イングランドのロイヤルリザム&セントアンズを舞台に行われている今季メジャー最終戦「AIG女子オープン」。深いポットバンカーと厳しい海風が選手たちを苦しめる中、第2ラウンドを終えて通算7アンダーで単独首位に浮上したのが、韓国のユ・ヘランだ。彼女がメジャー大会において第2ラウンド終了時点で首位に立つのは、自身のキャリアで初めてのことだ。リーダーボードの頂点に立つ彼女の強さを明確に裏付けているのが、他の追随を許さない圧倒的なスタッツ(データ)である。強風の中でスコアメイクに苦しむ選手が続出する中、ヘランは2日間で出場選手中最多となる「11個」のバーディを量産。さらに驚愕すべきは、グリーンを正確に捉えるパーオン率だ。36ホール中31ホールでパーオンに成功し、その確率は実に「約86%」。これも堂々のフィールドトップである。難コースの罠をことごとく完璧に回避し、2日間でボギー以上をわずか3つに抑え込む異次元のショット力を披露している。

「メジャー3連勝」の重圧と、解き放たれた「フリー」な心境

今季のユ・ヘランの強さは際立っている。すでに「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」と「アムンディ・エビアン選手権」を制しており、もし今大会で優勝すれば、同郷の大先輩であるパク・インビが2013年に達成して以来となる「同一年メジャー開幕3連勝」という歴史的偉業を達成することになる。

普通であれば、その途方もない重圧に押しつぶされそうになるだろう。しかし、ラウンド後の会見に現れた彼女の口から出たのは、気負いのない「楽しむ」という言葉だった。

「このコースはバンカーが多く、グリーンもタフで、おまけに風も強いので、ゴルフをしていて非常にストレスが多いんです。だからこそ、キャディと一緒にゴルフコースの中で楽しみを見つけようと努めています」

かつてメジャー初優勝を果たす前は、「絶対に勝ちたい」という強い重圧に苦しんでいたというヘラン。しかし、一度頂点を極めたことで彼女の心境は一変した。

「勝ったことで心が穏やかになり、ラウンド後の時間のことなども考えられるようになりました。だから今は、とても『フリー(自由)』な気分でゴルフができているんです」

15年以上にわたるゴルフ人生の中で、彼女は首位争いのプレッシャーとどう向き合うかを学んできた。

「リーダーボードの上位という良いポジションにいる経験をたくさん積んで学んできました。だから最近はとても落ち着いていますし、コースにいるのがとても幸せなんです」

重圧から解放され、純粋にゴルフを楽しむ“無欲の境地”に達していることこそが、彼女の快進撃を支えている。

同組のコルダとリディア・コーから学ぶ「謙虚さ」、そして互いへのリスペクト

圧倒的なスタッツと無欲のメンタルを持つヘランだが、彼女の最大の魅力は、どれほど自分が好スコアを出していても決して慢心しない「謙虚さ」にある。

予選ラウンドの2日間、彼女は世界ランキング1位のネリー・コルダと、元世界1位のリディア・コーという、女子ゴルフ界を代表するトップスター2人と同組でプレーした。自分が二人をスコアで大きくリードする展開となっても、ヘランは彼女たちの一挙手一投足から貪欲に学びを得ていた。

「ネリーは決してベストなラウンドではありませんでしたが、とても冷静でした。それを見て学び、私自身もタフなスタートを切った中で冷静でいられたんです。リディアのコースマネジメントには驚かされました。タフな状況に陥っても、ボールをどこに置くべきかを完全に知っていましたから」

「私の英語力では、彼女たちがいかに素晴らしいか、どうすればあんなに良いプレーができるのかを十分に表現できません」と照れ笑いを浮かべながらも、ライバルたちへ最大限の敬意を払う。

ヘランが謙虚に学びを語る一方で、同組でプレーした世界女王コルダもまた、ヘランの圧倒的な強さに舌を巻いていた。

「本当にソリッド(堅実)でした。直近のメジャーで2連勝しているのだから当然ですが、彼女が今、非常に自信に満ちた選手であることがわかります。ショットも本当に良いですし、パッティングも実に素晴らしいです」

世界最高峰のライバル同士が互いの強さを認め合い、リスペクトを捧げ合っているのだ。

実は、今回同組でプレーした百戦錬磨の元世界1位リディア・コーも、開幕前の会見の時点でヘランの強さの本質を見抜いていた。メジャー連勝という偉業について「前代未聞で、本当に印象的」と称賛した上で、彼女のメンタルをこう分析していた。

「彼女はコース上でとても穏やかな振る舞いをします。決して感情が高ぶりすぎたり沈みすぎたりしない。だからこそ、プレッシャーのかかる状況でもあれほど素晴らしいプレーができるのでしょう」

猛追する桑木志帆ら、日本勢10名が決勝ラウンドへ

レジェンドをも唸らせる圧倒的なゴルフを展開するヘランだが、その背中を1打差で猛追しているのが日本の桑木志帆だ。初日「66」の好発進を決めた桑木は、2日目も「70」とスコアをまとめ、通算6アンダーの「単独2位」という絶好の位置で週末を迎える。

さらに日本勢は、勝みなみも通算2アンダーの6位タイと上位に食い込んでいる。その他、竹田麗央が20位タイ(イーブン)、西郷真央が25位タイ(1オーバー)、畑岡奈紗、荒木優奈、岩井明愛が31位タイ(2オーバー)、笹生優花、岩井千怜が45位タイ(3オーバー)、そして古江彩佳がカットラインぎりぎりの55位タイ(4オーバー)で予選を通過。過酷なリンクスコースを舞台に、日本勢10名が決勝ラウンドへ駒を進める大健闘を見せている。

予測不能な週末へ

画像: 15番でバーディを奪うと小さくガッツポーズをするユ・ヘラン

15番でバーディを奪うと小さくガッツポーズをするユ・ヘラン

レジェンドたちの言葉を自ら証明するかのように、ヘランは今大会でも「無欲の境地」で過酷なリンクスを攻略している。

「メジャーでは何が起こるか誰にも分かりません。だから、他の選手にフォーカスするのではなく、自分のゴルフとコースのことだけを考え続けます」

偉業達成への重圧も、トッププロたちとの熾烈な争いも、今の彼女には関係ない。ただ自分のスウィングに集中し、難しいリンクスコースをキャディとともに楽しむだけだ。

圧倒的なショット力と無欲の境地、そして謙虚な探究心を併せ持つユ・ヘラン。歴史的「メジャー3連勝」へ向け、彼女は静かに、そして幸せな笑顔とともに、予測不能な週末の36ホールへと歩みを進める。

写真/R&A提供


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