こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回は海外女子メジャー「KPMG全米女子プロ選手権」で、メジャー初優勝を成し遂げたユ・ヘラン(以下、ヘラン)の後方からのドライバースウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させていただきます。ヘランのスウィングの特徴は、「バックスウィングとダウンスウィングで、手の軌道がほぼ同じラインを通る」点にあります。また、後半ではアマチュアのケースとヘランのスウィングデータを比較して、「ダウンスウィングで手を前に出さないためのポイント」を解説させていただきます。
ユ・ヘランが初のメジャータイトルを勝ち取った(写真/PGAオブ・アメリカ)
バックスウィングとダウンスウィングで、手の軌道がほぼ同じラインを通る。
まずはバックスウィング(以下P3・バックスウィングで左腕が地面と平行の位置)とダウンスウィング(以下P5・ダウンスウィングで左腕が地面と平行の位置)を比較しましょう。「Hand Thrust」(以下、両手の位置)は両手がアドレスの位置から前後にどれだけ移動したか? の距離を表します(マイナスは背中側へ、プラスはボール側へ。アドレスの位置を0とします)。
ヘランのP3とP5での両手の位置は、P3でマイナス32.7cm、P5はマイナス33.7cmと、その差はわずか1cmしか変わりません。

画像①P3(左)とP5(右)の比較/どちらも両手の位置がほぼ変わらない
また、両手の位置と同じくクラブの位置もP3とP5でシャフトアングルがほとんど変わらないことがわかります。両手とクラブがP3とP5でほぼ同じ軌道を通ると、それだけスウィングの再現性が高まります。
ヘランの今大会のフェアウェイキープ率は76.79%で8位タイ、パーオン率は81.94%で1位と、ティーショットからアイアンショットまで非常に安定したショット力を発揮しましたが、その安定したショットの要因には、この両手とクラブの軌道の再現性の高さがありますね。
胸の開きを抑えることで、ダウンスウィングで手が前に出なくなる
続いて、P5でのスウィングを3Dアバターで比較してみましょう。画像左がアマチュアのケース(以下、アマチュア)、画像右がヘランの3Dアバターです。先ほどの両手の位置のデータを比較しますと、アマチュアはプラス7.2cmですでに両手がかなり前に出ているのに対して、右のヘランはマイナス33.7cmですので、P5での両手の位置にはかなり違いがあります。

画像②P5の3Dアバター比較/アマチュア(左)とヘラン(右)で、両手の位置と胸の角度に違いが出ている
このP5での両手の位置の違いと関連するのは何か? それは、「胸の角度」にあります。「Chest Turn」(以下、胸の角度)は胸の回転角度を表します(マイナスは右へ、プラスは左へ。両足首のラインに対して平行が0度とします)。
P5でアマチュアのケースは胸の角度がマイナス40度に対して、ヘランは胸の角度がマイナス55度で、ヘランの方が約15度胸の角度が右に残っており、アマチュアのほうは胸が早く開き始めているのがわかります。
スポーツボックスAIが独自で調査した、P5での胸の角度のLPGAツアーレンジは、マイナス49度〜マイナス64度ですので、ヘランはLPGAツアーレンジ内に収まっています。このアマチュアとヘランの胸の角度の違いは、「切り返しをどこから始めるか?」にポイントがあります。
3Dアバターで胸と骨盤を結んだラインを比較しますと、アマチュアは胸が早めに戻り始めているので、胸と骨盤の捻転差が少なくなっていますが、ヘランは骨盤が先に戻り始めていますが、胸の角度はまだ右に残っているので、胸と骨盤の捻転差が保たれているのがわかります。
ヘランのように両手とクラブの軌道の再現性を高めるポイントは、胸の向きを右に向けたまま下半身から切り返すことで、両手が前に出るのを防ぐことができます。
今回はユ・ヘランの後方からのドライバースウィングを解説させていただきました。今大会の会場となったヘーゼルティンナショナルGCは、2009年の全米プロでY・E・ヤンがタイガー・ウッズを破って、韓国人初の全米プロ王者となったコースですが、その17年後にユ・ヘランが全米女子プロ王者となった事は、韓国勢にとっては「相性の良さ」を感じさせる勝利となりましたね!

