フランス・アルプスの麓で、ゴルフ史に残る大記録が誕生した。「アムンディ・エビアン選手権」を制したのは、韓国のユ・ヘラン。前戦の「KPMG女子PGA選手権」でメジャー初制覇を遂げてから、わずか「13日後」の歓喜だった。これはメグ・マローンが持つメジャー連勝のツアー最短記録に並ぶ、歴史的偉業である。しかし、この華々しい記録の裏には、新女王が直面した想像を絶する重圧と、一人の人間としての生々しい葛藤があった。

圧倒的な強さと、LPGAメジャー史上最少スコア「60」

画像: 13日間でメジャー2勝を挙げたユ・ヘラン

13日間でメジャー2勝を挙げたユ・ヘラン

今大会におけるユ・ヘランのプレーは、まさに「異次元」だった。圧巻だったのは第3ラウンドだ。彼女は「60」という驚異的なスコアを叩き出し、LPGAメジャー史上最少スコア記録をあっさりと塗り替えてみせたのである。

他を寄せ付けない圧倒的な強さ。誰もが彼女のメジャー2連勝と圧勝劇を疑わなかった。しかし、メジャー大会のサンデーバックナインには、どれほど完璧なスウィングを持つ選手をも狂わせる「魔物」が棲んでいる。

重圧の最終日。すがりついた「祈りのパット」と怪物級の猛追

最終日、ユ・ヘランは突如としてパッティングの不調に陥った。

「昨日までは11アンダー(60)という信じられないスコアだったのに、今日はたったの1バーディ。あまりにも違いすぎます。これがゴルフなんです」と、ホールアウト後の会見で彼女は苦しげに振り返った。

「今日はショットは本当に良かったのに、パットが最悪でした。もうすべてのホールで『神様、どうかカップに入って』と祈るような気持ちだったんです」

何度もカップをすり抜けるボール。その重圧に拍車をかけたのが、ブルック・ヘンダーソンによる神がかった猛追だった。ヘンダーソンは最終日、ホールインワン(エース)を含む1ラウンド3つのイーグルという驚異的なプレーを披露。さらに最終18番でもイーグルを奪ってユ・ヘランを捉えた。ヘンダーソンが今大会で記録した「合計6つのイーグル」はLPGAツアー史上最多記録であり、このモンスター級の追い上げがユ・ヘランに極限のプレッシャーを与えていた。

4メートルのパットを何度も外していたユ・ヘランは、正規の18番ホールで「とにかくショートだけはしないように。オーバーしてもいい、外してもいいから、ショートだけはさせない」と自分に言い聞かせ、執念でこの日唯一のバーディを奪ってプレーオフへと持ち込んだ。

直後のプレーオフへ向かう際の心境を、彼女は会見でこう語っている。

「(正規の18番で)バーディを獲れたことで、今週の18番ホールに素晴らしい思い出ができました。だからこそ、プレーオフでは少しだけ自信を持って臨むことができたんです」

恐怖を乗り越えた直後の同じ18番ホール。極限状態の中で放たれたウィニングパットは、彼女の必死の祈りと掴み取った自信が、見事に実を結んだ瞬間だった。

11年越しの伏線回収と、エビアンの祝杯

実はこのエビアン・リゾートGCは、彼女にとって特別な意味を持つ場所だった。

「14歳だった2015年、チーム・コリアとして友人たちとここでジュニアの大会に出場し、優勝したんです。その時からずっと、この美しいコースでメジャー優勝を果たすことを夢見てきました」

11年前の少女が抱いた夢。幾度かの予選落ちや苦難を乗り越え、彼女は最高の形でその夢を現実のものにした。「まるで作り物の漫画みたい。現実とは思えない夢の中にいるようです」と、彼女は涙の代わりに満面の笑みを浮かべた。

同一シーズンにメジャー2勝を挙げるのは、韓国人選手としては2019年のコ・ジンヨン以来の快挙となる。かつて世界を席巻したパク・インビら名だたるレジェンドたちに続く、韓国ゴルフ史に偉大な名を残す仲間入りを果たした瞬間でもあった。

祈りを力に変えた、新女王の等身大の素顔

重圧から解放された新女王は、最後に25歳の等身大の素顔を見せた。メジャー連勝に伴い、わずか13日間で2度目となるシャンパンファイトを浴びた感想を問われると、彼女はこう笑い飛ばした。

画像: 仲間からはシャンパンだけではなくエビアンのウォーターでも祝福された

仲間からはシャンパンだけではなくエビアンのウォーターでも祝福された

「2週間前はただのシャンパンだったけれど、今週はエビアンの水が混ざっていたから、アメリカの時よりもずっと良い香りがしました」

圧倒的な記録で世界を驚かせながらも、震える手で祈り続けたパット。その両方を抱えて頂点に立ったユ・ヘランの魅力的な素顔は、エビアンの美しい情景とともに、ゴルフファンの心に深く刻まれた。

写真/大会提供


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