわしい舞台と言える。

会場に姿を現したモリカワの表情は、これまでにないほど穏やかで喜びに満ちていた。会見の席で父親になった心境を問われると、「カメラのレンズを見つめるように、ずっと我が子から目を離せないんだ。他のことなんてすべて忘れてしまうくらいにね」と相好を崩した。

しかし、新米パパとしての現実は甘くない。ツアーの先輩たちから様々なアドバイスを受けていたものの、睡眠不足の過酷さは想像以上だったようだ。

「睡眠の重要性を当たり前だと思っていたけれど、あれは本当だった。今では、50分の仮眠をとって体を動かすことにすっかり慣れてきたよ(笑)」と、トップアスリートらしからぬリアルな苦労をユーモア交じりに語った。

コース上でも心境の変化は大きい。「以前よりずっとポジティブになれた。心が別の場所(家族)にあることで、体の力みが抜けて純粋にゴルフを楽しめている」と、メンタル面での良い影響を実感している。

背中のケガと、トップアスリートの「トラウマ」

この約1カ月間の休養は、単に家族との時間を過ごすためだけのものではなかった。モリカワの口から明かされたのは、これまで語られていなかった身体の不調である。

画像: ザ・プレーヤーズ選手権での棄権以来、背中の痛みに悩まされ続けてきたコリン・モリカワ(写真は26年キャデラック選手権)

ザ・プレーヤーズ選手権での棄権以来、背中の痛みに悩まされ続けてきたコリン・モリカワ(写真は26年キャデラック選手権)

「実は3月の『ザ・プレーヤーズ選手権』から、背中のケガにずっと悩まされていたんだ。全米プロを終えた時点でも、まだ違和感が残ったままだった」

常に完璧なボールストライキングを武器としてきた彼にとって、痛みを抱えながらスウィングを調整し続ける日々は、想像以上のストレスだったに違いない。

「だからこそ、ゴルフから完全に離れて、人生で起きている別の素晴らしい出来事に意識を向ける『完全なリセット』が必要だったんだ」

しかし、メジャー王者とはいえ一人の人間である。会見の終盤で彼は、トップアスリートゆえに抱えるケガ再発への恐怖心(本音)も吐露している。

「体調は良くなっているが、また同じことが起きるのではないかと少し神経質になっている部分もある。ある種のトラウマのようなもので、それに対処しなければならない」

第一子の誕生が彼に絶対的な休養を与えてくれた一方で、彼は今もなお、見えない恐怖と戦いながらスウィングの「信頼」を取り戻そうと必死にもがいているのだ。

メジャー王者の鋭い戦略眼と、ナショナルオープンへの執念

とはいえ、ただソファに寝転がって完全なオフを過ごしていたわけではない。テレビで「メモリアルトーナメント」や「全米女子オープン」を熱心に観戦し、戦いの舞台へのモチベーションを高めていた。

いざコースに立てば、新米パパの顔から一転、メジャー王者の鋭い勝負師の顔へと切り替わる。今週の舞台であるTPCトロント(ノースコース)のプロアマ戦を終えた後、彼は次のように詳細な分析を披露した。

「フロントナインは左へのドッグレッグが多いが、今週は左からの風が吹き、さらにフェアウェイは左から右へ傾斜している。だから、ボールをしっかりコントロールして打たなければならない。ラフも深く、フェアウェイキープが極めて重要になる」

今週の「RBCカナディアンオープン」は、次週に控える今季メジャー第3戦「全米オープン」へ向けた重要な試金石となる。しかし彼にとっては、それ以上の意味がある。

「ナショナルオープン(国の名がつくオープン競技)で勝つことは歴史に名を刻むことであり、まだ自分は勝ったことがないからぜひ勝ちたい」と、カナダの国を冠した今大会のタイトル奪取へ強い意欲を燃やしている。

心身ともにリフレッシュし、「完全なリセット」を遂げたコリン・モリカワ。50分の仮眠で戦う新米パパは、守るべき家族という新たなエネルギーを胸に、そしてメジャー王者としての研ぎ澄まされた感覚を研ぎ直し、再び頂点への道を歩み始める。

写真/岩本芳弘


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