PGAツアー「3Mオープン」のムービングデーとなる3日目。大観衆の視線を集めたのは、予選ラウンド2日間に続き同組でプレーすることになった日本のエース・松山英樹と、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーのペアリングだった。この日、2人は単なる同組のライバルではなく、極限の集中力でお互いを高め合う“最高のリレー”を見せることになる。静けさと苛立ち、そして歴史的な大爆発が交錯したムービングデーのドラマを紐解いていきたい。

松山英樹、鉄壁の守備から前半の「30」

画像: 3日間同組でラウンドした松山英樹とスコッティ・シェフラー。最終日は1組前で松山英樹がスタートする

3日間同組でラウンドした松山英樹とスコッティ・シェフラー。最終日は1組前で松山英樹がスタートする

前半のフロントナイン(アウト)、松山英樹のゴルフは序盤から別次元の輝きを放っていた。1番、3番、4番、5番、そして7番と次々に鮮やかなバーディを奪い、前半だけで「30(5アンダー ※TPCツインシティズのアウトはパー35)」という猛チャージを見せた。

連日の「65(ノーボギー)」という完璧なスコアを根底で支えていたのは、ショットのキレ以上に、データが明確に示している驚異的な「小技」である。松山がこの日いかに凄まじい技術を発揮していたかは、数字を見れば一目瞭然だ。

この日のグリーン周りのスコア貢献度(SG: Around The Green)は「2.730」を叩き出し、堂々のフィールド全体1位に君臨。さらに特筆すべきは、グリーンを外した5ホールすべてでパーを拾う「スクランブリング100%(1位タイ)」を達成したことだ。どんな窮地に陥ろうとも、魔法のようなアプローチで必ずパーセーブしてみせる。この鉄壁とも言える圧倒的な守備力が、前半のバーディラッシュを可能にする最高のリズムを作り出していた。

シェフラーの「怒りのチャージ」と松山への賛辞

一方のシェフラーは、前半は苦しい展開を強いられていた。9番(パー4)でボギーを叩き、ホールアウト後の会見で「録音されたらマズいような言葉を自分に言い聞かせていた」と明かすほど、強いフラストレーションを募らせてフロントナインを終えていたのだ。

しかし、バックナイン(イン)に入ると、今度はシェフラーが松山からバトンを受け取るように完全に火を噴いた。松山の完璧なゴルフに触発され、自らへの怒りをエネルギーに変え、完璧なゴルフをみせた。

まるで別人のようにピンに絡めるショットを連発し、「エクストラギア」に入ったシェフラー。圧巻だったのは16番(パー4)でラフから55フィート(約16.7メートル)のアプローチを直接ねじ込んだイーグルだ。公式データによれば、「彼がPGAツアーで上がり4ホールを4アンダーでプレーしたのは、キャリアでわずか5回目」という極めてレアな記録である。結果的にハーフ「29(7アンダー)」という驚異的なスコアをマークし、怒涛の逆襲を完遂した。

前半は松山が完璧なゴルフでグループを牽引し、後半はシェフラーが覚醒してバーディを量産する。見事な「リレー形式の猛チャージ」を生み出したのだ。

ラウンド後、シェフラーはこの大爆発の要因として松山の存在を挙げ、最大級の賛辞を贈った。

「ヒデキはとても一緒に回りやすい選手なんだ。感情が常に安定していて(even keel)、素晴らしいリズムで美しいショットを打つ。だからコース上で一緒にいると、本当に心地いいんだよ」

さらにシェフラーは、ギャラリーが自分だけでなく松山にも熱烈な声援を送っていたことを嬉しそうに語った。

画像: 大勢のギャラリーがシェフラーと松山の組を追った

大勢のギャラリーがシェフラーと松山の組を追った

今大会がミネソタ初訪問となるシェフラーは、絶大な人気を誇る米国の英雄であり世界No.1プレーヤーだ。本来であれば、同組で前半から大爆発を見せた松山は、ファンにとって「王者を脅かすアウェーの悪役」になってもおかしくない展開だった。しかし、会場のギャラリーは国籍に関係なく、素晴らしいプレーを見せる松山にも惜しみない賛辞と声援を送ったのである。シェフラーは、自分たちを包み込んだそんなフェアで温かい空間を心から喜んでいた。

「(僕だけでなく)ヒデキへのサポートも素晴らしかった。本当に楽しい環境だったよ」

トッププロ同士がお互いの素晴らしいプレーに刺激を受け、高め合う。松山の揺るぎないプレースタイルと鉄壁の技術が、苛立つ王者の心を落ち着かせ、前代未聞のチャージを引き出す最高のスパイスとなっていたことは想像に難くない。

逆転劇へのカウントダウン

終わってみれば、松山は通算13アンダー(13位タイ)、シェフラーは通算14アンダー(9位タイ)と、ともに優勝争いの射程圏内に食い込んで最終日を迎えることとなった。

首位とは少し差がある(トップはジャクソン・コイブンの20アンダー)ものの、シェフラーの爆発力はもちろんのこと、ここ2日間ボギーフリーで圧倒的な小技を見せつけている松山にも、大逆転のチャンスは十分にある。

お互いを極限まで高め合う最高のペアリングを経て、彼らはどんなフィナーレを見せてくれるのか。研ぎ澄まされた技術と精神力が交錯する最終日のリーダーボードから、もう片時も目が離せない。

写真/Getty Images


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