イングランドのJCBゴルフ&カントリークラブで開催されている「LIVゴルフ・UK」。リーダーボードの最前線で激しい火花を散らしているのが、単独2位につけるブライソン・デシャンボーだ。2日目も「67」の好スコアをマークし、通算13アンダーまでスコアを伸ばした。しかし、ホールアウト後の彼の表情には、充実感とともに見えない重圧が滲んでいた。首位を独走するルーカス・ハーバートとの差は4ストローク。驚異的なペースでバーディを量産し、ボギーすらほとんど叩かないライバルに対し、デシャンボーは「彼を抜くには、明日と明後日の両日とも10アンダーを出さなきゃいけないような気分だよ」と本音を吐露した。圧倒的なパワーでゴルフ界を牽引する絶対王者が、相手の隙のなさに底知れぬプレッシャーを感じているのだ。

「2頭立てのレース」に潜む罠

現状のリーダーボードを見れば、17アンダーのハーバートと13アンダーのデシャンボーが後続を引き離しており(3位は10アンダーのティレル・ハットン)、完全に一騎打ちの様相を呈している。

しかし、このまま2人だけのマッチプレーになるほど、プロの舞台は甘くない。追われる立場のハーバート自身が、その罠を誰よりも警戒している。

「今年のアデレードでのアンソニー・キムの優勝を思い出してほしい。日曜日、誰もが『ブライソンとジョン(・ラーム)の2人の争いだ』と思い込んでいたのに、終わってみれば他の選手が優勝をさらっていった。今回も同じだ。2人だけのレースだと思っていると、必ず他の誰かが追い上げてくる」

4日間競技の残り36ホール。上位2人が互いを意識しすぎて牽制し合えば、思わぬ伏兵が猛烈なチャージをかけてくるのがゴルフの常だ。勝負の行方は、決して2人だけに絞られたわけではない。そのヒリヒリとするようなスリリングな状況が、大会の熱気をさらに高めている。

LIVゴルフがもたらした「完成されたゴルファー」への道

追う展開のデシャンボーに決して焦りや悲観はない。むしろ、現在の自身の状態に対して強烈な自信を見せている。

「この数日間のプレーぶりは、(彼が歴史的なスコアを叩き出した)あの『グリーンブライアーでの58』の時にかなり近い感覚なんだ」

その絶対的な自信を裏打ちしているのは、彼がLIVゴルフのフォーマットを通じて手に入れた「ゴルファーとしての進化」である。

少年時代のデシャンボーは、決して裕福な環境にはなかった。遠征費が工面できず、地元エリアの限られたコースでしかプレーできなかったという。しかし、LIVゴルフの一員となり、世界中を転戦するようになったことで、彼のゴルフ人生は劇的な進化を遂げた。

「LIVで世界中を巡るようになり、世界各地の異質な芝生や、未体験の環境下で戦う方法を学んだ。子供の頃にできなかった経験を今しているんだ。そのおかげで、僕はあらゆる状況に対応できる『より完成されたゴルファー(a more well-rounded golfer)』になれたと感じている」

画像: いまのコンディションは自己ベストである「58」を出したときに近いと語るブライソン・デシャンボー

いまのコンディションは自己ベストである「58」を出したときに近いと語るブライソン・デシャンボー

事実、今大会の硬く乾燥したコンディションも、今のデシャンボーにとっては大好物だ。「フェアウェイやグリーンが硬く焼き締まっている状態は、本当に心地いい。今日(2日目)の6番ホールで見せた、丘を駆け上がるようなバンプ&ランのアプローチも最高だった」と、グリーン周りの小技にも絶対の自信を深めている。

持ち前の異次元の飛距離に、世界中の過酷な環境で培われた適応力と繊細なショートゲームが融合し、今の彼はまさに「完全体」へと近づきつつあるのだ。

逆転に向けた最終決戦へ

類まれな探究心に加え、世界を巡る旅の中で環境適応能力とメンタルの強さを手に入れたブライソン・デシャンボー。

首位との4打差は決して小さなものではない。しかし、より完成されたゴルフの科学者が、残り36ホールの戦いでハーバートの背中にどれほどの猛烈なプレッシャーをかけていくのか。

完璧な逃げ切りを図るオージーに対し、研ぎ澄まされた完全体の飛ばし屋が仕掛ける逆転劇。今年から4日間競技となり、より真の強さが問われるようになったLIVゴルフの真骨頂とも言える、息詰まるような週末の決戦から決して目を離してはならない。

写真/LIVゴルフ提供


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