千葉県・袖ヶ浦カンツリークラブ 新袖コースで開催された国内女子ツアー「ニチレイレディス」の最終日。連日の熱戦を締めくくるにふさわしい激しいデッドヒートが繰り広げられ、大会はイ・ミニョンと大出瑞月による壮絶なプレーオフへと持ち込まれ、結果はイ・ミニョンが7回目のプレーオフを制し勝利。首位を猛追し、目の前まで迫っていた悲願の勝利。しかし、極限状態のプロたちの心に静かなプレッシャーを与えていた。あと一歩、届かなかった悔しさのなかで、自らの弱さと対峙し、確かな一歩を踏み出した佐藤心結と政田夢乃。ホールアウト直後、彼女たちが明かしたリアルな葛藤と、その人となりが滲む自分自身との戦いの記録をお届けする。
佐藤心結「突っ込まなきゃいけない」強い意気込みが招いた狂いと、自分との闘い

「9番アイアンは5m以内に付けたい」と、今回はショートアイアンの精度が課題となった(撮影/大澤進二)
通算9アンダーの好位置から逆転優勝を狙った佐藤心結だったが、最終ラウンドは3バーディ、1ダブルボギーの「71」と、スコアを伸ばせず通算10アンダーの10位タイで3日間を終えた。
佐藤はティーショットの段階から「もちろん、朝から優勝を意識してスタートしました」と話していたが、思うようにはいかなかった。
そう語る佐藤の前に立ちはだかったのは、前日とは見違えるほど柔らかく、やや重くなった新袖のグリーンコンディションだった。昨日まではピン手前5ヤードに落として転がす計算が成り立っていたが、この日は一転してピンをデッドに狙わなければチャンスにすらつかない状況。9番アイアンで放ったセカンドショットがバックスピンで1〜2ヤード戻ってしまうなど、計算の狂いが佐藤の心を焦らせた。
「コンディションの変化に対して、『もっと突っ込まなきゃいけない』という気持ちが、どうしてもスウィングの力みになってしまいました。その結果、ショットにばらつきが出て左へのミスが多くなってしまった。今日のコンディションに自分を合わせきれなかった悔しさがすごくあります」

2番でのダブルボギーで、「少し気持ちが落ちてしまった」と語る佐藤、その後はボギーなく回れ「まぁまぁでした(笑)」と振り返った(撮影/大澤進二)
手痛かったのが、2番ホールでのダブルボギーだ。せめてボギーで耐えたかった局面での失速に、「今日のようなコンディションなら周りは絶対に伸ばしてくる。2オーバーになった時点で、相当頑張ってバーディを獲らないと厳しいと、自分で自分を精神的に追い込んでしまった」と、プレッシャーとの孤独な戦いを振り返った。
後半はボギーを打たない粘りのゴルフを展開したものの、「バーディを獲りたい時にしっかり獲れるかどうかが本当に大事」と痛感。小さく左右に傾斜の強い新袖のグリーンを前に、アイアンの精度を出し切れなかった自分を厳しく見つめ直し、「チャンスを頑張って作ろうとしすぎて、ピンに絡むショットが少なかった。今回の反省を活かして、次はリズムよく体で打てるようにしたいです」と、悔しさを押し殺しながら笑顔で対応する姿が印象的だった。
政田夢乃はシードの先へ──「1位通過」の勢いで狙うリコーカップへの切符

目標をシード権獲得から、最終戦「リコーカップ」へと標準を変えた政田(撮影/大澤進二)
一方、首位と4打差の6位タイからスタートした政田夢乃は、優勝争いの渦中で戦い抜いて通算7アンダーの6位タイでフィニッシュ。最終18番ホール、プレーオフへの望みをかけた3メートル弱のバーディパットは、狙ったスパットへ完璧に打ち出せたものの、スライスラインが思ったよりも切れずにカップの右をすり抜けた。
「すごく良いパットだったので、切れなくて悔しい。最後の6ホールくらいでいくつかあったチャンスの、どれか1つでも入っていれば……」

考え方を変えたことで、集中力を維持できるようになったという(撮影/大澤進二)
そう悔しがる政田だが、その表情にはかつてない充実感と自信が満ち溢れていた。もともと新袖は苦手なコースだったが、今回は「リーダーボードを見ながら、身近な目標を一つずつ立てて、クリアしたらまた次の目標を設定する」というメンタルゲームに徹したことで、極限の集中力を維持し続けた。かつては最終日に崩れることも多かったが、今や「上位争いにだんだん何も感じないというか、普通に自分のプレーができるようになってきた」と、精神的な成長も大きいだろう。
近年、飛距離が伸びたことでセカンドショットの番手が短くなり、ショット全体の安定感が上位定着を支えている政田。ポイントを積み重ね、いよいよ悲願の初シード入りが見えてきたが、彼女の視線はすでにその先を見据えている。
「シーズン序盤に先輩プロから、『シード権を気にしているようじゃダメだ。もっと高い目標を作りなさい』と言われたんです。だから今は、シードではなく、最終戦の『リコーカップ(JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ)』に行くこと、そして優勝することを目標にしています。プロテストの時も、通ろうと思ったら全然通れなくて、『1位通過してやる』という勢いで臨んでやっと合格できた。レギュラーツアーでも、その時と同じ意識で、高い壁を狙って戦っていきたいです」
悔しさから得るものとは

今回の悔しさを活かし、優勝したいと語った二人(撮影/大澤進二)
「この悔しい思いがあるから、また次も頑張ろうと思える。本当にいい経験になりました」と語った政田。そして、「取りたい時に取り切る精度を磨く」と誓った佐藤。
優勝という最高の結果にはあと一歩届かなかったものの、詰めかけた多くのギャラリーを沸かせ、その声援を力に変えて戦い抜いた2人の若き実力者たち。自らのプレッシャーを認め、コンディションの変化に苦しみながらも奮闘した彼女たちは、今大会を大いに盛り上げてくれた。
新袖で得た悔しさは、彼女たちが真の勝者へと進化するための、最高のスパイスとなるはずだ。

