バーディ合戦が続く2026年PGAツアー最後のシグネチャーイベント(昇格大会)「トラベラーズ選手権」。ビクトール・ホブランが自身のキャリアベストとなる54ホールスコア「190(通算20アンダー)」を叩き出し、単独首位に浮上した。そして、そのわずか1打差の単独2位(通算19アンダー)に、世界No.1の絶対王者スコッティ・シェフラーがピタリと背後につけている。もしホブランが勝てば、ノルウェー人初のトラベラーズ選手権覇者となる歴史的瞬間だ。熱きチャレンジャーと冷静沈着な王者の、息詰まる頂上決戦の幕が上がる。

ホブランの逆襲。無双状態の「バイキング」とプロセス重視のメンタル

先週の「全米オープン」でまさかの予選落ちを喫したホブランだが、その挫折が見事な逆襲のエネルギーとなっている。会見で彼は、「サンプル数は少ないけれど、過去2勝はいずれも予選落ちの翌週だった。プレーを良くするための追加のモチベーション(原動力)になっている」と力強く明かした。

その言葉を裏付けるように、今のホブランは圧倒的な無双状態にある。第3ラウンド終了時点で、「SG: Off the Tee(ティーショットの貢献度)」と「SG: Putting(パッティングの貢献度)」の両方でフィールド1位を記録。パットの貢献度に至っては「5.780」という驚異的な数値を叩き出しており、ショットもパットも完璧な仕上がりを見せている。

これほど異次元のスコアを出しながらも、本人はスコアに全く執着していない。

「自分は非常にプロセスを重視している。信頼できるフィーリングが見つかれば、スコアは後からついてくる。2アンダーだろうが9アンダーだろうが、スコア自体は最も重要なことではない。自分が意図したショットを打てるかどうかが自信に繋がる」

この達観したメンタルがあるからこそ、コース上でギャラリーがボートを漕ぐ「ローイング」のパフォーマンスで後押ししてくれると、「私たちはバイキングだから、それがDNAに組み込まれているんだ。理解するのに1000年かかったけどね」とユーモアを交えて笑顔を見せ、大観衆との一体感を心から楽しめているのだろう。

【動画】18番に詰めかけたホブランを応援するギャラリーの“ローイング”パフォーマンス【PGAツアー公式X】

@PGATOUR post on X

x.com

世界No.1シェフラーの「静かなる威圧感」とハイレベルな応酬

燃え上がる挑戦者に対し、1打差で追うシェフラーはどこまでも冷静で、不気味なほどの静けさを保っている。

15番ホールではグリーン周りの難しいライに対し、「ロブウェッジ、56度ウェッジ、パターなどの選択肢があったが、幸運にも正しいものを選べた」と語るなど、極限のプレッシャーの中でも状況を俯瞰し、緻密なプレーを続けている。首位を追う展開で最終日を迎えても、王者のメンタリティにブレはない。「明日はただ自分の実行力に集中し、良いラウンドをして、どうなるかを見るだけだ」と、自らのゴルフにのみ徹する構えだ。

シェフラーは現在、78試合連続予選通過という現在ツアー最長の驚異的な記録を継続中であり、もし逆転優勝すれば、30歳という若さでツアー通算21勝目に到達する。こうした歴史的な記録に挑み続ける王者の底知れぬ強さが、静かな威圧感となってチャレンジャーの前に立ちはだかる。

対照的な2人だが、互いのプレーに対するリスペクトは深い。シェフラーとの直接対決についてホブランが「このポジションは久しぶりだ。世界最高の選手に立ち向かい、素晴らしいショットを放つのはただただ楽しい」と語れば、ラウンド中の様子についても「彼が良いショットを打てば、自分も(それに負けじと)良いショットを打とうとする」と明かしている。 和気あいあいと声を掛け合うというよりも、お互いにハイレベルなプレーで応酬し、ゴルフそのもので語り合う、頂上決戦ならではのヒリヒリとした好敵手の雰囲気が漂っている。

背後には不気味な刺客も。極限のバーディ合戦を制するのは?

画像: バーディ合戦の「トラベラーズ選手権」に勝つのは、世界No.1のスコッティ・シェフラーか、それともビクトール・ホブランか。最終日も注目だ(写真は26年キャデラック選手権)

バーディ合戦の「トラベラーズ選手権」に勝つのは、世界No.1のスコッティ・シェフラーか、それともビクトール・ホブランか。最終日も注目だ(写真は26年キャデラック選手権)

最終日も天候は安定する予報であり、引き続きバーディ必須のロースコアの戦いが続くことは間違いない。ホブランは「14〜15アンダーの選手たちも、非常に低いスコアを出せば絡んでくる。だから、今日と同じようなプレーをしなければならない」と、決して攻撃の手を緩めない覚悟を固めている。

実際、この「15アンダー」の集団の中にはパトリック・カントレーが潜んでいる。彼はこの大会で現在8年連続トップ15入りを果たしており、アマチュア時代にはこのコースで「60」を叩き出したこともある圧倒的なコース巧者だ。王者のシェフラーだけでなく、背後にはコースを知り尽くした不気味な刺客も迫っている。

20アンダー台に突入した極限の伸ばし合い。熱きバイキングの誇りを胸に逃げ切るか、冷徹なる世界No.1が静かに差し切るのか、あるいは伏兵が大逆転劇を演じるのか。瞬きすら許されない最終日のティーオフが迫っている。

写真/岩本芳弘


This article is a sponsored article by
''.