「北海道meijiカップ」で今季4人目(パク・ヒョンギョンを除く)のツアー初優勝を飾った吉澤柚月。深いラフと11フィートを超える速さのあるグリーンで自らスコアを伸ばし、勝利を勝ち取ったスウィングをプロゴルファー・中村修が解説する。

大きく成長した3年目で掴んだ初優勝

吉澤柚月選手は2023年のプロテストに合格すると、同年末のファイナルQTを28位で通過し、24年にレギュラーツアーデビューを果たしました。しかし、参戦した19試合中18試合で予選落ちを喫するなど、ほろ苦いルーキーイヤーを過ごすことになります。

翌25年は23試合に出場。シーズン前半は予選落ちが続いたものの、夏場から安定して予選を通過するようになり、徐々に上位争いにも顔を出すようになっていきました。それでも最終日にスコアを伸ばしきれず順位を落として終えるというジレンマを抱えていたのです。

そして勝負の3年目となった今季。QTランキング76位という位置から推薦出場した数少ないチャンスで確実に結果を残し、リランキング(第1回リランキング2位)で出場権を掴み取ると、一気に初優勝まで駆け上がりました。その裏には一体どのような成長があったのでしょうか。

「北海道meijiカップ」が終わった翌日、本人に話を聞く機会に恵まれたため初優勝に繋がった要因を尋ねてみると、「自分を客観視というか、冷静に見られるようになったこと」と「ミスをしても次に気持ちを切り替えられるようになってきたこと」だと教えてくれました。

「自分のやるべきことをやり切った後の結果はコントロールできない。『打つ前の準備をしっかりやるだけ』と考えたら、結果に対して割り切れるようになってきた」

実際、最終組でスタートした最終日のプレーは非常に冷静で落ち着いており、勝負どころの場面でもショット、パットともに揺らぐことなく確実に決めていました。プレー中のマインドの成長こそがスコアに直結し、上位で戦えるようになった最大の要因なのだと実感させられます。

惜敗を糧に掴んだ「相思相愛」の相棒とのリベンジ

5月末の「リゾートトラスト レディス」では、河本結選手とのプレーオフの末に惜しくも敗れましたが、その時タッグを組んだ牧野みゆきキャディと今大会で見事にリベンジを果たしました。

牧野キャディとは「明治安田レディス」でも6位タイに入っており、コンビを組んだ試合でトップ10を外していないという相性の良さが光ります。ルーキーの倉林紅選手の初優勝を支えたのも牧野キャディでしたが、彼女の持つ柔らかな言葉遣いと前向きに切り替えを促す手綱さばきは、若手選手の秘めたパフォーマンスを鮮やかに引き出す秘訣なのかもしれません。

画像: 吉澤柚月の初優勝をサポートした牧野みゆきキャディ(右)(撮影/岡沢裕行)

吉澤柚月の初優勝をサポートした牧野みゆきキャディ(右)(撮影/岡沢裕行)

牧野キャディに話を聞くと、「リゾートトラストで負けてから『私に何が足りないと思いますか?』と聞かれました。彼女は決して飛ばないほうではありませんが、『もう少し飛距離が伸びたら攻め方も変わるよね』と話していたんです」と明かしてくれました。

惜敗からの改善策を探り、スピン量を減らすためシャフトのフレックスをSからXへチェンジ。飛距離を伸ばしたことも大きな勝因となりました。

コンパクトなトップから腹圧を抜かずに押し込むインパクト

吉澤選手のスウィングは、コンパクトなトップが特徴的です。右手を少し開いて握っているため親指がシャフトの上に乗っています。

トップでは左手親指の上にシャフトを乗せるように使うプレーヤーがほとんどですが、吉澤選手は右手親指でシャフトを支えています。そのため、トップでのシャフトの傾きは地面と平行よりも浅いポジションに収まります。

画像: トップで右手の親指の上にシャフトを乗せることでコンパクトなトップを作る(撮影/姉﨑正)

トップで右手の親指の上にシャフトを乗せることでコンパクトなトップを作る(撮影/姉﨑正)

コンパクトなトップの最大のメリットは、振り遅れにくいこと。牧野キャディも「安心して見ていられる」と太鼓判を押す、安定したショットの要となっています。

しっかり左へ踏み込んでから切り返すダウンスウィングは、上半身と下半身の大きな捻転差を生み出します。この捻転差によって、緩んでいない左腕に引っ張られたシャフトにはインパクトに向けて「逆しなり」が発生し、ヘッドを劇的に加速させてくれるのです。

画像: インパクトでボールを押し込むようにしっかりと腹圧をかけ続けている(撮影/姉﨑正)

インパクトでボールを押し込むようにしっかりと腹圧をかけ続けている(撮影/姉﨑正)

インパクトの形を見ると、お腹でボールを押しているように見えます。そのためには、切り返しからしっかりと腹圧をかけ続けることが不可欠です。腹圧が抜けると腰が浮いて伸び上がる要因になりますので、吉澤選手のようにインパクトでは腹圧をかけたままボールを押し込んでみましょう。

最後に、打つ前に必ず行っていた「腰から腰までの振り幅のルーティン」について尋ねると、「インパクトで終わってしまうとフェースが開いて右に飛ぶことが多かったので、インパクトで止まらずにしっかりフォローまで回していくイメージを持つようにした」と語ってくれました。

そうすることでフェース向きの意識が高まり、しっかり振り抜く感覚を持ったまま本番のスウィングに入れると教えてくれました。

画像: ルーティンではフェースの向きをキープしながらフォローまで回していくイメージを持つという(撮影/岡沢裕行)

ルーティンではフェースの向きをキープしながらフォローまで回していくイメージを持つという(撮影/岡沢裕行)

心・技・体にギアのマッチング、そして最大の味方である相性抜群のキャディ。すべてが噛み合ったことで掴み取った感動の初優勝となりました。シーズン後半戦も牧野キャディとのコンビが見られるとのことですので、さらなる飛躍に引き続き注目していきましょう。


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