「明治安田レディスゴルフトーナメント」で今季初優勝(通算2勝目)を飾った阿部未悠。3日目に「64」、最終日に「63」と爆発的にスコアを伸ばしたスウィングの秘密について、プロゴルファー・中村修が解説する。

前週の惜敗をバネに今季初優勝を飾る

前週に開催された「ミネベアミツミ レディス 北海道新聞カップ」では惜しくも2位に終わった阿部未悠選手。今大会では、ショットが本調子ではなかった3日目に「64(8アンダー)」をマークして首位と3打差の5位タイにつけると、激しい伸ばし合いとなった最終日には「63(9アンダー)」を叩き出し、2日連続で自己ベストを更新する圧巻の強さを見せつけました。

ドライバーとアイアンの鋭いショット力に加え、アプローチやパットといったショートゲーム、そして土壇場でも揺るがない落ち着いたメンタル面が見事に噛み合ったプレー内容で、名実ともにトッププレーヤーの仲間入りを果たしたと感じさせてくれます。

今季から森守洋コーチのもとで指導を受け、現場でのトレーニングや体のケアは真田和俊トレーナーがサポートしていますが、もう一人忘れてはならない存在がいます。脳にアプローチする「機能神経学」をゴルフに応用して指導している荒木良亮トレーナーです。阿部選手は昨年の後半から荒木トレーナーのもとに足繁く通い、日々変化する体のコンディションを精密に整える取り組みを続けています。

佐久間朱莉選手も取り入れている機能神経学のトレーニングは、左右差による体の動かしにくさを解消してバランスを整えるなど、長いシーズンを戦い抜くプロゴルファーにとっては欠かせないアプローチとなりつつあります。

「体を上手く使うことを目的とした神経のトレーニングをメインで行っています。バランス機能(反射的安定性)の左右差は、力みや体の緊張だけでなくパッティングの違和感にもつながるため、阿部選手の場合は左側のバランス機能の強化を中心に取り組んでいます」(荒木トレーナー)

今季の阿部選手はドライバーの飛距離が10ヤード近く伸びていますが、これはスウィング改善の効果だけでなく、荒木トレーナーとの地道な取り組みも大きく影響しているはずです。チーム全体のサポートが見事に結実した好例と言えるでしょう。

質の高いフェードボールを操る

小柄な体格ではありますが、佐久間選手と同じく質の高いフェードボールを持ち球にしています。効率よくフェードを操るためにはややアップライトなスウィングプレーンが必要となるため、トップでの手元の位置は頭よりも高く収まります。

画像: フェードヒッターらしい手元の高いトップ

フェードヒッターらしい手元の高いトップ

阿部選手のフェードボールは、大きく左から右へ曲がるスライスのような軌道ではなく、曲がり幅を最小限に抑えたコントロール精度の高いものです。その秘訣は、トラックマンデータにも表れています。3度から5度以内のわずかなアウトサイドイン軌道に対し、フェース面をそれ以上に正確なコントロールで打ち出し方向へセットできている点にあります。

一般的なフェードヒッターはダウンスウィングで胸(上体)が早く開きがちですが、阿部選手のダウンスウィングは見事なまでに上半身と下半身の捻転差がキープされており、ダウンスウィング時とインパクト時のシャフトの角度が美しく平行(オンプレーン)になっています。まるで斜めに置いた1枚の板の上をなぞるような完璧なスウィングプレーンを持っているからこそ、精密な軌道とフェース面で意図通りの弾道をコントロールできるのです。

画像: 上体を開かずに下ろし、手元は体の正面でインパクトする

上体を開かずに下ろし、手元は体の正面でインパクトする

もう一つ、胸の向きにも注目してみましょう。テークバックからフォローにかけて胸の面がしっかりと180度ターンし、手元は常にその正面に位置しています。これにより腕の振り遅れを防ぎ、体のパワーを効率よくボールへ伝えるエネルギーロスがないインパクトを実現しています。

画像: ダウンからフォローへと胸の面をしっかりとターンさせる

ダウンからフォローへと胸の面をしっかりとターンさせる

メルセデス・ランキングに目を向けると、1位の桑木志帆選手から6位の河本結選手までの差はわずか約110ポイントという大混戦。今回の優勝で8位へジャンプアップした阿部選手は、首位を約460ポイント差で追う展開となりました。

シーズン後半戦でも安定した成績を収め、どこまで年間女王争いに迫れるか。進化を続ける阿部未悠選手のさらなる活躍から目が離せません。

写真/有原裕晶


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