国内女子ツアーのなかでも屈指のスケールを誇るビッグトーナメント「EARTH MONDAMIN CUP」の練習日。アマチュアゴルファーにとって、バンカーは一歩間違えればスコアを大きく崩す鬼門となりやすいシチュエーションだ。良くあるアマチュア向けのレッスンでは、「フェースを大きく開き、砂の抵抗に負けないように狙う距離の2〜3倍(20ヤードなら40〜60ヤード)の振り幅で打つ」というエクスプロージョンショットの定説が広く浸透しているように思える。しかし、果たしてツアーの第一線で戦うプロたちも、我々と同じように力任せに大振りをしているのだろうか。そんなバンカーショットの真実に迫るべく、今季のサンドセーブ率で上位に位置する藤田かれん(同2位)、福山恵梨(同17位)、そして抜群の安定感を誇る小祝さくらの3人に、20ヤードのバンカーショットを基準とした「スタンス」「フェースの開き」「体重配分」「力感」の本音を聞いた。

意気込まないことが最大のコツ。福山恵梨は「深いラフ」の感覚で打つ

画像: フェースをやや開き、スタンスはほぼスクエアと、取り入れやすそうだ

フェースをやや開き、スタンスはほぼスクエアと、取り入れやすそうだ

今季のサンドセーブ率で17位と安定した数字を残している福山恵梨は、バンカーだからといって特別な打ち方にガラリと変えないことこそが、ミスを防ぐ最大のコツだと語る。

アマチュアのレッスンでよく言われるような極端なオープンスタンスは取らず、通常のショットの構えから半足分だけ左足を後ろに引く程度の「ややオープンで軌道は真っすぐ」が彼女のベースだ。フェースの開き具合についても、20ヤードの距離であれば時計の針でいう1時か1時半程度に留めており、プロのなかではそれほど大きく開かないプレーヤーだろう。

多くのゴルファーが気になる力感については、振り幅との比較ではなく、グリップ圧(握る強さ)だけでコントロールしているのが福山流だ。これは、芝が深く生い茂ったタフなラフからショットを打つときとほぼ同じ感覚であり、ガチガチとした力みはホームランなどの手痛いミスを誘発するため絶対に避けるべきだという。

福山は「私自身もそんなにバンカーが上手なほうとは思っていません。だから、まずは『バンカーだ』と意気込まないように脱力することが大切」と笑顔を見せる。緩みによるミスを防ぐためにも、まずはターゲットに向かって真っすぐクラブを出すイメージを持ち、ターゲットの手前の砂を「小さな振り幅で、ちっちゃく早く打つ練習」から始めることが、アマチュアゴルファーが一発脱出を果たすための最短ルートだと教えてくれた。

距離はあえて測らない。藤田かれんが実践する「実距離+10ヤード」のシンプル思考

画像: 写真正面に見えるピンに対して、左足かかとが見えるオープンスタンスで打つ藤田かれん

写真正面に見えるピンに対して、左足かかとが見えるオープンスタンスで打つ藤田かれん

今季のサンドセーブ率で2位という驚異的なスタッツを誇る藤田かれんは、感覚重視でバンカーに向き合っている。彼女はバンカーに入った際、数字にとらわれて実際のイメージがブレてしまうのを防ぐため、あえてピンまでの正確な距離を計測しないという徹底ぶりだ。

藤田の場合、スタンスは基本通りにしっかりとオープンに構え、そのラインに沿ってアウトサイドインのカット軌道で振り抜いていく。アマチュアが陥りがちな「砂の量を操作しようとして深く入りすぎるミス」を防ぐため、砂を切り取る量はあえて意図的に変えないのが彼女のこだわりだ。その代わりにフェースを思い切り開き、手元をハンドレイトにすることで再現性の高いショットとなっている。

通常の平らなライであれば体重配分はおよそ6対4だが、勝手にロフトが寝てしまう左足上がりのライなどでは、上からしっかりとボールを潰すために7対3まで左足体重を強める。

フェアウェイからの振り幅との比較について、藤田はアマチュアの「3倍」という理論とは異なる。彼女の基準は、いつも通りに取る砂の抵抗を計算に入れた上で、一律で「プラス10ヤードの振り幅」という極めてシンプルなものだ。つまり、20ヤードのバンカーショットであれば、フェアウェイから30ヤードのアプローチを打つときの振り幅でそのまま機械的に振るだけでいい。砂の量という不確定な要素に頼らず、フェースの開きと一定の振り幅だけで管理するこそが、彼女の驚異的なリカバリー率を支えているのだろう。

左足に7割の軸をロック。小祝さくらが魅せるフェースコントロールの極意

画像: 振り感としてはピンまで20ヤードのバンカーの場合、40ヤードほどだという小祝

振り感としてはピンまで20ヤードのバンカーの場合、40ヤードほどだという小祝

どんな過酷なピンポジションからでもリカバリーを決める小祝さくら。彼女のバンカーショットの土台には、アドレスの時点で作り上げた「軸」を徹底的に固定するという明確な約束事がある。

小祝は、構えた瞬間に明確に「左足7割、右足3割」という強い左足体重の配分を作る。そして、ダウンスウィングでのクラブの入射角などは一切変えることなく、その固定した軸のなかで、フェースの開き具合だけで距離感や弾道の高さ、そしてスピン量をすべて繊細にコントロールしていくのだという。

もし、この20ヤードのバンカーショットと同じ振り幅のまま、砂のないフェアウェイからポーンとクリーンに打ったとしたら、彼女のイメージのなかでは40ヤードくらいの距離感になるという。

この言葉からも、プロがアマチュアほど大きな振り幅を必要としていないことがよく分かる。アドレスの土台を崩さないまま、飛ばしたくないときは手前から砂をしっかり多めに取り、逆に距離を出したいときには砂を取りすぎないように打ち分けていた。

プロの共通項から導き出す、アマチュアが明日から実践すべきこととは?

画像: それぞれかなり短くグリップしている点にも注目したい

それぞれかなり短くグリップしている点にも注目したい

プロはそれぞれの感覚やセットアップ方法を持っているが、彼女たちの生の言葉を紐解いていくと、アマチュアゴルファーが明日からのプレーで真似すべき明確な共通点が見えてくる。それは、「バンカーだからといって大振りせず、決して力まない」ということだ。

プロたちの頭の中にある力感は、アマチュアが信じ込んでいる「2〜3倍の振り幅」ほど大きくクラブを振り回してはいない。福山が語った「ラフと同じグリップ圧で意気込まない脱力」や、藤田の「実距離にプラス10ヤードするだけのシンプルな振り幅」という言葉が示す通り、過剰な大振りや腕の力みこそが、インパクトでのヘッドの緩みやホームランといった最悪の大事故を招く引き金になっているのだ。

いよいよ開幕を迎える「EARTH MONDAMIN CUP」。一打の重みが違う本戦の舞台で、彼女たちの「力まないスウィング」と「ブレない軸」に注目してみると、トーナメント観戦の面白さは何倍にも膨らむに違いない。そしてそれは、明日からの我々のゴルフを劇的に変える、最高のお手本となるはずだ。 (文/幅克成)


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