イングランドのJCBゴルフ&カントリークラブ(7332ヤード・パー72)で開催されている「LIVゴルフ・UK」第2ラウンド。初日に「61」のコースレコードを叩き出したルーカス・ハーバートの勢いは、2日目も止まらなかった。「66」でまとめ、通算17アンダー。2位のブライソン・デシャンボーに4打差をつけ、単独首位をひた走っている。圧倒的な強さを見せつけるハーバートだが、彼の魅力はスコアカードの数字だけでは語り尽くせない。その背後には、彼を支える深くシリアスな人間ドラマと、思わず吹き出してしまうような愉快な仲間たちとの日常がある。

亡き友ジャロッド・ライルとともに戦う

ハーバートのキャディバッグには常に黄色いヘッドカバーが収められ、帽子には黄色いピンバッジが光っている。これは、白血病との壮絶な闘いの末にこの世を去った同郷のプロゴルファー、ジャロッド・ライルへの敬意の証だ。まもなく没後8年を迎えようとしている今も、ハーバートは亡き友とともにコースを歩いている。

「彼とはすごく共鳴するものがあったんだ」とハーバートは語る。オーストラリアの小さな田舎町の出身で、同じコモンウェルスゴルフクラブで腕を磨いた2人には多くの共通点があった。

「人生においてどれほど悪い手札を配られても、彼の人生観は素晴らしかった。心から尊敬していたよ」

ライルが残した、病気と闘う子供たちを支援する「チャレンジ財団」へのサポートを一過性のもので終わらせず、継続していくこと。それがハーバートの使命となっている。そして、ライルもまた天国から彼を見守っているようだ。2021年にPGAツアーカードを獲得した際、絶対に入らないと思われたパットがカップに吸い込まれた。ハーバートはその時のことをこう振り返る。

「ジャロッドが、僕のためにボールを蹴り入れてくれたんじゃないかって、そう思わずにはいられなかったよ。コース上で、確かに彼の存在を感じる瞬間があるんだ」

ミスを引きずらない「精神的成長」と「逆転の発想」

画像: デシャンボーに4打差をつけて首位をひた走るルーカス・ハーバート

デシャンボーに4打差をつけて首位をひた走るルーカス・ハーバート

亡き友への想いを胸に戦うハーバートだが、この日のフロントナインは決して平坦ではなかった。短いパットの読み違いやミスが重なり、不安定なスタートを強いられたのだ。しかし、バックナインで見事なバウンスバックを見せスコアを伸ばした背景には、プロとしての彼の「精神的な成熟」と、「完璧すぎたがゆえの逆転の発想」があった。

「若い頃なら、確実に引きずっていただろうね」とハーバートは笑う。

「でも、年齢を重ねるにつれて、ひとつひとつの短いパットのミスが、自分のキャリアという大きな枠組みの中でどれほど些細なことか理解できるようになった。今は、そういうミスを簡単に手放せるようになったんだ」

さらに、この日のバウンスバックには特有の面白い心理状態も働いていたという。

「前日のラウンド(61)が完璧すぎて、取り返したいと思うようなショットがひとつもなかったんだ。だから逆に、ひとつ悪いショットが出た時に『よし、これで厄介なものをひとつ片付けたぞ。さあ、仕事に戻ろう』と、ある意味で解放された気分になったんだよ」

ミスを恐れるのではなく、ミスが出たことで「完璧の呪縛」から解き放たれる。トッププロならではの極めてリアルでクレバーな思考法だ。

重圧を打ち消す、あまりにもシュールな「ニンジン切り大会」

精神的な強さを見せる一方で、彼が所属するオーストラリアチーム「Ripper GC」の宿舎での素顔は、あまりにもコミカルだ。現在チーム戦でも通算37アンダーで首位を独走している彼らだが、夜の過ごし方にプレッシャーの影は微塵もない。

画像: 「ニンジン切り大会」を発案したキャメロン・スミス。全英覇者はリーダーシップを発揮している

「ニンジン切り大会」を発案したキャメロン・スミス。全英覇者はリーダーシップを発揮している

中でも白熱しているのが、キャメロン・スミスが発案したという謎の「ニンジン切り大会」である。

「ニンジンを包丁で2つに切って、両方の重さをどれだけ均等にできるか(グラム数を近づけられるか)を競うんだ。昨夜はものすごく白熱した戦いになったから、今夜もやると思うよ。総当たり戦のトーナメントが企画されているかもしれないね(笑)」

全英オープン覇者のスミスが先頭に立ち、トッププロたちが真剣な顔でニンジンの重さを量っている光景は想像するだけでシュールだ。しかし、この他愛のない時間にこそ、彼らの強さの秘密が隠されている。

「僕らのチームの面白いところは、チーム成績が最下位だろうと首位だろうと、夜にみんなで集まっている時の雰囲気からは絶対にそれが見分けられないことなんだ」とハーバートは明かす。順位に一喜一憂しない、圧倒的な居心地の良さと結束力。

「家に帰って仲間と笑い合い、ゴルフのことを考えすぎずに済む。4打差の首位で眠りにつくプレッシャーから解放される、最高のリフレッシュなんだ」

冷静な視点と、完全優勝へのシナリオ

シリアスな想いとコミカルな日常のギャップの中に、ルーカス・ハーバートというゴルファーの豊かな人間性が詰まっている。完全優勝への視界は良好に見えるが、彼の兜の緒はしっかりと締まっている。

週末に向けて、デシャンボーとの一騎打ちになりそうかという記者の問いに対し、彼は極めて冷静だ。

「今年のアデレード大会でも、皆が『ブライソンとジョンの争い』だと思っていたら、アンソニー・キムが勝った。まだ半分終わったばかりで、他の選手が巻き返してくる可能性は十分にあるよ」

首位の重圧から解放されつつも、コースに出れば極めて冷静に状況を分析し、決して慢心しない隙のなさ。心技体がこれ以上ないほど充実しているオージーは、誰にも付け入る隙を与えぬまま、仲間たちとともに完全優勝へ向けて3日目のティーイングエリアに立つ。

写真/LIVゴルフ提供


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