記憶すら曖昧になる「1428日」の異常性
しかし、ラウンド後のシェフラーの口から、悲壮感やパニックの様子は一切うかがえなかった。「ひどいプレーをしたとは本当に思わないんだ。ただ、このコースは時にタフになる」と、王者は自身のプレーを極めて冷静に振り返る。
スコアを崩した要因についても、感情を交えず客観的に自己分析している。
「スタートが悪かったことと、バックナインでチャンスを作れるほどピンに寄せられなかったことに尽きる。12番、13番、14番、15番と良いショットを打ったけれど、どれも20〜25フィートのパットが残ってしまった。16番でも良いショットだったがアップスロープに捕まり、アップアンドダウン(寄せワン)が難しかった」
彼のこの冷静な自己分析は、実際のスタッツにもはっきりと表れていた。今季の平均スタッツとこの第2ラウンドの数値を比較すると、王者らしからぬ「異常事態」が起きていたことが分かる。
最大の敗因となったのはアイアンショットの乱れだ。「ピンに寄せられなかった」と本人が語った通り、今季ツアー1位(72.52%)を誇るパーオン率は55.56%(124位タイ)にまで落ち込んだ。グリーンを狙うショットの貢献度を示す「SG: Approach to Green」も、シーズン平均の「+0.601(8位)」から「-1.669(137位)」へと完全に沈黙し、フィールドの下位クラスにまで低迷していた。

ふだんのシェフラーに比べれば、まさに「いいところがなかった」
さらに、ティーショットの精度低下も足枷となった。ルネサンスクラブ自体がフェアウェイキープの難しいコース(昨季ツアー最低の48.26%)とはいえ、シーズン平均で66.07%(18位)を記録しているフェアウェイキープ率が38.46%(121位タイ)に留まったのは、彼にとって異常な低さである。それに加えて、パッティングの貢献度を示す「SG: Putting」も「-0.698(101位)」を記録。「チャンスを作れず、パットも入らなかった」という言葉通り、グリーン上でもスコアを落とす悪循環に陥っていたのだ。
このようにスタッツが崩壊していたにもかかわらず、周囲が騒ぎ立てる「記録の終焉」に対する彼の受け止め方は、どこまでもフラットだった。
記者から「4年ぶりですが、予選落ちがどれほど最悪な気分か覚えていますか?」と問われたシェフラーは、「ええと…僕の最後の予選落ちって、この大会(スコットランド)でしたっけ? メンフィス(セントジュード選手権)でしたっけ?」と逆質問した。あまりにも長い間予選落ちを経験していなかったため、自身の最後の予選落ちの記憶すら曖昧になっていたというこの事実は、彼の異常なまでの凄みを際立たせている。
「最近は予選落ちのないシグネチャーイベント(昇格大会)もあるから少し状況は違うけれど、今年はトップ20を外れたことすらほとんどなかった。自分のこの安定性には間違いなく誇りを持っているよ」
冷静さの裏にあった「カットラインへの執念」
一方で「週末に巻き返すための日数が欲しかった」と、純粋なアスリートとしての悔しさも隠さなかった。
8番ホールではフェアウェイを捉えたにもかかわらずボールがディボットにハマる不運に見舞われたが、それらすべてを含めて「これがオーバーパーを叩く時のゴルフだ」と現実を淡々と受け止めている。しかし、彼は決して諦めていたわけではない。終盤の状況についてシェフラーは、「カットラインは2アンダーか3アンダーになると思っていた。だから8番のパーパットは絶対に決めなければならなかったし、9番では絶対にバーディが必要だと分かっていた。最後は良いアイアンショットを打ったが、ほんの少しショートしてしまった」と語っている。最後までカットラインを正確に計算し、もがき続けていたのだ。
興味深いのは、シェフラーがこのルネサンスクラブで予選落ちを喫するのはこれが2度目だということだ。「なぜかこのコースではベストなゴルフができていない。時差ボケかもしれないし、新しい草種への適応かもしれないし、単純に私の目に合わないのかもしれない」と分析しつつも、彼はあるジンクスを笑い飛ばした。
「面白いことに、去年もこのコースで良いプレーができずにすごくフラストレーションが溜まったんだけど、その後の全英オープンでは素晴らしいプレーができたんだよね」
「168日の鬱憤」と、ロイヤルバークデールでの逆襲
彼の視線はすでに、次週に控えるメジャー最終戦「全英オープン」へと向けられている。今年の舞台であるロイヤルバークデールは、彼にとって「初めてプレーするコース」だ。思いがけず週末のスケジュールが空いたことについて問われると、彼は事もなげにこう答えた。
「見方次第だね。予定よりも早くバークデールへ向かうよ。新しいコースに慣れるための、余分な準備日数が得られたということさ」
歴史的な記録が途絶え、不運に見舞われた事実すらも「全英に向けたアドバンテージ」へと変換してしまう、グラスの半分はまだ満たされていると捉える究極のポジティブ思考。1428日ぶりの予選落ちという結果にあっても決して揺らがない、世界1位の凄みとブレないメンタリティを私たちは目撃した。
実はシェフラーは、今季の初戦である1月の「ジ・アメリカンエキスプレス」で優勝して以来、勝利から遠ざかっている。今週の日曜日で、「シーズン1勝目から2勝目までの間隔としては彼自身のキャリアで最長となる『168日』」に達するのだ。
圧倒的な強さを誇りながらも惜敗が続き、フラストレーションが溜まっている中で迎えるメジャー最終戦。思いがけず得た「余分な準備日数」が、この168日の鬱憤を晴らすための最強の武器になるかもしれない。未踏の地・ロイヤルバークデールで彼がどんな逆襲を見せるのか、全英への期待は高まるばかりだ。
写真/Getty Images
