「通算6オーバー」の死闘。初日ブービーからの劇的V
各チームが2桁アンダーの伸ばし合いを展開することが日常のLIVゴルフにおいて、「通算6オーバー」での戴冠という事実自体が今大会の異次元の難易度を物語っている。舞台となったベッドミンスターは全長7651ヤード(パー71)と今季リーグ2番目の長さを誇り、前回(2023年)大会から125ヤード以上も距離が延長されたモンスターコースだ。ポール・ケーシーが「まさにメジャー級。ピンポジションも非常に難しかった」と吐露したように、深いラフとソフトなグリーンの罠が幾多のスター選手を打ちのめした。
そんな超難関で、初日終了時点のクラッシャーズGCはチーム合計「11オーバー」で11位タイ。13チーム中で下から2番目(ブービー)という絶望的な位置に沈んでいた。そこから彼らはいかにして頂点へと這い上がったのか。
2日目に「1日で7アンダー」という怒濤の猛チャージを見せて通算4オーバーの5位へと一気に跳ね上がると、最終日はケーシーの「68(3アンダー)」の活躍もあり、日曜日を1アンダーで切り抜けて通算6オーバーでフィニッシュ。2位のレジョンXIIIとトルクGCを2打差で振り切り、奇跡の大逆転Vを成し遂げたのだ。
この大逆転劇の背景にあったのは、緻密な戦術でもスウィングの劇的な改造でもなく、「互いへの絶対的な信頼」だった。
戦略会議ゼロ、2022年から続く「不動の絆」
初日の大出遅れを喫した夜、彼らは深刻な反省会を開くことも、あえて次の日の戦略を話し合うこともしなかった。その理由をラヒリはこう明かす。
「私たちは、戦略について話し合ったことは一度もないと思う。だからこのチームはうまくいくんだ。4人全員が、必要な結果を出すために自分が何をすべきか分かっているからね」
ラヒリは、絶望的とも言える初日のリーダーボードを見た時の心境をこう振り返る。
「見慣れない順位表を見て、私はこう言ったんだ。『これで悪いラウンドは終わった。このコースはここからもっと難しくなるけど、我々が勝負圏外に置いていかれる(脱落する)ことなど決してない』とね。もしチームとして1日でも良い日があれば、どんなコースでも必ず追いつける。あの悲惨な初日の後でも、私は自分たちに最高のチャンスがあると信じていたよ」

5シーズンにわたって同じメンバーでチームを組んでいるクラッシャーズGC
メンバーの移籍や入れ替えが激しいLIVゴルフにおいて、クラッシャーズGCは極めて特異な存在だ。2022年8月のボストン大会でラヒリが加入して以来、約4年間・5シーズンにわたって一度もメンバーチェンジを行わず、同じ4人で戦い続けている唯一のチームなのである。
怪我による離脱や個人のスランプなど、数々の逆境をこの4人で共に乗り越えてきた歴史。彼らの間には、言葉による「戦略」などを超越した、盤石の信頼関係が築かれていたのだ。
デシャンボーが語る「チーム戦の魔力」
チームが奇跡の逆転劇を演じる中、キャプテンのデシャンボー自身は深い苦悩の中にいた。個人戦の年間ポイントレースで上位を争う中、初日に「76」、2日目に「74」を叩くなど、個人通算7オーバーとスコアメイクに苦しみ続けていたのだ。
「自分のスキルやポテンシャルを考えれば、これだけオーバーパーを叩くのは少しがっかりだし、正直言って恥ずかしいことだ」
メジャー覇者としての強烈なプライドが、不甲斐ない自分を責め立てる。通常のツアートーナメントであれば、集中力が途切れ、心が折れてしまってもおかしくない状況だ。しかし、彼には諦められない理由があった。
「でも、『自分のためだけでなく、チームのためにイーブンパーに戻さなければ』と思い直したんだ。ただ自分一人のためにプレーしているわけじゃない。これこそが、個人戦のゴルフよりチーム戦のゴルフをはるかに素晴らしいものにしている要素なんだよ。すべてのショットのために戦わなければならないんだ」
キャプテンとしての強烈な責任感が、デシャンボーに執念を呼び起こした。彼は週末(3日目70、最終日71)をしっかりとアンダーパー・イーブンパーでまとめ上げ、泥臭く1打を削り出してチームの勝利に貢献した。個人の不調をチームへの情熱でカバーする――これこそが、LIVゴルフがもたらした“チーム戦の魔力”である。
最強チームの証明
「我々は香港のようなコースでも、このベッドミンスターのようなコースでも勝ってきた。どんなタイプのコースにも適応できるんだ。毎週ただ懸命にプレーし、常に100%の力を出し切るだけさ」と、最終日に「68」の猛チャージを見せたポール・ケーシーは胸を張る。
それに呼応するように、キャプテンのデシャンボーも力強く頷いた。
「ただ適当に打つようなショットは1打たりともない。すべてのショットに食らいつき、毎回100%の力を注ぎ込んでいるんだ」
たとえ個人の調子がどん底にあろうとも、仲間のために泥臭く1打を削り出し、互いを信じ抜く。初日ブービーからの大逆転Vは、クラッシャーズGCが単なるスター選手の寄せ集めではなく、強固な絆で結ばれた「真の最強チーム」であることを、世界中に証明する劇的な勝利となった。
写真/LIVゴルフ提供
