ちょっとだけマイルド感を出す! 工房の王道チューン「番手ずらし」
GD 今日の依頼は、アイアンのフルセッティングですか?
今井 はい。5番からPWと52度、58度の8本を「コンボセット」に仕上げていきます。
GD 5番は「ミズノプロ225」、6番からPWが「ミズノプロ719」、ウェッジが「ボーケイSM10」ですね。
今井 この3つを飛距離の階段をしっかり作り、振り心地の統一を狙って組んでいきます。
GD 5番だけが中空なんですね。
今井 気に入ったアイアン型ユーティリティが見つからず、アイアンの流れで5番アイアンをユーティリティ的に使いたいということで、5番だけが「ミズノプロ225」となっています。中古で単品を購入されたようです。

5番が「ミズノプロ225」、6~PWが「ミズノプロ719」、ウェッジは「ボーケイSM10」のコンボセットに仕上げていきます
GD アイアン型ユーティリティは、アマチュアにしたら難しいクラブなのであまり使っている人を見かけません。メーカーも需要がないから作らなくなってしまいました。
今井 あったとしても、いいかにも中空のようなヘッドで、1本だけ特殊なクラブが入っているようになってしまいます。プロも同じシリーズの中から中空ヘッドを選び、ロングアイアンとしてセッティングする人が増えています。
GD 今回は年代も、シリーズも違いますが、同じ「ミズノプロ」ということで統一しているんですね。「ミズノプロ719」は米国をはじめとするグローバル市場に展開した「JPX919フォージド」を日本向けにアップデートしたアイアンなので、難易度で比べると、どちらも「難しすぎず」と言ったところでも共通しています。
今井 アイアンがストロングロフト化する中でアイアンは6番、もしくは7番までという人が増えていますが、そこに中空のアイアンを入れ、ユーティリティのように使うという選択はありだと思います。
GD そうはいっても5番は5番。それなりの難しさはあると思います。
今井 なので今回は5番には「ツアーAD75(R)」をおすすめしました。スチールよりもカーボンのほうが球を上げやすいので、その性能をいただき、やさしい5番アイアンに仕上げてしていきます。
GD 6番からPWは?
今井 「NSプロ 850neo」のSフレックスを「番手ずらし」で入れます。
GD 6番アイアンに5番用のシャフトを入れることで振り心地がマイルドになる?
今井 そうですね。「850neo」にはSRの設定がないので、Sでは硬い、Rではやわらかいといった場合に、中間を狙うために「番手ずらし」という手法を用います。これはけっして特別なことではなく、工房ならではの「王道のチューニング」といっていいでしょう。

「番手ずらし」をするとシャフトのカット量が増えるため、重量もほんの少し軽くなり、振り心地がよくなります
GD 5番のフレックスをRにした理由もそこにある?
今井 カスタム用のカーボンシャフトのSは硬めなので、Rをおすすめしました。5番の振動数が289cpm、6番が296cpm、7番が300cpmとフローしているので、上3本の振り心地は統一できました。
GD コンボセットを作る場合、大切なのはやっぱりバランスですか?
今井 セット内に違うシャフトを混ぜる場合は振動数が大きく変わらないことと、バランスとロフトですね。「顔」については好みですが、振り心地に影響する部分に関しては統一したほうが、コンボセットは成功すると思います。そういった意味で言うと、「ツアーAD75(R)」と「NSプロ850neo(S)」の番手ずらしは相性のいいシャフトだと思います。
GD バランスはどう決めるんですか?
今井 そこは好みですが、今回のヘッドは本格タイプであることと、「NSプロ850neo」の組み合わせなので、「D-0」がちょうどいいように思います。5番は球を上げやすくするため0.25インチ長くしたので「D-1.5」にしましたが、6番から52度は「D-0」、58度はヘッドが重めだったので、「D-1.5」になりました。

コンボセットの肝となるバランス調整は「1グラム」にこだわります
GD バランスに関しては元々のヘッド重量が影響してくるので、狙い通りにならないこともありますよね。
今井 今回は6番アイアンの調整幅が一番大きく、プラス4グラムの錘(おもり)をホーゼル内に入れました。6、7、9、PW、52度がプラス1グラムで、8番がプラス2グラムで「D-0」に統一することができました。
GD 最後にライ、ロフトの調整ですが。
今井 5番のロフトが22.5度と立っていたので、カタログ値の24度に戻しました。たぶん、元の持ち主がロフトを立ててオーダーしたのだと思います。24度に戻したので、問題なくやさしい5番アイアンになったと思います。
GD その他の番手は?
今井 今回は5番の24度を出発点にして、58度までの流れを良くするためにカタログ値よりも1度ずつ立てました。PWは46度から45度にしたので、その下の52度も51度にして、58度も57度に調整しました。

ライ、ロフトは打球の飛びに影響するため入念にチェック。「大丈夫」でないことがけっこうあります
GD 5番からウェッジまで、「スキなし」といった感じの完璧なコンボセットに仕上がりましたね。
今井 本来はこうあるべきだと思っていますが、なかなかここまでやっている人は少ないと思います。クラブの寄せ集めでは何かしらの問題がセット内で起こっているはずです。今回も中古で購入された5番アイアンのロフトが立っていたというように、中身を知らずに使っていたら、単なる上がらない難しいクラブになります。そこを調整することで、使い勝手のよいクラブにすることができます。
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