「アグレッシブに攻めない」 4番アイアンが導くリスク管理
初日こそ難しいポジションに苦しめられ「73」とスコアを落としたコルダ。しかし、第2ラウンドでは「68」(6バーディ・3ボギー)と息を吹き返し、通算1アンダーの14位タイへと一気に浮上した。ラウンド後、彼女は確かな手応えを口にした。
「3番ホールの右へのミスを除けば、今日は本当にソリッド(堅実)にボールを打てました。そして、このコースではまさにそれが必要不可欠なのです」
その「ソリッド」という言葉を裏付けるのが、初日からのスタッツの劇的な向上だ。公式データによると、初日は約56%(10/18)にとどまっていたパーオン率が、第2ラウンドでは「約78%(14/18)」へと跳ね上がった。フェアウェイキープ率も9/14から11/14へと向上し、パット数も31から29へ減少。数字の面からも、彼女の優れた修正力とプレーの堅実さが完璧に証明されている。

3番をボギーとした後の4番ティーではドライバーを振りぬいたネリー・コルダ。このホールのバーディで勢いに乗った
リンクスを攻略する鍵について、コルダは「ポットバンカーを避け、バウンドをしっかり判断すること」だと強調する。特に、刻一刻と変化する地面の硬さへの警戒は怠らない。
「一見しただけでは分かりませんが、フェアウェイは乾いて硬くなっています。昨日よりも確実に硬さが増していますから、バウンドを正確に判断して良いポジションをキープしなければならないのです」
弾道が予測不能なリンクスにおいて、彼女が導き出した一つの解決策は「リスクの徹底排除」だ。
「アグレッシブに攻めた結果バンカーに捕まり、出すだけになった後の3打目をグリーンに向けて打つくらいなら、パー4のティーショットを4番アイアンで刻むほうが良い場合があります」
世界1位の飛距離と技術を持っていれば、ドライバーで果敢に攻めたい衝動に駆られる場面もあるだろう。しかし、彼女は不条理な罠に自ら飛び込むような真似はしない。4番アイアンという今回バッグに入れた武器を冷静に選択し、確実にフェアウェイの安全な場所を確保する。そのクレバーなコースマネジメントこそが、トップに君臨し続ける最大の理由なのだ。
グリーン上での異例の決断とチームワーク
ティーからグリーンにかけて徹底したリスク管理でリンクスに適応しているコルダだが、グリーン上では今週、彼女にとって“ある異例の変化”を取り入れていた。

11番でバーディを奪い、観客の声援に応えるネリー・コルダ
「普段は自分自身でラインを読むのが好きだし、自分の決断に自信を持っています」と語る彼女が、今週に限ってはキャディのジェイソンにライン読みを頼んでいるのだ。その理由について、コルダは率直に打ち明けた。
「ここでは風の影響も考慮してプレーしなければならず、私にはブレーク(傾斜)がよく見えなかったからです。だからジェイソンを頼ることにしました」
普段のプレースタイルを変えてまでキャディの目を借りるという決断は、リンクス特有の強風がボールの転がりにまでいかに大きな影響を及ぼしているかを物語っている。己の感覚だけに固執するのではなく、状況に応じて信頼するチームの力を借りる柔軟な姿勢も、過酷なメジャーを勝ち抜くために必要な資質と言える。
そして、このチームワークはすぐに最高の形で結実した。第2ラウンドで彼女は、遠い距離からの価値あるロングパットを見事に沈めて見せたのだ。
会見でそのパットについて「遠距離からでしたが、ラウンドに向けた素晴らしい起爆剤(キックスタート)になりました」と笑顔で振り返ったコルダ。この一打が「68」という好スコアの大きな原動力となった。
伝説超えをかけた残り36ホールのサバイバルへ
ショットの精度を高め、グリーン上ではチームの力を結集してリンクスの難局を乗り越えてきたコルダ。首位との差はまだあるが、勝負はここからだ。決勝ラウンドのサバイバルに向け、彼女は静かに闘志を燃やす。
「残り36ホール。何が起こるか分からないのがゴルフであり、リンクスゴルフです。今日と同じ態度で週末に臨むだけです」
不条理なバウンドや予測不能な風に対し、感情を乱すことなく、冷静な思考と緻密な戦略で立ち向かう。
実は今大会、コルダにはもう一つの「歴史的偉業」がかかっている。彼女が今週単独2位以上の成績を収めれば、25年以上にもわたってLPGAツアーの生涯獲得賞金ランキング1位に君臨し続けてきた伝説のゴルファー、アニカ・ソレンスタムをついに抜き去り、歴代トップに躍り出ることになるのだ。
賞金額が飛躍的に高騰している時代背景を考えれば、単純な比較はできないかもしれない。それでも、四半世紀にわたって誰にも破られなかった大記録を更新するという事実は、間違いなく歴史的な快挙である。
今季メジャー3勝目、そして伝説超えの賞金女王へ――。研ぎ澄まされた世界1位の逆襲がいよいよ始まる。
写真/R&A提供
