歴史的快挙に挑んだ猛チャージと、ユーモアを忘れない余裕
今季すでに「バルスパー選手権」「RBCヘリテージ」「チューリッヒクラシック」で3勝を挙げているフィッツパトリック。この大会で勝てば、スコッティ・シェフラー(2025年)以来となるシーズン4勝目、そして「イングランド人選手として初のシーズン4勝」という歴史的快挙が懸かっていた。
メジャー覇者としての貫禄と執念を存分に見せつけたこの快進撃の裏には、アマチュアゴルファーにも大いに参考となる「ある技術的な変更」が隠されていた。

最終日、この日のベストスコアタイとなる「64」でラウンドし、単独2位でフィニッシュしたM・フィッツパトリック(写真は26年VMフェニックスオープン)
最終日のコースは、激しい雨によってコンディションが一変していた。グリーンが柔らかくなった反面、ボールのバウンドやスピン量の予測が難しくなる。しかしフィッツパトリックは「今日は雨の中でのスピンコントロールが何よりも重要だったが、上手く対応できた」と、トッププロならではの高い状況対応力を見せつけた。
そのハイライトとなったのが、最終18番ホールでの見事なイーグルフィニッシュだ。セカンドショットについて問われると、「完璧な距離だった。完璧な4番アイアンだったよ」と手応えを口にした後、こう付け加えた。
「それに、今週(18番で)初めてフェアウェイをとらえたような気がするから、そのチャンスをしっかり生かせてよかったよ」
【動画】M・フィッツパトリックが「完璧な4番アイアンだった」と話す最終日18番セカンドショット【PGAツアー公式YouTube】
PGA TOUR Highlights | RBC Canadian Open | Round 4 | 2026
youtu.be実は彼、この18番ホールで3日目まで一度もフェアウェイを捉えられていなかった。しかし、絶対にスコアを伸ばしたい最終日の土壇場でついにフェアウェイをキープし、見事に最高の結果へと繋げてみせたのだ。極限の戦いの中で発揮されるこの勝負強さこそが、彼の根底にある。
パッティングスタッツを劇的向上させた「引き算」のルーティン
そして、この日のビッグスコアを支えた最大の要因こそが、今週から新たに取り入れた「パットのルーティン変更」だった。
事実、彼は前週の「メモリアルトーナメント by ワークデー」まで、ストロークス・ゲインド(SG):パッティングが「-0.221(全体の112位)」と、グリーン上のフィーリングに深く苦しんでいた。大会前の公式データ予測でも「パットの不調」を理由に優勝候補の条件から除外されていたほどだ。
しかし彼は、自らのストロークのプロセスを冷静に見直し、非常にシンプルかつ効果的な改善を行った。
「いつもは、カップを見ながら素振りをして、ボールの前にアドレスした時にもう一度カップを見るというルーティンだった。でも今週は、その『(アドレスした後の)カップを見る』動作を省いたんだ」
【動画】M・フィッツパトリック、新ルーティンで18番イーグルパットを沈める!【PGAツアー公式YouTube】
PGA TOUR Highlights | RBC Canadian Open | Round 4 | 2026
youtu.beなぜ、プロにとって生命線とも言える「ラインや距離感を確認する動作」をあえて減らしたのか。彼は明確な理由を語る。
「少し時間をかけすぎていたんだ。だから、自分自身を解放して、ストロークにもっと流れ(フロー)を持たせるようにした。そのおかげで、ずっと良いパットが打てるようになったよ」
この直感的なリズムとフローを重視する試みは見事に的中する。今大会のSG:パッティングは「4.730(13位)」へと飛躍的に向上し、事前のデータ予測をあざ笑うかのようにリーダーボードを駆け上がったのである。
情報を入れすぎて思考がフリーズしたり、アドレスで固まってスムーズな始動ができなくなったりするのは、多くのアマチュアゴルファーも抱える共通の悩みであり、明日からすぐに試せる実践的なヒントとなるはずだ。
「良い一週間だった。最初からこの結果が分かっていれば喜んで受け入れただろうね」と満足げに大会を振り返ったフィッツパトリック。
次戦は、いよいよ過酷な全米オープン(シネコックヒルズ開催)である。「グリーンが極めて厳しいので、グリーン周りが最も重要になる」と語る彼の研ぎ澄まされたショートゲームと新たなパッティングルーティンが、メジャーの舞台でどのような魔法を生み出すのか。次週の戦いからも目が離せない。
写真/岩本芳弘



