ウィンダム選手権は、1938年に「グレーター・グリーンズボロ・オープン」という名称でスタートした、アメリカ・ノースカロライナ州で開催されるプロゴルフトーナメントとして最も古い歴史を誇る大会である。2003年大会では丸山茂樹プロが優勝し、PGAツアー3勝目を挙げた。2002年から専属契約を結んだ杉澤キャディにとっても、アメリカに渡って2年目で初めて掴んだ記念すべきPGAツアー優勝となった。
杉ちゃんにとっても記憶に深く刻まれた本大会で、注目したい選手がいるという。
「ウィンダム選手権で注目しているのはA・J・エワートですね。彼は2026年がPGAツアーのルーキーイヤーなんですよ。2025年のPGAツアーQスクールを首位で突破し、ツアーカードを獲得しました。現在はフェデックスカップランキング100位以内につけ、来季のシード権獲得へ大きく前進しています。今季は20試合以上に出場して安定して予選を通過しており、トップ25入りも6度記録するなど、派手な成績こそないものの安定した戦いぶりが光っています」
その安定感の土台となっているのが、学生時代から培ってきた確かな実力であると杉澤キャディは言う。
「出身はフロリダ州のバリー大学で、同大学の先輩にはPGAツアー優勝経験を持つアダム・スベンソンがいます。2021年のカナダアマチュア選手権では準優勝を果たし、学生時代から高い実力を示してきました。今季はストロークゲインド・パッティングでツアー10位とグリーン上で抜群の強さを誇る一方で、ティーショットにはまだ伸びしろを残していますね。ティーショットがさらに安定すれば、今大会での活躍はもちろん、その先のツアー初優勝にも期待が膨らむ存在だと思っています。あと、A・J・エワートを語るうえで面白いのが、彼のお父さんの存在ですね。実はお父さんも非常にユニークな経歴を持っていて、A・J・エワートがゴルフに向き合う姿勢にも大きく影響していると思います」
「お父さんのブラッドさんは元ティーチングプロで、32カ国以上でゴルフに携わってきたゴルフジャーナリストでもあります。1990年代には東京を拠点にライターやインストラクターとして活動し、さらにトリックショットの名手としても知られている人物です。ゴルフ界では『A・J・エワートのお父さん』というよりも、『ブラッドの息子がA・J・エワート』と言われるくらい、存在感のある方なんです」

Qスクール1位の資格で26年シーズンを戦っているA・J・エワート
「そんなブラッドさんの教育方針も非常に面白いんです。A・J・エワートが子どもの頃は、『予選を通過すればステーキ、落ちれば豆料理』というように、結果に対する責任を自然と学ばせていたそうです。ただ厳しいだけではなく、ゴルフにだけに集中させるのではなくバスケットボールにも取り組ませていました。そこにはジャック・ニクラスの“子どもにはさまざまな経験をさせる”という考え方も影響していて、ゴルファーとしてだけではなく、人間としての成長を大切にしていたんだと思います。そして、そうした環境の中で育ったことが、今のA・J・エワートのプレースタイルにもつながっているんですよね。特に彼の大きな武器の一つがコースマネジメントです。実はお父さんのブラッドさんはコース設計のコンサルタントとしても活動していて、幼い頃から『なぜこの場所にバンカーがあるのか』『どういう意図でこのホールが作られているのか』という、コースを見る視点を自然と学んできたそうです。単純に技術だけではなく、コース全体をどう攻略するかという考え方を身につけてきた。それがルーキーイヤーながら冷静な判断力や安定したプレーにつながっているんだと思います。将来的には世界選抜チームの中心選手になる可能性も秘めている、そんな選手です」
今大会には日本勢から松山英樹も出場する。経験豊富な松山が存在感を示すのか、それともA・J・エワートのような若手が新たなスター候補として台頭するのか。シーズン終盤ならではの熱い戦いに注目である。
U-NEXT/窪山京真
写真/Getty Images
