男子プロのスペックはパワーが違いすぎて参考になりにくいが、ヘッドスピード38〜43m/s前後の女子プロのセッティングは、我々アマチュアゴルファーにとってまさに「飛びと安定感の宝の山」。そこで本連載では、いまツアーで活躍する女子プロのドライバースペック(ヘッド、シャフト、グリップ)を完全再現! 試打するのは、世に出たほぼすべてのクラブを打ってきた“キング・オブ・試打”こと堀越良和プロ。なぜ女子プロはこの組み合わせを選んだのか? アマチュアも参考になるのか? 女子プロが使用するギア選びを探ってみた。
画像: ドライビングディスタンスで15位につける菅沼菜々(8/12現在)(撮影/姉﨑正)

ドライビングディスタンスで15位につける菅沼菜々(8/12現在)(撮影/姉﨑正)

第2回に取り上げるのは、2026年「NTTドコモビジネスレディス」で見事優勝を果たし完全復活を遂げた、ツアーのアイドルキャラ・菅沼菜々プロ。今季も【ドライビングディスタンス:248.93Y(15位)/フェアウェイキープ率:61.85%(77位)】と、その雰囲気とは裏腹に飛ばし屋の一面を持つ。

今回完全再現した彼女のドライバーは、ヘッドが『ゼクシオ14+』(ロフト9度)、シャフトには今でも人気の高いグラファイトデザインの『Tour AD PT-5』(S・45.75インチ)という組み合わせ。グリップのフィーリングまで本人仕様に合わせたスペシャルな1本を準備した。

試打環境はインドア、計測器はトラックマン4、計測用ボールは室内測定でも高精度に測定可能なタイトリスト「ProV1 RCT」ボールを採用

画像: トラックマン4、タイトリスト「ProV1 RCT」を使用

トラックマン4、タイトリスト「ProV1 RCT」を使用

「浅い前傾&ボールの近くに立つ」アドレスと長尺PTの組み合わせ

画像: 『ゼクシオ14+(9度)』、シャフトは『ツアーAD PT(5S)』、グリップはイオミック「スティッキー 2.3」※プロはクラブを変える頻度が高いため、バランスは一般的なD2程度で試打

『ゼクシオ14+(9度)』、シャフトは『ツアーAD PT(5S)』、グリップはイオミック「スティッキー 2.3」※プロはクラブを変える頻度が高いため、バランスは一般的なD2程度で試打

ヘッドは「ゼクシオ14+」というやさしめなモデルだが、ロフトは9度。シャフトは45.75インチのPTシャフトという、飛距離にこだわりがありそうな興味深い組み合わせ。この意外な組み合わせに興味津々な堀越プロと編集部。

試打者/ほりこし・よしかず 試打経験に裏打ちされた豊富な知識と確かな試打技量で、大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。クレアゴルフフィールド所属

編集部:菅沼プロといえば、フェードが持ち味の飛ばし屋ですが、アドレスを見ると『前傾が浅く、ボールの近くに立つ』スタイルが非常に特徴的ですよね。45.75インチという少し長めのPTシャフトを合わせているのはどういう狙いなんでしょうか?

画像: アドレス(写真左)からトップ(画像中)、インパクト(画像右)を比べると、頭が飛球線側に傾いていることがわかる(撮影/姉崎正)

アドレス(写真左)からトップ(画像中)、インパクト(画像右)を比べると、頭が飛球線側に傾いていることがわかる(撮影/姉崎正)

堀越プロ:スウィング写真を見ると、アドレスでボールはやや中寄りですが、トップからダウンスウィングで頭が右サイドに戻り、最下点が後方にズレることでアッパーブローになっていますね。そして、あえてフェースの「芯より上(上っ面)」でとらえていそうなのが彼女の大きな特徴ですね。

編集部:なるほど! 堀越プロ、芯の上で打つことにはどういう意味があるんでしょうか?

