スコットランドの由緒あるグレンイーグルスで開催された「ISPS HANDA(全英)シニアオープン」の最終日、59歳のジェリー・ケリーが自身3度目となるシニアメジャーの栄冠を手にした。優勝インタビューで、彼は溢れる感情を抑えきれずに語った。「シニアのクラレットジャグは、50歳以上のゴルファーにとって、他のどのトロフィーよりも欲しかったものだ」。ゴルフ発祥の地・スコットランドで頂点に立ち、来年セントアンドリュースで開催される全英オープンへの切符までも手に入れたことに対し、ケリーは「言葉が出ない」と感無量の表情を浮かべた。

「脳」がもたらした勝利とメンタルの転換

過酷なメジャー大会を勝ち抜くためには、完璧なスウィングや神がかったパットが必要だと誰もが思うだろう。しかし、最終日の勝因を問われたケリーの口から出たのは、意外な回答だった。

「実は、自分の思考(メンタル)をうまくコントロールできたことが、最大の勝因だったんだ」

かつてのケリーなら、自分の思い通りにボールを打てない時、苛立ちやフラストレーションに心を支配されていたという。しかし、この日は違った。

「ミスを引きずる代わりに、ただ次のショットをどう打つかだけに専念したんだ」

ミスを引きずらず、目の前の1打にのみ集中するという「メンタルの転換」こそが、メジャーの大舞台で彼に勝利をもたらした最大の要因だった。

「今日、自分自身について本当に多くを学んだ。20年、30年前にこれを学んでいればよかったと思うよ」とケリーは苦笑する。

「でも、学ぶのに遅すぎることはない」

59歳にしてたどり着いた新たな思考の境地が、ベテランプロのゴルフを劇的に進化させたのである。

満身創痍の肉体と「スコットランド・アーミー」

精神面が極限まで研ぎ澄まされていた一方で、ケリーの肉体は悲鳴を上げていた。彼はここ数年、背中(腰)に慢性的な問題を抱えながらプレーしており、この日の最終ラウンドでも6番ホールでピキッと嫌な違和感を覚えたという。

それでもケリーは、「私たちは精密なチューニングを施されたアスリートだけど、たまには部品がぶっ壊れる(体にガタがくる)こともあるからね」と、シニア特有の体の痛みを自虐的に笑い飛ばすベテランの逞しさを見せた。

そんな満身創痍の彼が最後まで力強くスウィングし続けられたのは、「スコットランド・アーミー」と呼ばれる観戦に来たファンの熱狂的な後押しがあったからだ。「調子が落ち込みそうになった時に、『君ならできる、君なら大丈夫だ』と声をかけてくれ、本当に私を引っ張ってくれた。スコットランドのファンには心から感謝している」と、温かいサポートが彼の背中を押したことを明かした。

ゴルフの奥深さと次なる舞台へ

画像: 優勝したジェリー・ケリー(右)とベストアマに輝いたカイロン・サリバン(左)

優勝したジェリー・ケリー(右)とベストアマに輝いたカイロン・サリバン(左)

アメリカ人として史上10人目となるシニアオープン覇者に名を連ねたジェリー・ケリー。かつてレギュラーツアー時代の「全英オープン」では、どうしても思うような結果を残すことができず、リンクスコースに幾度となく苦汁をなめさせられてきた。

「だからこそ、シニアになった今、ここでそれを成し遂げられたことに天にも昇る気持ちだよ」と、過去の悔しさを晴らす最高のフィナーレに酔いしれた。

59歳にして己のメンタルの壁を打ち破り、怪我と闘いながら、ついに全英シニアの頂点に立ったケリー。ゴルフというスポーツは、年齢を重ねて肉体が衰えようとも、精神の成熟によってなお成長し続けることができる。彼の遅すぎた、しかし最高に価値のある自己発見のストーリーは、すべてのゴルファーに勇気とゴルフの奥深さを教えてくれる。

写真/大会提供

【動画】優勝したジェリー・ケリーの上がり3ホール全ショット【DPワールドツアー公式X】

@DPWorldTour post on X

x.com

This article is a sponsored article by
''.