波乱の幕開けとなったイングランド・ロイヤルバークデールでの第154回「全英オープン」。極度に乾燥したコースと気まぐれな風が選手たちを苦しめる中、全選手を通じてわずか2人だけとなるボギーフリーラウンドを達成したのが日本の久常涼だ。2アンダー「68」をマークし、13位タイという見事な好発進を見せている。その一方で、コースが仕掛けた異常なコンディションは、世界を代表するトッププロたちから次々と悲鳴を上げさせていた。彼らの言葉から、メジャー最終戦が用意した「究極のセッティング」の全貌を紐解く。

マキロイを狂わせた「死んだグリーン」と、スミスを襲った見えないバウンド

画像: 難解なグリーンに苦しめられたローリー・マキロイ

難解なグリーンに苦しめられたローリー・マキロイ

「72(2オーバー)」と出遅れる形となった世界ランキング2位のローリー・マキロイ。ティーショットの出来には満足感を示しつつも、グリーン上での異変に戸惑いを隠せなかった。

ラウンド後の会見で彼は、「グリーンのある部分は生きて成長しているのに、別の部分は完全に死んでいる(枯れている)んだ」と、極度の乾燥によって生じた不均一な芝の状態を指摘。さらに「スピードを判断するのがただただ難しい」と、その理不尽な難しさを嘆いた。事実、この見えないスピードの罠は彼のストロークを狂わせ、「短いパットを何度も外してしまった」と苦悩をにじませる。

グリーン上で理不尽な罠に直面したのは、マキロイだけではない。2022年覇者のキャメロン・スミスも、コンクリート化したグリーンに翻弄された。

「18番のパットは、打ち出した瞬間に大きくバウンドして右に弾かれ、そのまま外れてしまった。自分のストロークがおかしくなったのか、それとも悪いバウンドのせいなのか……」と困惑の表情を浮かべる。完璧なタッチすらも、乾燥した地面が生む一瞬の不規則なバウンドで無に帰してしまうのが、今のバークデールの恐ろしさだ。

アイアンで300ヤード!? 常識を破壊する地面の硬さ

コースの過酷さはグリーン上だけにとどまらない。フェアウェイやラフの地面(ターフ)もまた、アイアンをまともに打ち込むのをためらわせるほどの硬さとなっている。

画像: 左手首にテーピングを巻くジャスティン・トーマス。全英仕様というわけではないが、この硬い地面には有効だと話す

左手首にテーピングを巻くジャスティン・トーマス。全英仕様というわけではないが、この硬い地面には有効だと話す

ジャスティン・トーマスは、その衝撃から手首の怪我を未然に予防する目的で、両手首にテーピングをガチガチに巻いてのプレーを強いられている。

「ここのターフは本当に、本当に硬い。これほど硬いターフでは、テーピングは予防的なもの(不可欠な防具)だと感じている」と語るトーマス。一歩間違えれば手首を破壊しかねないリスクと隣り合わせで、プロたちはフルスウィングを続けているのだ。

これほどまでにカチカチに乾燥した地面は、2019年覇者のシェーン・ローリーをも驚愕させている。

画像: リンクスに慣れているシェーン・ローリーでもフェアウェイの硬さには驚いている

リンクスに慣れているシェーン・ローリーでもフェアウェイの硬さには驚いている

「リンクスを経験したことがない選手がここに来たら同情するよ。ティーショットで4番アイアンを打って、300ヤード以上も転がっていくんだからね。精神的にも視覚的にも、それを受け入れるのは非常に難しい」

アイアンで打った球がドライバーのように飛んでしまう狂った距離感が、世界トッププロたちの感覚すらも激しく麻痺させている。

トーマスもまた、この硬さがもたらすアプローチへのプレッシャーを警戒する。

「風が少し吹き始めると、グリーンに落ちてから8〜15ヤード(約7〜13メートル)もランが出ることを計算してプレーしなければならないんだ」

狙った落としどころ(キャリー)の正確性だけでなく、地面に跳ねた後の予測不能な転がりまで計算せねばならない精神的疲労は計り知れない。

画像: アンプレヤブルも脳裏によぎったと話すスコッティ・シェフラー

アンプレヤブルも脳裏によぎったと話すスコッティ・シェフラー

さらに、世界ランキング1位でディフェンディングチャンピオンのスコッティ・シェフラーもまた、コースの底知れぬ罠に飲み込まれた。17番ホールのラフに打ち込んだボールは、深い芝の奥深くへと完全に埋まっていたのだ。

「誰かが踏んだとしか思えないような状態だったよ。誰も名乗り出なかったけれどね」と苦笑いするシェフラー。

「一時はアンプレヤブル(プレー不可能)の宣言も本気で考えたほどだ。あの草の中に沈んでいるボールを脱出させられるとは思えなかった」

なんとかアウトに出したものの寄せきれず、スコアを落とす結果となった。

究極のテストに挑む週末へ

手首に響くほど硬く乾いた地面、スピードが読めない不規則なグリーン、そしてボールを飲み込む深いラフ。世界トップの選手たちが思わずぼやいてしまうほどの極限状態は、決して彼らの単なる言い訳ではない。それこそが、全英オープンという舞台が用意した「究極のテスト」の証明なのだ。

メジャー最終戦にふさわしい、大自然の容赦ない試練。過酷なコースが週末に向けてさらに牙を剥くであろう中、リンクスでのサバイバルはここから一層の激しさを増していく。

写真/R&A提供


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