
日本女子アマで19位と健闘した赤穂未来
勇介さんが幼少期のクラブ選びにおいて最も警鐘を鳴らすのが、「オーバースペック(長すぎる・重すぎる・太すぎる)」の弊害だ。子どもの将来のスウィング形成を阻害しないためには、大きく分けて「長さ」「軽さとロフト」「グリップの細さ」の3つのポイントがあるという。
ジュニアゴルファーは成長に合わせてどんなクラブを持てばいい?

幼少期はクラブの長さがわきの下に収まるほうがいいと勇介さん
第1のポイントは「長さの基準」だ。勇介さんは「クラブを床に立てて持った時、グリップエンドが『わきの下』に収まるほうがいい」と明言する。肩の高さを超えるクラブは子どもにとって長すぎるのだ。
「1回長いクラブを使うと、飛距離が出るので子どもは喜びます。飛んだら気持ちいいから、無理してそればっかり振るようになる。でもそれは麻薬のようなものです」
目先の飛距離の誘惑に負けて長いクラブを振り回す癖がつくと、大人になった時に体に合った正しいスウィングができなくなってしまう可能性がある。
【動画】赤穂未来の4歳から今までのスウィング成長記録【本人のインスタグラムより】
第2のポイントは「軽さとロフト角の確保」である。「長すぎるからといって、大人用のクラブのシャフトを単純に短く切るのはダメです」と勇介さんは指摘する。シャフトを短くするとヘッドスピードが落ちるため、ボールが上がりにくくなってしまうからだ。ボールが上がらないと、無意識のうちにすくい上げようとして頭が下がるなど、スウィングに悪影響を及ぼしてしまう。そのため、短い長さに合わせて、レディス用の13度など、ボールが上がりやすいロフト角のあるクラブを選ぶことが重要となる。重量についても極力軽い180グラム程度に抑えるべきだという。
「実はジュニア用のクラブは安価な素材を使っているため、かえって重いことがあります。だから軽量なレディス用を使ったり、今ならネジを外して軽くできるミニドライバーを活用するのもお薦めです」
重たいクラブを使うとトップで担ぎ上げるようなスウィングになり、コンパクトにコンタクトできなくなるからだ。
ただし、レディスクラブを活用する際には注意点もある。勇介さんは「レディスクラブはスライスしないよう、右に行きにくい(アップライトな)設計になっていることが多く、ニュートラルではありません」と語る。そのため、単純にレディスクラブを与えるだけでなく、ライ角をフラットにするなど、クラブの特性を理解して確認や調整を行うことも上達には欠かせないという。

未来と父・勇介さん
第3のポイントが見落としがちな「グリップの細さ」である。大人のクラブのグリップは、子どもの小さな手には太すぎる。
「太いグリップを『団子握り』で覚えてしまうと、正しいリストコックが使えず、フィンガー(指)で握ることもできなくなります。野球のボールを手のひら全体で鷲づかみにして投げるようなものです」
対策として、内径の太さに注意しながらレディス用の細いグリップを選んだり、さらに細い部分である「グリップの下のほう(文字が書いてあるあたり)」を短く握らせるなどの工夫を凝らした。
こうした徹底したクラブ選びの根底にあるのは、親としての「我慢」があるという。勇介さんは成長速度曲線などのデータを活用し、娘の成長のピークを見極めながら指導してきた。幼少期に結果を出したいという思いを我慢し、将来のための基礎を作ることが最優先だったと振り返る。

練習場にて
その地道なクラブ選びと取り組みが、徐々に成績に表れてきた。赤穂は14歳の時に出場したプロのステップ・アップ・ツアーの「山陽新聞レディースカップ」を26位タイでベストアマを獲得。飛距離は200ヤード程度でありながら、54ホール中50回グリーンに乗せ、パーオン率2位という驚異的なショット力を発揮したのだ。
今大会でも、洋芝と強風という過酷なコンディションの中で、コンパクトなスウィングを武器に好成績を残した。「ショット力では負けない」と自信を持つ15歳の赤穂未来。父と二人三脚で築き上げたスウィングとギアに絶対的な信頼を置く未来のゴルフに今後も注目したい。
写真/姉崎正
