「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はテーラーメイドがモデルチェンジのサイクルを延長した背景と影響について改めて考えてみた。
画像: ローリー・マキロイも使う『Qi4D』シリーズの売れ行きは好調!(Photo/Getty Images)

ローリー・マキロイも使う『Qi4D』シリーズの売れ行きは好調!(Photo/Getty Images)

ゴルファーへのメリット、デメリットは?

みんゴル取材班(以下、み):先日、テーラーメイドがドライバーのモデルチェンジのサイクルをこれまでの1年から2年に延ばすことを明らかにしました。そのことについて宮城さんの見解をお願いします。

宮城:ちょっと気になったのは発表されたタイミングです。通常であればこの時期には来年モデルの開発はほぼ終わっているはずです。以前から決まっていた話なのか、何か見送らざるを得ない事情があったのか。いずれにしろテーラーメイドは1年サイクルを定着させた火付け役なのでよほどの理由があるのでしょう。

み:テーラーメイドはゴルファーの買い替えサイクルがモデルチェンジに追いつかないことが一番の理由としています。仲間内でもクラブを毎年買い替える新しい物好きはちょっと寂しがっていますが、自分も含め普通のサラリーマンが10万円以上する新品を毎年買い替えるのは下取りがあったとしてもかなり厳しいです。購入するにしてもマークダウンを待つという人は周りにも大勢います。

宮城:オフに買って春に使い始めて秋くらいに慣れてきたと思ったらもう新しいものが出てくる。それならマークダウンされるまで半年くらい待ったほうが得と思うのは当然です。ただ、それが当たり前になっている業界は健全とはいえません。

み:その部分を改善するねらいもあるのかなと思ったりします。

宮城:テーラーメイドとしては相当な英断であることは確かです。ゴルフ業界の慣習はちょっと特殊で、出荷基準といって受注があって店舗に納めた時点で売上げとして計上されます。毎年新しいものを出せばそれなりに売上げは立ちますが、1年サイクルだとすぐにマークダウンが始まり、返品も発生するのでその時点でマイナスが発生します。それでも1年後には次の新製品が出荷されるのでそこでマイナスは帳消しになります。言い方は悪いけれど自転車操業みたいなものです。それでも2年サイクルに踏み切るのは、それでもやっていける目算がついたからという見方もできます。

み:今年発売した「Qi4D」の売れ行きが好調なことも背景にあるかもしれませんね。毎年、テーラーメイドと同時に新製品を発表してきたキャロウェイの動向も気になるところです。

宮城:キャロウェイはそもそもアイテム数が多いので2年サイクルでも十分やっていけるでしょう。そもそもピンやタイトリストは2年サイクルの2年目でもそれなりに売れています。2年サイクルがふつうになればマークダウン待ちも少なくなって適正価格で売れるようになるので業界全体がよくなると思います。ユーザーもサイクルが長くなることで落ち着いて選ぶことができます。

み:昔はドライバーを購入してちょっと使ってからリシャフトしたり、グリップを替えてみたり、1本のクラブと長く付き合っていました。そう考えると3年は待てないけれど、2年に1回くらいがちょうどいい気がします。中堅シャフトメーカーのほうもチャンスが増えるかもしれないと話していました。

宮城:モデルチェンジが1年サイクルだとそれなりのお金を使ってリシャフトするよりクラブを買い替えたほうが早いという話になってしまいますが、2年サイクルならリシャフト需要も期待できるでしょう。ただし、OEMの比率が大きいシャフトメーカーは厳しくなるかもしれません。いくら単価が安くても出る本数はアフターマーケットと比べてケタ違いに多いのでOEMはけっこう儲かると聞きます。ほかに影響を受けそうなのは中古クラブショップです。新品の販売数が減れば下取りの絶対数も減ります。安く仕入れて高く売る商売も成り立たなくなるので、いままでのドライバー一本勝負からトータルでの商売に変わらざるを得ないと思います。


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