喉が渇く前に勝負は決まっている? 水分補給に潜むゴルファーの誤解

JSPO-AT(日本スポーツ協会- 認定アスレティックトレーナー)や柔道整復師の資格を持つトレーナー、真田和俊氏(撮影/岡沢裕行)
「いくら水を飲んでも、熱中症になってしまう人はいる」とプロトレーナーの真田和俊氏は警鐘を鳴らす。
人間の体は、汗とともに水分だけでなくナトリウムをはじめとした大切なミネラルも同時に放出している。そのため、純粋な水だけを大量に摂取し続けると体内の塩分濃度が薄まり、防衛反応としてさらに水分を排出しようとする悪循環、いわゆる「自発的な脱水」を引き起こしやすいのだ。真田氏によれば、ラウンド前や最中には水ではなく、ナトリウムやミネラルがしっかりと含まれた麦茶や、適度なスポーツドリンクを意識的に選ぶことが基本となる。
ランチのタイミングでビールを飲むゴルファーも多いだろう
ここで特に注意したいのが、日常的に愛飲しているゴルファーも多い「緑茶」や、ラウンドのお楽しみである「ビール」の存在だ。これらは非常に強い利尿作用を持っているため、真田氏に言わせれば「みずから進んで脱水しに行っているようなもの」だという。
お酒を飲まないからといって安心し、水と緑茶だけで1ラウンドを回ろうとすれば、どれだけ意識して水分を口にしていても熱中症の魔の手から逃れることはできない。人間の体は、体重の3%以上の水分が失われた時点で目に見えてパフォーマンスが低下する。まずは「何を飲むか」の選択から、真夏のマネジメントは始まっている。
「スポドリが甘い」は危険信号、ゴルファーを悩ませる冷却のジレンマ

首筋や脇の下、太ももの付け根に当てると効果的だという(※画像はイメージ)
自分が深刻な水分・塩分不足に陥っているかどうかは、自らの「味覚」が教えてくれる。普段なら少し甘ったるく感じるはずのスポーツドリンクや経口補水液を飲んだ際、もし「甘くて美味しい」と感じたなら、それは体からの緊急の危険サインだ。
「体内バランスが崩れている証拠であり、そのまま放置すればふくらはぎや足の裏がつるなどの脱水症状を引き起こしやすくなります。そうなる前に、1ラウンドで最低でも1.5〜2リットル以上の適切な水分を、喉の渇きを感じる前に少しずつ補給し続けるルーティンを確立してほしい」と真田氏は指摘する。
また、上がってしまった体温を効率よく下げるための冷却スポットにも、ゴルファー特有のジレンマが存在するという。
効率的なアプローチとしては首筋や脇の下、太ももの付け根といった大きな血管が通る場所を冷やすのが王道。近年では、細かい氷粒子で体内から直接深部体温を下げる「アイススラリー」の飲用も効果的だ。
さらに真田氏が挙げるのが、毛細血管が集中している「手のひら」を冷やすアプローチである。他競技の現場でも広く取り入れられている確かな冷却法だが、ここでゴルファー特有の「手が濡れてグリップに影響するのを嫌う」という問題が浮上してくる。ハーフターンなどの休憩をうまく利用して手のひらを効率よく冷やす工夫ができるかが、夏のコースを戦い抜く知恵となる。
さらに、真田氏は紫外線から身体を守るアームカバーなどの重要性も説く。
「人間の体は、紫外線によって傷ついた皮膚の組織を修復するために、想像以上の莫大なエネルギーを消費しています。これが、夏ゴルフの後に襲ってくる『寝ても疲れが取れない、体がだるい』という重い疲労感の正体なのです」
夜になっても体が火照った状態が続き睡眠の質が著しく低下すれば、翌日のラウンドで熱中症に罹る確率はさらに上がってしまう。
自律神経を整えるトータルサマーマネジメント
このように、過酷な夏を生き抜くためのコンディショニングは、単に「1.5リットルの水分をノルマのように飲む」といった表面的な対策だけでは完結しない。ドリンクの種類による吸収率の違いから、手のひらや血管の冷却、さらには紫外線がもたらす自律神経への影響まで、すべてをトータルでコントロールする視点が必要となる。ウェアの縛りやプレースタイルといった、ゴルファー特有のこだわりと戦いながらも、自分の体格や味覚の変化に耳を傾ける冷静さが求められる。
我々アマチュアゴルファーが夏の間も素晴らしいパフォーマンスを維持し、元気に18ホールを駆け抜けるためには、プロトレーナーが明かした科学的なアプローチを素直に取り入れるのが最善の道だ。
「まだ大丈夫」という過信を捨て、ウェアを脱いだ後の体のケアまで含めて夏ゴルフをマネジメントすること。それこそが、翌日に疲れを残さず、最高の笑顔でクラブハウスを後にするための、真の勝者のルーティンと言えるだろう。



