座右の銘は「燃える闘魂」の言葉
大会前の練習日、横田の口から出たのはプロアスリートにとって残酷な現実だった。
「最近、五十肩がひどくて、左腕が上がらないんです。バックスウィングがうまく上がらなくて、ハーフスウィングくらいしか振れないかな」
年齢を重ねるごとに押し寄せる肉体の衰えと痛み。それはシニアゴルファーにとって避けては通れない壁である。しかし、満身創痍の横田の言葉からは、悲壮感よりもむしろ、静かに燃え滾るような情熱と執念がひしひしと伝わってきた。
少し前の国内シニアツアー開幕戦「ユニテックスシニアOP」で見事な優勝を飾った際、肩の状態は「9割くらい動いた」という。しかし、現在の状態は「7〜8割」まで落ち込んでいる。それでも彼は、ISPS HANDAシニアオープン最終予選会に出場するためにこのスコットランドの地に降り立った。
プールでのトレーニングや治療を必死に続けながら、痛みに耐えて毎週のように試合に出続けるのには、彼の中に確固たる信念があるからだ。横田の座右の銘は、燃える闘魂・アントニオ猪木が残した「人は挑戦をあきらめた時に老いていく」という言葉である。
「あれは自分の座右の銘にしていますよ。試合に出なくなったら、落ちぶれていくと思うんですよね、自分なんかの性格は特にね」
現状に満足し、立ち止まった瞬間にプロとしての自分は終わる。その危機感と美学が、五十肩の痛みを抱える体をコースへと向かわせ、自らを奮い立たせているのだ。
「最後の挑戦」と先輩たちからの刺激
現在54歳の横田は、自身のプロゴルファーとしての残された時間を極めて冷静に悟っている。
「最後、出来ることは後悔しないようにと思って。あともう挑戦できるのは時間あまりないからね。最後の挑戦ですよ。来年くらいまでですかね。出来るところまで」
パフォーマンスは確実に落ちていく。その現実を真っ向から受け入れつつ、それでもなお海外メジャーという高い山に登ろうとする原動力は、道を切り開いてきた偉大な先輩たちの存在だ。
「井戸木(鴻樹)さんの全米プロシニアの勝利とかはめちゃくちゃ刺激になっている。あと奥田(靖己)さんの活躍とか、かつての海老原(清治)さんの(欧州シニア)賞金王とかね」
さらに、ジーブ・ミルカ・シンから「欧州ツアーはいいよ」と勧められたことも背中を押し、昨年は欧州で12試合に出場するバイタリティを見せた。世界で戦う先輩や同世代の仲間たちの姿が、横田の闘志を絶えず刺激し続けている。
悔いのない戦いを、スコットランドの風の中で

最終予選会をトップの成績で通過して本大会出場を決めた横田真一(写真/大会提供)
「ゴルフしていられる時間が限られているから……。自分の今の目標は残りわずかの中で出来ることをしたい。悔いのないように」
横田にとって、人生で2度目となるメジャー大会の舞台。グレンイーグルスのコースはブラインドホールが多く、強風が吹けばたちまち牙を剥くトリッキーな難しさがある。出場選手のレベルも「日本のレギュラーツアーレベル」と評するほど、ビッグネームが揃う厳しい世界だ。
五十肩の激痛に耐え、ハーフスウィングしかできない身体で、世界の猛者たちに立ち向かう。決して華麗でスマートな戦いではないかもしれない。しかし、泥臭く「とりあえずは予選通過」、そして一つでも上の順位を目指して懸命にクラブを振り抜く54歳の生き様は、年齢による衰えと戦いながらゴルフを愛するすべての中高年ゴルファーの心を熱く打つはずだ。
「人は挑戦をあきらめた時に老いていく」。その言葉を自らの体で体現し続ける横田真一の、魂を削るようなメジャーの死闘に、心からのエールを送りたい。

