「ただの大好きな試合」LIV移籍後初の共催大会への凱旋
久々の参加ということもあり、彼を待ち受けていた記者会見では、ツアーの「境界線」を探るような質問が飛んだ。
「LIVの選手としてプレーする今、違いを感じるか?」
しかし、元世界王者の態度は至って自然体だった。
「いや、まったく。ただのもう一つのトーナメントだよ。出場するチャンスをくれたDPワールドツアーには感謝している。素晴らしいコースと大観衆が待つ、大好きな試合に戻ってこられてただ嬉しいんだ」
LIVゴルフの「ノイズ」と、言い訳をしないタフなメンタリティ
会見が進むにつれ、メディアからの質問はさらに核心へと迫っていく。中には、「私がテレビで見るLIVゴルフはとても騒がしく、選手は常に楽しんでいるように見せかけなければならないように映る。ここ(スコットランド)は完璧な平和(静寂)だと感じるか?」という、やや意地悪とも取れる踏み込んだ問いもあった。
ラームは余裕の表情で、「いや、LIVでもかなり穏やか(peaceful)だよ」と否定した。
「テレビ放送では、実際のゴルフコースで流れているよりも音楽がずっと大きく聞こえるんだと思う。1番ティーでは少し音量が大きいけれど、その後は音楽が鳴っていることすら忘れてしまう。全体の歓声やコースの雰囲気の一部になるんだ」
さらに、「自宅で練習する時も音楽をかけているから、私のアプローチは何も変わらない」と、メディアや視聴者が抱くイメージとのギャップを本人の言葉で明かし、「競い合っている時は、できるだけ低いスコアを出すことだけがすべてなんだ」と断言した。
環境のノイズに左右されない、トッププロとしての揺るぎないメンタル。そのタフさは、今年の「全米オープン」での予選落ちについて問われた際の返答にも表れていた。不調は運が悪かったのかと水を向けられたラームは、言い訳を一切口にしなかった。

全米オープンでは初日「68」の5位タイという好発進にもかかわらず、2日目に「78」を叩き予選落ちをしたジョン・ラーム(写真/USGA)
「5ホールで6オーバーも叩いたことを不運のせいにはできない。間違いなく自分のミスだ。あの状況を分析し、自分自身のミスを認める素直さを持ち、そこから学び、前に進まなければならない」
自らの責任を冷静に受け止める強さこそが、彼をトップに留まらせている何よりの証拠だろう。
柔軟なビジネス感覚と、家族を第一に想うリアルな現状
話題は、LIVゴルフのビジネス面にも及んだ。「LIVの将来のために、選手自身が賞金プールに資金を投じて株式を得るという議論に関わっているか?」という生々しい質問だ。
これに対しラームは、「まだ私にお金を出すようには頼まれていないよ」と冷静に答えつつも、「人生で学んだのは『絶対(never say never)』とは言わないこと。将来起こり得ることを完全に否定はしない」と、ビジネス面においても柔軟な姿勢を持ち合わせていることを示した。
また、ファンにとって気がかりな今後のスケジュールについても言及した。
「実は10月に4人目の子どもが生まれる予定なんだ」
このプライベートな理由から、秋の「スペインオープン」や「アルフレッド・ダンヒルリンクス選手権」などは欠場する可能性が高いという。今後はアブダビやドバイでのプレーを見据えていると明かし、家族を第一に考えながらツアーを戦うリアルな現状を伝えた。
「ナショナルオープン」への深い敬意と、リンクスの真の難しさ
今週のスコットランドオープンには、スコッティ・シェフラー、ローリー・マキロイ、トミー・フリートウッド、マット・フィッツパトリックらPGAツアーのトップが集結している。
ラームはこの豪華なフィールドについて、「メジャーではないのに、まるでメジャーが2週連続で続くような感覚だ」と絶賛した。
LIVへ移籍した今もなお、彼がスコットランド(や母国スペイン)のナショナルオープンを特別に重んじるのには、明確な理由がある。彼はその歴史への深い敬意を口にした。
「ナショナルオープンを特別にしているのは、その歴史だ。私がアイリッシュオープンで初めてトロフィーを掲げた時、そこに刻まれた名前を見ると、欧州ゴルフのレジェンドたちで埋め尽くされていた。彼らの一人として見なされることは、本当に特別なことなんだ」
そして彼の目はすでに、次週のロイヤルバークデールで開催される「全英オープン」に向けられている。ラームはリンクス特有の風、フェスキュー芝、そして弾道やスピンコントロールの重要性に触れつつ、視聴者が最も誤解しているリンクスゴルフの難しさについて、トッププロならではの視点でこう明かした。
「木々がなく吹きさらしのコースの水際でパットを打つ時、風がボールのスピードやラインにどれほど影響を与えるか、視聴者は正確に理解していないかもしれない。これが(リンクスにおいて)最も難しい部分の一つなんだ」
ツアーの垣根や政治的な議論を越え、純粋にゴルフの技術と歴史に向き合い、勝利を目指すジョン・ラーム。彼の熱い夏は、このスコットランドの地から再び幕を開ける。
