悪天候により、勝負の行方は月曜日へと持ち越された2026年PGAツアー最後のシグネチャーイベント(昇格大会)「トラベラーズ選手権」。静寂に包まれた朝のコースで、劇的な結末が待っていた。月曜日の朝9時、18番ホール(パー4)で行われたプレーオフ。ビクトール・ホブランが痺れるバーディパットを沈めてスコア「3」を奪い、その内側につけていた絶対王者スコッティ・シェフラーがバーディパットを外したことで、見事に優勝を手にした。世界ランキング1位のシェフラーとの一騎打ちを制したことについて、ホブランは「世界最高の選手であるスコッティに対してプレーオフで勝てたことは、非常に満足している」と、会見でその喜びと手応えを噛み締めた。なお、今回の「259(21アンダー)」という72ホールのトータルスコアは、ホブラン自身のキャリアベストスコアを更新する歴史的な数字であった。

プロデビューの地での数奇な運命と「ドライバーへの絶対的な信頼」

ホブランにとって、この優勝は単なる「ツアーの1勝」以上の特別な意味を持っている。今大会の舞台であるTPCリバーハイランズは、彼がプロとしての最初のイベント(デビュー戦)を飾った思い出の地なのだ。 「ここからすべてが始まったんだ」と、彼は感慨深げに振り返る。

「まるで違う人生(昔)のことのように感じるよ。世界も自分もずいぶん変わったからね」

プロデビューから酸いも甘いも経験し、数々の挫折やスウィングの悩みを乗り越えてきた彼。その復活を根底で支えたのは、今週最も手応えを感じていた「ドライバーへの絶対的な信頼」だった。

会見で彼は、「ずっと悩んできたドライバーが今週は驚くほど良くなった。(プレーオフの)ティーショットでも、ただスウィングすればフェアウェイの真ん中に行くと分かっていた。操作したり祈ったりする必要がなかったんだ」と語っている。

悩みを乗り越え、最大の武器を取り戻して世界トップクラスの選手へと大きく成長した彼。「自分がここまで遠くへ来たことを実感するし、ついにこの素晴らしい大会のチャンピオンとして戻ってこられたことに大変興奮している」と語る姿には、トッププロとして歩んできた自身の軌跡に対する強い誇りが満ち溢れていた。

画像: 勝利を決めてノルウェーのギャラリーと一緒に「ローリング」するビクトール・ホブラン(画像をクリックするとこの「ローリング」動画【PGAツアー公式X】が見れます) www.golfdigest-minna.jp

勝利を決めてノルウェーのギャラリーと一緒に「ローリング」するビクトール・ホブラン(画像をクリックするとこの「ローリング」動画【PGAツアー公式X】が見れます)

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極限の重圧と、シェフラーとの息詰まる心理戦

プレーオフの決定打となったパットは、決して簡単なラインではなかった。

そもそも、月曜日のプレーオフという状況は、選手たちにとって極めて異例な環境でもある。シェフラーは月曜日の朝のウォームアップについて、「いつものような施設が使えず、クラブハウスのどこかでストレッチできる場所を探さなければならなかった。なんだか大学時代の試合に戻ったような気分だった」と明かしている。世界No.1にとっても勝手が違う、手探りの極限状態での戦いだったのだ。

ホブラン自身も、この異例の重圧について会見で次のように明かしている。

「(日曜日と)同じように緊張するけれど、少し質が違う。ティーショットの時でさえ、足も手も震えていた。本当に極限の挑戦だった」

手足が震えるほどの恐怖と闘いながらも、「自分が決めれば、彼(シェフラー)のパットははるかに難しいものになる」という強烈なプレッシャーがかかる厳しいスライスラインに対し、彼は今週絶好調だった自身のパターを信じ抜いた。

「迷いなく自分のルーティンに入り、『自分ならできる、フィーリングも良い』と言い聞かせた。そして見事に転がり込んでくれたんだ。自分でも信じられなかったよ」

ホブランの完璧な読みとこの一打が、絶対王者のタッチをほんのわずかに狂わせた。敗れたシェフラーは、直後のパットについてこう証言している。

「自分の狙ったラインには打てたが、おそらく意図していたよりも少しだけ強く打ってしまった。スピードがほんの少しだけ合っていなかった」

ホブランが先にねじ込んだことで生じた「入れ返さなければならない」という重圧が、シェフラーのパットを紙一重で外させたのだ。世界No.1との極限の一騎打ちを自らのパットで制したことは、彼に「自分にゲームを勝ち切る力がある」という確固たる自信をもたらした。

敗れた王者からの最大のリスペクト

死闘の末に敗れたシェフラーだが、勝者となったホブランに対して次のような最大限の賛辞を送っている。

「彼は才能に溢れているだけでなく、ものすごく練習熱心だ。もし彼が結果を出せていない時があったとしても、それは決して練習を怠っているからではない。だからこそ、彼のように努力し続ける人間が成功を収めるのを見るのは、いつだって嬉しいものだ」

単なる「勝者と敗者」を超えたトッププロ同士の深いリスペクトと絆が、この劇的な決着に温かな余韻を残した。

母ガリーナさんの前で叶えた「初めての優勝姿」

輝かしいキャリアの中で世界中で何度か優勝を飾ってきたホブランだが、実は家族の目の前で優勝トロフィーを掲げたのはこれが初めてのことだった。

「これまで世界中で何度か勝ってきたけれど、母や父が目の前で勝つところを見てくれたことは一度もなかったんだ」

今回、会場に駆けつけた母親のガリーナさんが見守る前でついに優勝を果たした彼は、これ以上ない最高の親孝行を実現した。

【動画】ビクトール・ホブランと母ガリーナさんと喜びを分かち合う【PGAツアー公式インスタグラム】

「彼女にここで見届けてもらえたのは本当にクールなことだ。今日このあと、一緒にノルウェーに帰るんだけれど、これ以上ない最高の形でゴルフのトーナメントに勝ち、故郷へ帰って祝うことができる」と、母と特別な瞬間を共有できた喜びにどっぷりと浸っていた。コースで見せる闘志あふれるバイキングの顔とは違う、一人の息子としての温かく優しい素顔がそこにあった。

自身のルーツであるプロデビューの地で最高のドラマを生み出し、強烈な手応えと自信を掴んだホブラン。愛する母とともに故郷へ帰る彼の足取りは、次なるメジャー制覇という高みへと力強く向かっている。

写真/Getty Images


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