イングランドのロイヤルバークデールで開催されている第154回「全英オープン」は、メジャー大会の歴史を揺るがす異常事態となっている。メジャー最少タイ記録である「62」が、まるで魔法が解けたかのように次々と飛び出しているのだ。第2ラウンドでサム・バーンズとルーカス・ハーバートが同スコアを記録したのに続き、ムービングデーの第3ラウンドでは、ニュージーランドのライアン・フォックスが「62」を叩き出した。今大会だけで実に3人目となる大記録の達成である。世界最高峰の難易度を誇るはずのリンクスコースで、なぜこれほどのビッグスコアが続出しているのか。

記録ラッシュの要因は「無風の朝」

この歴史的スコアラッシュの最大の要因は、リンクス特有の「気象条件」にあった。第3ラウンドで「62」を記録したフォックスの証言が、そのメカニズムを鮮明に解き明かしている。

「朝のラウンドでこの辺りの風が収まっている時は、スコアを出さなければならないというプレッシャーすら感じるほどだ」

彼が語る通り、午前中のロイヤルバークデールは風が弱く、さらに朝露や前夜の湿気を含んだグリーンはまだ柔らかさを保っている。フォックスは「午前中はグリーンが完璧な状態で、ストロークさえ良ければすべてカップインしそうな感覚になる」と分析する。大自然が牙を隠し、コースが最も無防備になる「無風の朝」という限られた時間帯。それを完璧に生かし切った者だけが、歴史的スコアに到達できるのだ。

R&Aへの挑発と厳しいピン位置、それを切り裂いた技術

しかし、大会を主催するR&Aも黙って見過ごしていたわけではない。第3ラウンド、フォックスはザンダー・シャウフェレと同組でプレーした。序盤の2番ホール、2人の間ではこんな冗談が交わされていたという。

画像: 「ミスター62」のザンダー・シャウフェレと同組で回り62を出したライアン・フォックス

「ミスター62」のザンダー・シャウフェレと同組で回り62を出したライアン・フォックス

「1番も2番も、ピンがバンカー越しや尾根の向こう側に隠されている。『昨日2回も62が出たから、R&Aが怒って厳しいピン位置にしたね』と彼に言ったんだ。そしたら僕が今日やってしまったんだけどね(笑)」

実際、午後組でプレーしたローリー・マキロイも「今日のピン位置は端に寄せられており、アクセスするのが非常に難しい」と語るほど、セッティングは明らかに難化していた。しかしフォックスは、R&Aの意地とも言える厳しいピン位置をも完璧なアイアンショットで切り裂き、難条件をものともせずに「62」を達成してみせた。

この異次元のピン攻めについてマキロイは、「あんな端に寄せられたピンを攻めるには、スピン量はもちろん、高い球やグリーンでスキップする球など、弾道を操る多彩な技術が不可欠だ。フォックスは、このツアーの誰にも負けないくらい見事にボールをフライトさせる(弾道をコントロールする)選手だからね」と、その卓越した技術力に最大級の賛辞を送っている。

さらに、メジャー大会で過去に2度も「62」を叩き出している唯一の男であり、この日同組だったザンダー・シャウフェレでさえも、「ピンシートを見れば、大会側が絶対に『もう62を出させない』という意図を持っていたのは明らかだった。それをやってのけた彼の62は、本当に印象的で驚異的だ」と手放しでその快挙を称えた。

最終日への展望

午前と午後で全く異なる顔を見せるリンクスコース。風が止み、グリーンが柔らかい時間帯には歴史的スコアを許す寛容さを見せる一方で、ひとたび風が吹き荒れ、午後にかけてグリーンが乾燥し切れば、たちまち世界トッププロのスコアを容赦なく削り取る残酷な牙を剥く。

メジャーの歴史を壊すかのような「62」のラッシュは、気象条件と人間の技術が奇跡的に噛み合った瞬間の産物である。いよいよ迎える最終日、果たしてさらなる大記録が生まれるのか。それとも、ついにリンクスが本来の恐ろしさを見せつけるのか。気まぐれな大自然とトッププロが織りなす究極のサバイバルから、最後まで目が離せない。

写真/R&A提供


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