
「ゴルフダイジェスト・ジュニアカップ」で世代を跨ぐ2連覇を達成した赤穂未来さん(右・滝川第二高等学校の1年生)と父・勇介さん(左)を密着取材させてもらった
「ジュニアカップ」の模様はこちら↓
プロの世界を知る父の「贅沢な経験」
父・勇介さんは異色の経歴を持つ。
「プレーヤーというより、ゴルフ欲があった」と語るように、高校時代からゴルフギアへの探求心が強くゴルフ専門誌を読み漁っていた。さらに米国のオハイオ・ドミニカン大学へ進学すると、並行して名門のゴルフ場で開講されていたゴルフアカデミーを受講しティーチングプロの資格を取得。その後一時はティーチングプロの道も考えたが、「プロを目指していたわけではない」という背景が大きな壁となっていた。
「その頃に、子供が生まれたら『ゴルフを教えてあげたい』という夢を抱いたかもしれません」(父・勇介さん、以下同)
ジレンマを抱えていた勇介さんのもとに、父から「ツアーレップを探している知人がいる」という話が舞い込んできた。そうして足を踏み入れることになった男子プロのツアー現場。歴は20年以上になり、片山晋呉らトッププロたちのギアの調整を行ってきた。
「片山晋呉さんなどのトッププロのみなさん、ベテランのキャディの人たちと話をして、生のスウィングを間近で見られるのは本当に贅沢な経験です。やっぱり“上手い人は道具を持つだけ”でわかるほど、レベルが違っていました」
勝負に必要なのは「準備」と「適切な目標」

間近でトッププロを見てきた勇介さんが、何より重要だと伝えているのは“準備”だ
ツアー現場へ足を運び、プロやキャディの傍らに立つ存在。ツアーレップが対峙するのは、彼らの“本音”だ。
「(記事には)書けないことも多いけれど、それくらいの“図太さ”みたいなものがないと“勝てないんか”と思いました。いい意味で人に気を遣っている場合ではない、ということですよね」
綺麗事だけでは戦い抜けないプロの世界。そうした“本質”を見てきたなかで、プロを目指したいという娘・未来さんには、どんな指導を行っているのか?
「プロには何が一番大事かと問われたら、『準備かな』って答えると思う」と勇介さん。「練習もやし、道具を揃えて自分の状態を良くするのも準備。“準備”には全部が入ってくるからね。例えば、いきなり家は建てられないでしょ? 設計図があって基礎があって、それから徐々に家が建てられていく。ゴルフも同じだと思います」と土台作りの重要性を説く。
だから目標設定も現実的だ。
「ボクシングの世界で言うと、いきなり世界のチャンピオンクラスとは戦わないですよね。勢いがあって上に行きそうなホープでも、ぼこぼこに負けたら“負けのイメージ”がついてしまいますから。これは絶対にいけない。“ちょうどいいんちゃうか”という選手同士を戦わせるように、自分の実力を知って、そのレベルに合わせた練習や試合を選びながら上手に前に進んでいかないといけません」
叶わないほど大きいものが夢なら、自分の力量でベストを尽くした際に届きそうなところが目標。だからこそ目標を立てるために力量を見極める大切さを強調する。
親子だからこそ難しい、二人三脚の距離感
娘との関係性については、どんな部分に気を遣っているのか?
「親子だから感情が入る。それは人の倍難しいことやから、成功したら倍嬉しい。毎週悩んでいますよね(笑)。それでもやっぱり、目線はどうしても“お父さん”。こっちも大人にならないとね。毎日勉強です」
一方で練習では指導していても、試合では未来さんのプレーを追いかけることはないという。
「昨年の『スタンレーレディス』のときなんかは、『なんで見ないのか』と奥さんに怒られたくらいです。親が子供のプレーを背負うと、ミスできなくなってしんどくなると思うんです。楽しんでいるくらいがちょうどいいんじゃないかな」
このような適度な距離感のもとで成長した未来さんは、自分にも他人にも負けず嫌いで、舞台度胸のある選手になった。
「将来は日本の選手だけじゃなくて、海外の強い選手とも戦って、アメリカのツアーで勝ちたいです。(すでに海外で戦い始めている同世代の選手もいるが)そのために自分が出られる試合のなかで上位を目指して頑張るだけです」(未来さん)
次回は、身長155cmと小柄な未来さんが、同世代の選手たちとの圧倒的な体格差、飛距離の壁をいかにして乗り越えてきたのか。二人三脚で見出した「精度」と「道具選び」の秘密に迫る。

「帽子を被っているのが自分(の姿)」と話し、撮影のために慌てて取りに行ってくれた勇介さんと、お茶目な父を見て思わず吹き出してしまう未来さん

