2026年に創部された「未来富山高校女子ゴルフ部」。学費免除の代わりに、ゴルフ場でキャディや裏方業務をこなしながら腕を磨くという前代未聞の環境だ。しかも、部員はたった1名。その初代監督に、桑木志帆プロを年間3勝に導いたツアーコーチであり、プロゴルファーの中村修が就任した。エリート街道から外れた少女と、名伯楽による「富山からの下剋上」ドキュメンタリーが、いま始まる。その第2回目をお届けします。

富山県女子アマを最年少で獲得した杉崎希歩

今年から新設された未来富山高校女子ゴルフ部の監督に就任して3カ月が経ちました。私は富山に常駐しているわけではなく、千葉と富山の二拠点生活。月の半分程度を富山で過ごし、監督業をこなしています。

部員はわずかに1名。杉崎希歩(すぎさき・のあ)という地元・富山県出身の生徒。最年少で富山県女子アマを獲った有望株でもあります。

杉崎にはじめて会ったのは2026年の年明け早々のこと。インターネット上の生徒募集告知を見て連絡をくれた彼女に会いに、富山へと向かいました。

外は雪がちらつくなか、ご両親、そして杉崎本人と待ち合わせしたのは市内のゴルフ練習場です。まだ中学3年生、体はまだまだ出来上がっていませんし、寒い日だったこともあってショットは左右に散っていました。

「左右どちらにもミスが出るのが悩みなんです」とはそのときの本人の弁。安定したドローが打ちたいが、ときにスライスも出てしまうのが悩みだそうです。

スウィングの問題もあるし、ギアもフィッティングする必要がある。それに、トレーニングを重ねて“打てる身体”を作り上げる必要もある……。彼女の将来を想像しながら、思わずそんなプランを考えていました。

その日の視察には、学校関係者も数名同行していましたが、私がもっとも感心したのは、見知らぬ大人たちに囲まれても物おじしない杉崎の態度でした。

聞かれた質問に対し、相手の目を見てしっかりと受け答えをすることができる。自分の言葉を持っている。ゴルフの上手な選手は多くいますが、「自分の言葉で話す」ことはなかなかできるものではありません。芯のある子だな、鍛えがいがありそうだな、そんなことを思わずにはいられませんでした。

将来の目標はと問えば「稼げるプロになること」という、まだ幼さの残る外見とは裏腹の芯の通った答えが返ってきます。その日から約半年、その夢の手助けをするのが、差し当たっての私のミッションとなっています。

これまではただボールを打っていただけのゴルフでしたが、空中に打ち出されたボールがなぜ曲がるのかや、理想の弾道を描くためにはどのような入射角、どのようなフェース向きが必要なのかといった座学。そして、全面的に協力してくれている立山カントリークラブをプレーさせていただくことで、彼女は少しずつ、しかし着実に成長しています。

5月の中旬には中部女子アマ選手権が富山県の呉羽CCで行われました。上位15位以内に入ると日本女子アマに出場できる3日間競技です。2日目までの上位80位以内の予選カットがあるので、まずは3日目までプレーできることを目標にスタートしました。

画像: 理学療法士の指導の下トレーニングにも日々取り組んでいる

理学療法士の指導の下トレーニングにも日々取り組んでいる

初日はスコア「75(パー71)」の31位タイ。現在の杉崎にとっては及第点の初日でしたが、2日目は翌日のことを考えすぎて寝られず、睡眠不足から集中力を欠き83とスコアをまとめられません。

結局“最下位”の79位で3日目に進むことはでき、最終日は75とスコアをまとめることができましたが、最終順位は20オーバー66位タイでした。

画像: 立山CCでは毎日9ホールをラウンドしながら練習に明け暮れる

立山CCでは毎日9ホールをラウンドしながら練習に明け暮れる

この試合のメダリストは高校2年生の伊藤せあら選手でトータル9アンダー。同世代のトップ選手とのレベルの差を感じる試合となりました。アテスト後は、自らの現在地点を思い知らされ、涙を堪え切れません。

しかし、ここでスイッチが入るのが杉崎の良いところ。「来年は絶対に上位で通過して日本女子アマに出ます」と決意を固めると、この試合以降は練習にもトレーニングにも取り組む姿勢が変わっていきました。

再び立山CCでの日々に戻ると、足りていなかったバンカーショットとアプローチ、そしてパッティングといった基礎を磨くとともに、ティーイングエリアでの立ち方、セカンドショットのライの見極めやクラブの入れ方といった基本的な技術を徹底的に反復しました。

日々の取り組みが結果となって返ってきたのが、5月25日に魚津国際CCで開催された「富山県高等学校総合体育大会ゴルフ競技」です。この試合で杉崎は「39・33」でプレーし、女子の部ベストグロスを叩き出し、見事優勝を果たしたのです。

画像: 富山県高校総体でメダリストとなり成長を感じさせた

富山県高校総体でメダリストとなり成長を感じさせた

杉崎は、技術的にも体力的にもまだまだです。しかし、1年後、2年後にどうなっているか、期待させるポテンシャルをたしかに感じさせてくれてもいます(あまり褒めてはいけませんが)。

一歩戻って二歩進む。それでも一歩一歩、前へと進んでいく杉崎希歩の成長を、読者の皆さんにもともに見守っていただければと思います。


This article is a sponsored article by
''.