2026年KPMG全米女子プロゴルフ選手権の最終日。ヘーゼルティンナショナルGCの18番グリーンで、韓国のユ・ヘランが笑顔を咲かせた。第1ラウンドが終了した時点でのユのスコアは、首位のユン・イナから実に10打差の1オーバー。「予選通過を目指してプレーしていた」という絶望的な位置からの逆転劇は、1964年ウェスタンオープンのキャロル・マン以来となる、メジャー大会における62年ぶりの歴史的快挙となった。

快進撃の裏にあった「休養」と「母の味」

画像: メジャー初優勝を飾ったユ・ヘラン

メジャー初優勝を飾ったユ・ヘラン

ユ・ヘランの猛追は、第2ラウンドから始まった。金曜日に「64(8アンダー)」のビッグスコアを叩き出すと、続く第3ラウンドも「68(4アンダー)」をマーク。2日間の36ホール合計で12アンダーという猛チャージを見せ、一気にリーダーボードを駆け上がった。

この記録的な大逆転劇を生み出した要因は、意外にもゴルフから離れた「休息」にあった。彼女は約1カ月間にわたってツアーを離脱していたのだが、会見でその理由を「小さな手術(tiny, minor surgery)を受けるためだった」と明かしている。

しかもその休養期間は、ゴルファーにとって最高峰の舞台である「全米女子オープン」の開催週と重なっていた。彼女は涙を飲んで出場をキャンセル(欠場)し、心身の回復を優先したのである。

「(ツアーを離れたことは)絶対に価値がありました。ゴルフのストレスから解放され、実家で両親や友人とリラックスした時間を過ごせたからです」

世界中のゴルファーが憧れる大舞台を、苦渋の決断で欠場してまで心身の回復を優先した。その覚悟の休養期間において、彼女にとって何よりの活力となったのが「母の美味しい手料理」だった。家族と過ごす穏やかな時間が、彼女の張り詰めた心を優しく解きほぐしたのだ。

大逆転を可能にした圧倒的なショット力

そして迎えた今大会。10打差という苦しい状況で第1ラウンドを終えた彼女を救ったのは、コーチからの言葉だった。

「『自分を信じろ、ショットを信じろ。それ以外に問題はないのだから、ただキャディとコース上の自分を信じなさい』と言われました」

コーチのその言葉を体現するかのように、休養明けの彼女のショットは異次元のレベルにあった。公式スタッツによれば、彼女は今大会を通じて「パーオン率(グリーンを捉える確率)」でフィールド1位の81.94%を記録し、ショットからパットまでの総合的な貢献度を示す「ストローク・ゲインド・トータル(+4.270)」と同ティー・トゥ・グリーン(+3.265)でも全体1位に輝いた。

彼女はフィールド1位という驚異的なショットの精度でヘーゼルティンの難コースを完全に制圧し、プレッシャーを跳ね除けてただ自分のゴルフにだけ集中し続けたのである。

夢見心地の18番ホール。グリーンサイドで待っていた歓喜の瞬間

重圧を乗り越え、ついに迎えた最終18番ホール。ウィニングパットを沈めた瞬間、彼女の顔には涙ではなく、思わず笑いがこみ上げていた。

「過去に何度かメジャー制覇のチャンスがあったけれど、手が届かなかった。今日ついにそれを成し遂げたけれど、信じられなくて、ただ夢のようでした。だから18番ではたくさん笑ってしまったんです」

画像: ユ・ヘランの優勝を祝福するメンバーの中に古江彩佳の姿も

ユ・ヘランの優勝を祝福するメンバーの中に古江彩佳の姿も

そして、グリーンサイドに目を向けると、そこには最高のサプライズが待っていた。先輩のエイミー・ヤンをはじめとする多くの韓国人選手たちが、シャンパンを手に「レッツゴー、ヘラン!」と歓声を上げて彼女の勝利を祝福してくれたのだ。

「ツアーで一緒に戦う先輩や友人たちは、いつも私によくしてくれます。待っていてくれた友人たちに本当に感謝しています」

過酷な戦いを終えた彼女を包み込んだのは、国境を越えて戦う仲間たちの温かい絆だった。

「メジャーチャンピオン」としての新たな歩み

実は彼女、ルーキーイヤーの2023年から毎年優勝しており、今回の勝利で「デビューから4年連続でツアー優勝」という記録を達成した。これはコ・ジンヨン(デビューから6年連続優勝)以来となる、非常に稀で価値のある快挙だ。デビューからの連続優勝という偉業をこのメジャーの大舞台で成し遂げた彼女は、決してフロック(まぐれ)で勝ったわけではない、真の実力者なのである。

「メジャーチャンピオン、ユ・ヘラン」——。今後の大会でそう紹介されることについて問われると、彼女は「最高です! 信じられないほど素晴らしいことですね」と喜びを噛み締めた。

会場には、彼女を心身ともに支え続けた母親も駆けつけていた。娘の偉業に涙ぐむ母に対し、新女王は優しく、そして力強くこう伝えたという。

「泣かないで。私の人生にとって、とても良いことなんだから。お願い、泣かないで」

大逆転という歴史的快挙の裏にあった、苦渋の決断と母の味、圧倒的なショット力、そして仲間たちのシャンパン。数々の温かいドラマを胸に刻み、メジャーチャンピオンとしてのユ・ヘランの新たなゴルフ人生が、ここから鮮やかに幕を開ける。

写真/PGAオブ・アメリカ


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