堀越プロ:フェース上部で打つと、ギア効果でスピン量が少なくなり、同時に打ち出し角が高くなるんです。そもそもゼクシオ14シリーズ自体、フェース全体の反発エリアが広くヘッド自体の初速性能が非常に高い。そのうえで、スタンダードな『14』がつかまりと高弾道重視のやさしい設計なのに対し、この『14+』は叩きにいっても低スピン・高初速仕様のセミアスリート向けモデルなんです。10度台でも良いところをあえて9度にすることで、ヘッドが持つ高いポテンシャルを活かして「ボールスピード(初速)」を最大限引き出している気がしますね。さらに45.75インチという長さで遠心力を最大化しつつ、つかまり感のある『Tour AD PT』を組むことで、キャリーだけでなくランも期待できるセッティングに仕上げているような気がします。ただ、これ「ゼクシオだからやさしそう」とアマチュアが安易に真似すると、比較的クラブが長めということもあり、右にすっぽ抜けるか球が上がらずドロップするので注意が必要です。

「高初速×高打ち出しの激飛びセッティング」(堀越プロ)

編集部:実際に構えてみた印象はどうですか?

堀越プロ:ゼクシオらしいやさしげな顔つきなんですけど、ロフトが9度なのでフェースがかぶっていなくて、すごく構えやすいですね。45.75インチという長さも、アドレスしてみると嫌なプレッシャーを感じません。

編集部:シャフトとグリップのフィーリングはいかがですか?

堀越プロ:やっぱり『Tour AD PT』は名器と謳われているシャフトだと感じますね。シャフト全体が癖なくスムーズにしなってくれるので、45.75インチという長さを感じさせない振りやすさがあります。そして再現されたグリップを握ると、手元にしっくりと馴染んで力みが抜ける感触があります。バックラインありのグリップによってフェース面を認識でき、体の回転と振り抜きだけでボールを運べる感じが伝わってきました。これは打つのが楽しみですね。

実際に試打を開始! ※菅沼プロに合わせフェードのイメージで試打を開始

堀越プロ:ヘッドスピードに対してボール初速が平均62m/sも出ているのは素晴らしいですね。打ち出し角が14.5度と高く確保され、バックスピン量が2208rpmという『理想の低スピン』に抑えられています。結果、キャリー224.6ヤード、トータル254.6ヤード。41〜42m/s台のヘッドスピードで255ヤード近く飛ぶのは、9度ヘッドと45.75インチ長尺による高いボールスピードと、高打ち出しを作れているからですね。『14+』ならではの高い初速性能もしっかりデータに現れています。

編集部:フェード系で打っても球が強く、キャリーが出たあともランがしっかり伸びていく弾道は気持ちがいいですね。

堀越プロ:そうなんです。45.75インチの長尺でボールスピードを稼ぎ、フェース上部でのヒットを狙って打ち出し角を上げながらスピンを削る。そしてつかまり感のあるPTシャフトが球の強さをアシストしてくれるので、ビッグキャリーからランも伸びる理想の弾道になりますね。

一般的なアマチュア男性ゴルファーを想定し、平均ヘッドスピード42m/s前後で試打
※10球試打したうちの平均値を算出

●キャリー/224.6Y
●総飛距離/254.6Y
●ボール初速/62.3m/s
●打ち出し角/14.5度
●スピン量/2208rpm

堀越プロの総評

画像: 堀越プロの総評

今回の菅沼菜々プロのセッティングは、まさに『9度のヘッドと45.75インチの長尺による高打ち出し×高いボールスピード』が大きな飛距離性能を生み出しているセッティングでした。アッパーブローで振り抜く彼女のスウィングだからこそ、9度ヘッドとつかまり感のあるPTシャフトのポテンシャルが100%引き出されています。今季ディスタンス15位(248.93Y)という飛距離の裏は、ランまで計算されたこの緻密なギアとスウィングの融合があったわけです。

ただ万人向けか、というとそうではないようです。フェースの下目でヒットすることが多いゴルファーや、上から叩きにいってしまうゴルファーがそのまま使うと、スピン不足でキャリーが出ずにドロップするか、スライスするリスクがあります。

もし真似をするなら、あえてロフト角10.5度のヘッドを選んで打ち出し角と高さを確保したり、シャフトの重量を40g台に落とすアレンジを加えるのがおすすめです。そうすれば、つかまり感のある強弾道で菅沼プロのようなビッグキャリー&高初速のドライバーショットを体感できるはずです。

次回の女子プロセッティングもお楽しみに!

協力/トラックマン、ダンロップ、グラファイトデザイン、クレアゴルフフィールド


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