2026年の「全米プロゴルフ選手権」を制し、メジャー覇者として母国イングランドで開催される「全英オープン」へと凱旋を果たしたアーロン・ライ。ツアー屈指の「ナイスガイ」として知られる彼のもとには、その偉業をたたえる規格外の祝福が殺到している。シャイで謙虚な人柄で愛される彼の素顔と、メジャー覇者となっても決して手放さない“型落ち”クラブへのこだわり、そして内に秘めた圧倒的な勝負師の顔があった。

レジェンドと英国王室からの規格外の祝福

メジャー初制覇という偉業を成し遂げた直後、ライのもとに届いたのは信じられないようなサプライズだった。ゴルフ界のレジェンドであるジャック・ニクラスから、お祝いの直筆手紙が届いたのだ。

「郵便物を開けたときは、現実とは思えなかった」とライはその興奮を語る。

「彼のような偉大な人が、全米プロの後にわざわざ時間を割いて手紙を書いてくれるなんて。ジャックの品格(クラス)の高さを示しているよ」

驚きはそれだけにとどまらなかった。彼の優勝に対する最大の反響を象徴したのが、イギリス王室(ロイヤルファミリー)からの祝福のポスト(旧ツイート)だった。

アーロン・ライを称えたイギリス王室のSNS

@RoyalFamily post on X

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「あれは本当に巨大な出来事で、ゴルフという枠をはるかに超える影響力だった。自分の成し遂げたことが、ゴルフというゲームよりもさらに広いオーディエンスに届いたのだと実感させられたよ。見たときは本当に信じられなかった」

母国に与えたインパクトの大きさに、シャイな青年はただただ驚きと感謝を口にするばかりだった。

聖人の素顔と、コースで見せる「勝負師の本能」

メジャー覇者という最高の称号を手に入れても、彼の人に対する優しさは少しも変わらない。ライは以前から、不調に苦しむ他の選手のロッカーにそっと励ましのメモを残す心遣いで知られている。

最近も、過去に何度も一緒にプレーしてきたパブロ・ララサバルのロッカーに手書きのメモを残したことが話題になった。

「彼が今シーズン少し苦しんでいるというのを耳にしたんだ。だから、ただそれが正しいことだと感じて動いた。そこから出た自然な行動だよ」

ライバルの不調を我がことのように気遣う。彼がツアーの仲間たちから「ゴルフ界で最もいい人」とリスペクトを集める理由が、この無意識の気遣いに凝縮されている。

しかし、ひとたびコースに立てば、このナイスガイは他者の魂を打ち砕くような冷酷な勝負師へと変貌する。公式会見の場で記者から「普段は紳士として尊敬されているあなたが、全米プロの日曜日に見せた、冷酷なまでの『キラーインスティンクト』について教えてほしい」と問われた際、ライはこう断言してみせた。

「人間として正しく振る舞うことと、ゴルフのプレーは全く別物だ。ゴルフが要求する挑戦やプロセスに真摯に向き合うとき、自分の中の全く違う側面(激しい競争心)が引き出されるんだ」

このオンとオフの鮮烈なコントラストこそが、彼をメジャー王者に押し上げた最大の原動力なのである。

トロフィーは「実家」へ、お祝いは「質素」に

彼の地に足のついた内面は、全米王者の証である巨大な「ワナメーカー・トロフィー」の行方にも表れている。

画像: メジャーチャンピオンになっても変わらないアーロン・ライ

メジャーチャンピオンになっても変わらないアーロン・ライ

「トロフィーは父の家(実家)にあるよ。自分の家にトロフィールームを作るつもりは全くないんだ。毎日見たいわけでもないし、僕と妻にとっては、実家(家族の家)にあるのが一番ふさわしいと感じたんだ」

名声に溺れることなく、最愛の家族へ最大の栄誉を捧げる。さらに、優勝した日曜日の夜の過ごし方も驚くほど質素だった。派手なチャンピオンパーティーを開くこともなく、会場のクラブハウスで静かに食事をとっただけで、バケーションにすら行かず、数日後にはすぐ練習場で球を打ち始めていたという。

最新モデルに目もくれない「M6」への愛

この「飾らない、流されない」という頑固なまでの職人気質は、彼のクラブセッティング(ギア)へのこだわりにもダイレクトに直結している。その最たる例が、いまだに愛用し続けている2019年発売のテーラーメイド「M6」ドライバーだ。

各メーカーがこぞって最新テクノロジーを搭載した新モデルを発表し、ライバルたちが次々と乗り換える中、彼が7年前のモデルを手放さないのには明確な理由がある。

「私にとって最も重要なのは一貫性(コンシステンシー)だ。2021年以降、テーラーメイドはカーボンフェースに移行したが、私にはそれに適応するのが少し難しかった。他ブランドのチタンフェースも試したが、それらにはM6が持つ『ツイストフェース技術』がないため、ミスヒット時の結果や予想されるボールの動きが変わってしまうんだ」

チタンフェースとツイストフェースが組み合わさることで生まれる、唯一無二の安心感。長年使い続けてヘッドが消耗・破損することに備えて、彼は常にいくつかのバックアップヘッドを自ら確保しているという。

「もっと自分が快適に感じるものが出てくるまで、このドライバーを使い続けたい」

母国の熱狂の中で貫くプロセス

「ゴルフのレベルがどうであれ、キャリアのどの段階にいようとも、ゴルフの難しさ(挑戦)は決して変わらない。それは、このゲームが人間を本当に謙虚にさせてくれる部分だ」と語るライ。

記録や名声、最新の流行に振り回されることなく、常に自分が信じる正しいプロセスにだけ忠実でありたいと願う彼の姿勢は、どこまでも純粋で、それゆえに強い。

偉大なメジャー覇者となり、母国のファンの大歓声に包まれる今週の全英オープン。内に秘めた激しい競争心と、愛機「M6」を武器に、謙虚な職人がリンクスでどのような新しいストーリーを紡いでくれるのか。その一打一打に、世界中のゴルフファンの熱い視線が注がれている。

写真/R&A提供


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