女王を苦しめたグリーンと「魔の16番」の罠
無敵の強さを誇る女王は、なぜ今大会で頂点に届かなかったのか。公式のスタッツを紐解くと、彼女を苦しめた最大の要因が「グリーン上」にあったことが明白になる。
驚くべきことに、コルダは第4ラウンドの12番ホールを終えた時点で、今大会を通じて実に「5回」もの3パットを記録してしまっていた。今週以前、彼女は2026年のいかなるトーナメントにおいても3回を超える3パットを叩いたことはなかった。1つの大会で5回の3パットを記録したのは、2025年全米女子オープン以来の出来事である。
さらに、パッティングの感覚の狂いを決定づけるデータがある。第3ラウンド終了時の公式ノートによると、今大会のコルダは「3〜5フィート(約0.9〜1.5m)の短いパットを11回中7回しか決められず(成功率63%)」、フィールド68人中65位に沈んでいた。前戦の全米女子オープン優勝時、彼女はこの距離を「20回中19回(成功率95%)」の確率で沈めていたのだ。95%で決めていた1メートル強のパットが60%台まで落ち込むほど、メジャーのプレッシャーと難解なグリーンが彼女の感覚を狂わせていったことがわかる。
そして、彼女を苦しめたのはグリーン上だけではなかった。第1ラウンドと最終ラウンドの2回、同じ16番ホール(パー4)でダブルボギーを叩いている。公式記録によれば、彼女が1つのトーナメントで「同じホールで2度ダブルボギーを叩いた」のは、実に2013年の全米女子オープン以来、13年ぶりの出来事だった。精密なショットメーカーが同じホールで2度も大きな罠にハマるほど、ヘーゼルティンのセッティングは過酷だったのである。
周囲の喧騒と、ブレない王者のメンタリティ
「メジャー3連勝」という大きな物語を前に、世界中のメディアは彼女を追いかけた。しかし、当の本人のメンタリティは、周囲の喧騒とは全く無縁のところにあった。
試合後の公式会見で「3連勝を逃した落胆」について問われると、コルダは静かに、しかしはっきりとこう一蹴した。

ホールアウト後に落胆していたネリー・コルダだが、それはメジャー3連勝を逃したことではなく、自身のプレーの不出来に対して。これこそが世界No.1のマインド!
「それは皆(メディア)が大げさに騒いでいただけで、私はそのことについて考えてもいませんでした」
彼女が悔やんでいるのは、記録を逃したことではない。
「皆が話題にする現実離れした大きな絵(記録)ではなく、今週の自分自身のプレー内容そのものに落胆しているのです」
ラウンド中もリーダーボードの順位は気にせず、ただ「1打1打に集中しようとしていた」と語る彼女のベクトルは、常に自分自身のパフォーマンスに向けられていた。
パットの不調に苛立ち、16番で珍しいダブルボギーを2度も叩くなどこれほどの罠に苦しめられながらも、終わってみれば8位タイ(トップ10)に名を連ねている事実こそが、彼女が世界No.1である最大の証明だ。途中で投げ出してもおかしくない展開のなかで大崩れしなかったのは、周囲が作り上げたプレッシャーに流されず、純粋に自身のゴルフと向き合い続けた王者のメンタリティの賜物である。
立ち止まらないNo.1。見据えるは「エビアン」と「殿堂入り」
メジャー3連勝を逃した悔しさを引きずる暇もなく、絶対女王の時計の針はすでに進み始めている。大会後の過ごし方について問われると「数日リラックスして、また練習を再開します」と語り、すぐに次戦の地であるフランスへと向かう予定だという。
次なる舞台は、メジャー第4戦「アムンディ・エビアン選手権」(7月9~12日)。コルダは現在、ゴルフ界における最高の栄誉である「LPGA殿堂入り」まであとわずか「2ポイント」に迫っている。次戦のメジャー制覇は、その歴史的条件を満たす絶好の機会となる。
大記録のプレッシャーに惑わされることなく、ストイックに自身のゴルフを磨き続けるネリー・コルダ。立ち止まることを知らない絶対女王の視線は、すでにフランスの地と次なる高みへと真っすぐに向けられている。
写真/PGAオブ・アメリカ
