【欧州勢の冷徹な視線】マキロイ、ラームらが突き放すルールの現実
デシャンボーの行為に対し、最もシビアな言葉を浴びせたのはローリー・マキロイだった。彼は選手ラウンジで他の選手たちと一緒にその中継映像を見ていたという。
「彼がボールに向けて足を踏み入れた瞬間、私たちは皆顔を見合わせて『あれはおかしい』と思ったんだ」
さらにマキロイは、ルール解釈について「2打罰は間違いなく妥当だ」と断言し、痛烈な批判を展開した。
「あのようにトーナメントを人質に取り、選手やボランティア全員を待たせる形になったことは、決して良い光景ではなかった」
マキロイのこの怒りの背景には、明確な事実がある。イングランドのマルコ・ペンジが「夜の11時まで第3ラウンドのティータイムが発表されないなんて冗談じゃない。ブライソンがプレーを続けるか決めるまで全員が待たされていたのだろう」とボヤいたように、このペナルティ騒動を巡る長時間の協議は、実際に大会全体のスケジュールを大混乱に陥れていたのだ。
さらにペンジは、「私ならそもそも、ライの改善を疑われるような無頓着なスタンスの入り方は絶対にしない」と、デシャンボーのプロとしての振る舞いそのものにも苦言を呈した。アイルランドのシェーン・ローリーも「私には彼がライを改善したように見えたし、それがゴルフのルールだ」とドライに突き放す。
同じ欧州の雄であり、デシャンボーと一緒にLIVゴルフリーグを引っ張るスペインのジョン・ラームも、冷静ながら突き放すような客観的見解を示している。「正面からの映像だけでは結論を出せない」と前置きした上で、「たとえ意図的ではなかったとしても、違反は違反だったというのが一般的な見解だろう」と語り、ルールを厳格に捉える姿勢を崩さなかった。
なお、この一触即発の騒動について問われた米国の大将格、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーは、「話したいことは山ほどある(I do have a ton to say)。ただ、公の場で何を言うべきかまだ決めていない」と言葉を飲み込んだ。この不気味な沈黙が、選手間に流れるヒリヒリとした緊迫感をさらに際立たせている。
【米国勢の強烈な結束】深いラフの真実と、仲間への擁護
欧州勢の冷徹なルール至上主義とは対照的に、一気に結束の固さを見せたのが米国勢の仲間たちだ。
ザンダー・シャウフェレは、リンクス特有の深いラフでのプレーの難しさを指摘し、同じ星条旗を背負うデシャンボーを庇った。
「背丈の高い草の中で、ゴルフボールに近づくためにスタンスを取って動くのは非常にトリッキーなことだ。彼が意図的ではないと言っているのだから、疑わしきは罰せずと考えるのが普通。素晴らしいプレーをしていたのにペナルティを受けたことは不運だ」
さらにマックス・ホーマも「彼がゴルフでズルをするはずがない。彼が意図的に不正をしたかのように聞こえてしまう裁定の仕方は残念だ」とブライソンの怒りに理解を示し、サム・バーンズも「ペナルティに値する十分な証拠があったとは思えない。彼が気の毒だ」と明確な言葉で擁護の声を上げた。これにより、マキロイら欧州勢との「真っ向からの対立」がより鮮明となった。
カメラに監視されるリアルと「テレビの試練」
「現代のゴルフはすべてのショットがカメラに収められている」
マキロイが会見で語ったこの言葉通り、現代のメジャー大会では、何十台ものカメラと何百万もの視聴者の目が、選手の一挙手一投足をあらゆる角度から監視している。
深いラフでのわずかな足の運びでさえ、スローモーションで検証され、議論の的となる。これについて米国のラッセル・ヘンリーは、デシャンボー個人への肩入れではなく、このシステムが持つ不条理へ疑問を呈した。
「一番の問題は、彼の全ショットがテレビに映っていることだ。私が昨日同じことをしても、誰も見ていなければペナルティはなかったかもしれない」
彼が語る“テレビによる試練(Trial by TV)”は、注目を浴びるトップスターだからこそ晒される、現代プロゴルフの過酷なリアルを代弁している。

2日目ホールアウト後、5番ホールに向かうブライソン・デシャンボー
カメラの監視という極限の重圧に晒されながら戦うプロゴルファーたち。デシャンボーの2打罰騒動は、ルールの厳格さだけでなく、厳罰を求める欧州勢の声と、同情やシステムの盲点を突く米国勢の反応、そして静観を貫く王者の姿など、トッププロたちの思惑が複雑に交錯する人間模様をも白日の下に晒した。
緊迫感を増すロイヤルバークデールの週末、彼らはこのヒリヒリとするような異様な空気の中で、さらなる戦いへと向かっていく。
※次ページに「デシャンボーの2打罰」について簡単なアンケートを作りましたので、ご協力ください。
写真/Getty Images
