スコットランドの雄大な自然に抱かれたグレンイーグルス(6859ヤード・パー70)で開幕したシニアメジャー「ISPS HANDA(全英)シニアオープン」。華やかな大舞台の幕開けは、同時に選手たちにとって過酷なサバイバルレースの始まりでもあった。日本からこのメジャーの舞台に挑んでいる岩本高志(1オーバー)、横田真一(3オーバー)、そして谷昭範(7オーバー)。彼らが初日の18ホールで直面したのは、極限のプレッシャーの中で試される「自分自身との戦い」だった。三者三様のドラマが交錯したメジャーの洗礼とは?

岩本高志(1オーバー/64位タイ)——「日本のようにガンガンいけない」ジレンマ

全米シニアオープンに続く海外メジャー2戦目の出場となる岩本高志は、1オーバーの「71」という粘り強いスコアで初日を終えた。しかし、そのラウンドの裏には、海外メジャー特有のシビアなマネジメントを強いられるジレンマがあった。

当初、岩本は「ドライバーでガンガン行く」というアグレッシブな作戦を胸にティーグラウンドに立った。ところが、出だしの2番ホールで早くもメジャーの洗礼を浴びる。放ったティーショットが左の深いブッシュに吸い込まれ、アンプレヤブルの処置を余儀なくされたのだ。

「前半ちょっとブッシュに2回入れて、少しバタバタした」

この痛い経験から、岩本は後半にかけてドライバーを封印し、「刻む」作戦へと舵を切ることになった。

フラストレーションが溜まる展開の中、5番ホールでのミスには「一旦ブチ切れた(笑)」と素直な感情を露わにする一幕もあった。しかし、そこからすぐに気持ちを立て直し、最小打数で食い止めたのは見事な精神力である。

ラウンド後、岩本は最終18番でグリーン手前からのアプローチがショートし、バーディを逃したことを激しく悔やんだ。

「あがり2連続(バーディ)にしてイーブンとかにしておきたかった」

そして、メジャーの恐ろしさをこう語る。

「日本みたいにガンガンいけないですよね(笑)。攻めたりすると痛い目を見るから、状況を見て守るところは徹底して守っていかないといけない。そこはやっぱりメジャーなんだと思います」

画像: 岩本高志は1オーバーの71でホールアウト。明日の巻き返しに期待したい

岩本高志は1オーバーの71でホールアウト。明日の巻き返しに期待したい

明日は午後スタートとなり、風が強まることが予想される。「予選カットが気になる」というジレンマを抱えながらも、冷静なマネジメントでメジャーの週末を狙う。

横田真一(3オーバー/103位タイ)——完璧な状態を打ち砕いた「魔の3連続ボギー」

五十肩の痛みに耐えながらスコットランドへ乗り込んできた横田真一。しかし、初日の彼は充実感に満ちていた。

「今日は時間もコンディションもばっちりだった。五十肩も気合で動いたし、ショットもキレていた」

まさに“完璧な状態”で臨んだはずだったが、スコアボードに刻まれたのは3オーバーの「73」。横田の行く手を阻んだのは、中盤の11番ホールから始まった「魔の3連続ボギー」だった。

「11、12、13の3連続ボギーがね……。12番はあと2ヤード転がればすーっと行くところだったのに3パット。14番もオーバーしてそこから3パットだった」

ショットの調子が良かっただけに、グリーン上でのギリギリの取りこぼしが致命傷となった。横田は一切の言い訳をせず、「完全に今日は自分が取りこぼしている。自業自得っていう感じ。完璧なコンディションだったからなおさら悔しい」と唇を噛んだ。

しかし、歴戦のベテランの闘志は少しも衰えていない。明日の風は今日の秒速4メートルから6メートルへと強まる予報だ。横田は全体のスコアが落ちると読み、カットラインを「3オーバー」と想定している。

「明日はアンダーパーにして頑張ります。あの3連続ボギーがね……」

完璧な手応えと悔しさを胸に秘め、横田は逆襲の第2ラウンドへと向かう。

谷昭範(7オーバー/139位)——スタート50分前の繰り上がりと「豹変したグリーン」

この日、誰よりも長く、そしてドラマチックな一日を過ごしたのが谷昭範だろう。

ウェイティング(補欠)の身であった谷は、朝の6時過ぎにはコースに到着していた。いつ来るか分からない欠場者の知らせを待ちながら、練習をしては待機する時間が続く。そして、実に7時間半が経過した頃、ついにその瞬間が訪れた。

「スタート50分前に繰り上がりが決まった」

急いで最終調整を行い、慌ただしく初メジャーのティーグラウンドへと向かったのだ。

しかし、コースに出た谷を待っていたのは、練習日とは全く異なる顔を見せる「豹変したグリーン」だった。

「昨日までよりも急に速く硬くなっていて、それに芝目もきつくなっていた」

この激変にアジャストできず、パットが面白いようにカップを逸れていく。好きなタイプのコースだと語っていたが、「しょうもないダボ(ダブルボギー)」を叩くなど、7オーバーの「77」と大きく出遅れる結果となった。

「出だしはエッジから下まで戻ってしまったりしたけど、そのあとは比較的良かった。あと2つくらい戻せたらよかったんですけどね」

スコア的には厳しいスタートとなったが、谷の表情に絶望はない。

「繰り上がりはまずは嬉しかった。初メジャーですし、出ないことには始まらないですから」

明日のカットラインを2オーバー付近と見据え、「明日は5つくらいは出さないといけないでしょうね。頑張ります」と、奇跡の巻き返しへ向けて静かに前を向いた。

予選通過へのサバイバル

スコットランドの風と罠に翻弄された初日。しかし、岩本、横田、谷の3人は、それぞれが抱える課題やジレンマから決して逃げることなく、海外メジャーという最高の舞台に立っている誇りを胸に戦い続けている。

勝負の第2ラウンド。予選通過というシビアな関門に向けて、彼らがどのようなアジャストを見せ、ベテランとしての意地を爆発させるのか。極限のサバイバルを生き残るための、泥臭くも美しい反撃劇に心からのエールを送りたい。

写真/大会提供


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