ライアン・フォックスの劇的なメジャー初制覇で幕を閉じた第154回「全英オープン」。ニュージーランド出身の伏兵が歓喜の涙を流す裏で、大会の主役となるはずだった二人の巨星は、静かに、そして少しのフラストレーションを抱えながらロイヤルバークデールを後にした。優勝候補の筆頭であり、圧倒的な強さで世界ランキング1位に君臨するスコッティ・シェフラーは通算7アンダーの4位タイ。そして、今季メジャー2勝目を狙っていた世界ランキング2位のローリー・マキロイは、週末の2日間をイーブンパーと伸ばしきれず、優勝争いに絡むことすらできないまま大会を終えた。過酷な72ホールを終えた最終日の公式会見で、彼らの口からこぼれ落ちた「コース上での不運と苦悩」、そして「コース外での衝撃的な本音」から、王者たちの現在地とリアルな人間模様をドキュメンタリータッチで紐解く。

マキロイの苦悩——「死んだ芝」と「PGAツアーへの冷めた熱」

画像: PGAツアーへの情熱について率直な意見を述べたローリー・マキロイ

PGAツアーへの情熱について率直な意見を述べたローリー・マキロイ

「今週のほとんどの時間、ずっとニュートラル(停滞)な状態のまま身動きが取れなかった」

最終日のラウンドを終えたマキロイは、自らのプレーをそう総括した。

ドライバーショットの復調には確かな手応えを感じていた彼だが、スコアメイクを阻んだ最大の要因はグリーン上にあった。

「青々としたパッチ(生きている芝)と、そうでない部分(死んだ芝)が混在していて、打ち込んでいくのが非常に不安定だった」

部分的にスポンジのように柔らかかったり、逆にカチカチに乾燥していたりと、不均一な状態のグリーンに最後までスピード感を合わせることができなかった。「グリーンの色を見て、速いパットになるか遅いパットになるかを判断しなければならないような状態だった」と、リンクス特有の理不尽なコンディションに対する嘆きを漏らした。

しかし、この日の会見で最もメディアを驚かせたのは、コース上の愚痴ではなく、コース外のツアースケジュールに関する「衝撃的な告白」だった。

記者から「PGAツアーやフェデックスカップに対して、以前ほど情熱が湧かないのではないか?」という鋭い質問が飛んだ時のことだ。世界中を飛び回りたいと公言し、実際にDPワールドツアー(欧州ツアー)でのプレーを楽しむ彼に対し、PGAツアーへの熱が冷めているのではという直球の問い。これに対し、マキロイは顔色一つ変えずにあっさりと認めた。

「その通りだ(That's fair.)」

さらに彼は、現在のPGAツアーの制度変更に対する不満を赤裸々に語り始めた。

「ツアーのスケジュールや構造は今、多くの変動の中にある。例えば、最終戦のツアー選手権の前にポイントランキングのトップ30に入ってさえいれば、フェデックスカップで勝つチャンスがある。だったら、なぜプレーオフの最初の2戦を気にする必要があるんだ? 私は昨年その結論に行き着き、今も同じように考えている」

ゴルフ界の顔とも言えるマキロイの口から出た、「(プレーオフの)最初の2戦はどうでもいい」という身も蓋もない本音。それは、彼がもはや単なる賞金やポイントレースに縛られず、自分が本当に価値を見出す場所やメジャー大会にのみフォーカスしていることの強烈な意思表示ではないか。事実、彼はPGAツアーへの熱弁とは対照的に、「ヨーロッパでのゴルフや、インド、中東、オーストラリアに戻ってプレーすることを心から楽しんでいる。今年もそれが本当に待ち遠しい」と高いモチベーションを口にしている。ポイントレースを超え、「世界中のファンにゴルフを届けること」にこそ真の価値を見出している彼の現在のスタンスが、この言葉に鮮明に表れている。

シェフラーの苦悩——「理不尽なバウンス」と「親友への擁護」

画像: デシャンボーを擁護したスコッティ・シェフラー

デシャンボーを擁護したスコッティ・シェフラー

マキロイがモチベーションの低下を語る一方、世界1位のスコッティ・シェフラーは、リンクスの気まぐれな神様に徹底的に翻弄された1日を振り返っていた。

「ボールストライキングは4日間を通じてとても良かった。でも、今週はただ私の週ではなかったんだと思う」

4位タイという好成績にもかかわらず、彼の言葉には諦めにも似た徒労感が漂っていた。

彼を絶望させたのは、完璧なショットに対する「理不尽なバウンド」だった。13番ではティーショットが不運な跳ね方をして深い穴に転がり落ち、14番ではフェアウェイを捉えたと思ったボールがポットバンカーに吸い込まれた。さらに17番では、フェアウェイの左端にスライスをかけて落とした完璧なボールが、予想に反して全く弾まずに止まってしまった。

「ちょっとしたバウンドの違いが、この1週間を通じて積み重なっていった」

いくら完璧なショットを打っても、自然の気まぐれ一つで結果が残酷に変わってしまうリンクスゴルフの恐ろしさを、世界1位の男が身をもって味わわされたのだ。

しかし、そんなフラストレーションの溜まる会見の中で、シェフラーが最も熱を込めて語った場面がある。それは、第2ラウンドで2罰打騒動を起こしたブライソン・デシャンボーについて意見を求められた時だった。

「私はブライソンを昔からよく知っている。彼は様々な側面を持っているが、絶対にチーター(不正をする選手)ではない」

シェフラーは一切の迷いなく、同胞を強く擁護した。

「パッティンググリーンやチッピングのコンテスト、アマチュア時代を含めて、彼が不正をするのを一度も見たことがない」

さらに彼は、現代のカメラ監視社会におけるプロの危うさを指摘する。

「遠くからのテレビカメラの角度で見ると、実際にすぐそばにいる時の状況とは全く違って見えることがある。あの映像を見る限り、彼はボールの周りで少し不注意だったかもしれないが、意図的に何かをしたとは全く思わない」

ルールの厳格化と伝統の回帰は必要だと認めつつも、一部の映像だけで選手を「悪者」に仕立て上げる風潮に対し、世界1位としての責任感と仲間への深いリスペクトをもって釘を刺したのである。

王者たちが背負うもの

画像: 世界のトップ2人が背負っているものとは?

世界のトップ2人が背負っているものとは?

理不尽なバウンドと、読み切れないグリーン。大自然が仕掛けたリンクスの罠は、現在のゴルフ界を支配する無敵のトップ2人でさえも容赦なく飲み込んだ。

しかし、彼らが最終日の会見場で見せた「リアルな本音」——マキロイのツアー制度に対する冷めた視点と、シェフラーの不運を受け入れる達観、そして仲間を毅然と守り抜く正義感——こそが、彼らが単なる優れたゴルファーではなく、ゴルフ界全体の未来と重圧を背負って立つ「真のリーダー」であることを雄弁に物語っている。スコアボードには表れない彼らの苦悩と矜持は、全英オープンのタフな風とともに、ファンの心に深く刻み込まれた。

写真/R&A提供


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