コルダの「思考のシンプル化」と、リディア・コーの「運命の地での再生」

完璧主義を捨て、目の前の一打に集中することが重要と話すネリー・コルダ(写真は26年アムンディ・エビアン選手権)
今季すでにメジャー2勝を含む4勝を挙げ、圧倒的な強さを見せているネリー・コルダだが、彼女の強さの根源は「完璧主義の放棄」にある。
圧倒的な実績を誇る彼女でさえ、直前のメジャー大会「アムンディ・エビアン選手権」では予選落ちを喫する残酷な現実を味わった。「時にはゴルフに激しく打ちのめされる」と語る通り、ゴルフは思い通りにならないスポーツだ。だからこそ、彼女は調子が上がらない日のメンタルコントロールについてこう明かす。
「自分が常にAゲーム(完璧な調子)を出せるとは限らないし、Bゲームすら出ない日もあると分かっています。だからこそ、Cゲームでもパフォーマンスを発揮できるようにしておくことが重要なんです。目の前の1打を打つことだけを考え、ラウンド中に『何が間違っているか』に精神的なエネルギーを浪費しないようにしています」
調子が悪い時ほど、スウィングの技術的な修正ばかりにとらわれがちだが、この思考のシンプル化こそが、過酷なコースで悪い流れを断ち切り、次の一打に向かうための“自由さ”を生み出している。

不調なときは失敗を素直に受け入れ、地道なプロセスに立ち戻るというリディア・コー(写真は26年アムンディ・エビアン選手権)
一方、殿堂入りを果たしたメジャー3勝のベテラン、リディア・コーもまた、激しいスランプと戦ってきた一人だ。
「ツアーで13年プレーしていても、今季のようにシェブロン選手権と全米女子オープンで連続予選落ちしたような経験はほとんどなく、非常にストレスフルでした。どれだけ経験を積んでも、悪い結果には慣れません」
そう素直にショックを認めつつも、彼女は冷静に前を向く。特に今大会の舞台であるロイヤル・メイフェアGCは、13年前に当時15歳のアマチュアだった彼女がツアー初優勝を飾った「運命の地」だ。
「ここでプレーすることで、当時の潜在意識の記憶を引き出したい。自分の悪い癖を少しずつ取り除き、地道に一貫性を取り戻す作業を重ねるしかないんです」
過去の栄光にしがみつくのではなく、失敗を素直に受け入れ、地道なプロセスに戻ること。これぞ一流の流儀である。
ミンジー・リーの「チームへの信頼」と、ルーキーが掴んだ「無欲の境地」

チームを信頼してプレーに集中することが大事とミンジー・リー(写真は26年アムンディ・エビアン選手権)
現在スウィング改造の過渡期にあるというミンジー・リーは、新しい動きを実戦で試す際の「疑念」との戦いについて語った。
「スウィングを変えている最中に、それをコース上で信じきることは難しい。うまくいかない時は、どうしても自分に疑念を抱いてしまいます」
そんな強いプレッシャーの中で彼女を支えているのが、キャディやチームへの絶対的な信頼だ。前年の本大会最終日、地元カナダの英雄ブルック・ヘンダーソンと一騎打ちの死闘を演じた際、会場全体が相手の応援一色となる「完全アウェイ」の中で優勝を掴み取れたのも、この信頼があったからだ。
「キャディのマイキー(マイケル・ペターソン)がコース上でいつも励ましてくれました。周りの雑音を一切気にせず、チームを信頼して自分たちのプレーにだけ集中する。あとはプレッシャーの下でただ愚直に反復練習をこなすだけです」
そして、今年ツアーカードを獲得したばかりのルーキー、リア・ジョンが語る「プロセスを信じる姿勢」にも深い説得力がある。実は彼女、プロテスト(Qスクール)を受ける直前まで「ゴルフを本気でやめよう」と思い詰めていた。周囲の説得で「これで最後」と挑んだQスクールで驚異的なプレーを見せ、今日のツアーカードを掴み取った背景があるのだ。
「プロになると『早く結果を出さなきゃ』と焦ってしまう。けれど、経験は焦っても手に入らない。いつどこで道が開けるか本当に分からないからこそ、今のタイミングを受け入れ、自分のプロセスに集中するしかないんです」
挫折の淵を味わったからこそたどり着いた彼女の言葉は、若手ならではの焦りを乗り越える強い光となっている。
100点を捨て「不調」を受け入れる強さ
100点の自分を求めず、Cゲームを受け入れるコルダ。失敗の痛みを認め、思い出の地で地道な修正作業に戻るリディア・コー。チームを信じて完全アウェイでも「無」になれるミンジー・リー。そして、挫折を経験したからこそ結果を急がずプロセスを重んじるリア・ジョン。
彼女たちの思考法は、スコアに一喜一憂し、ミスショットを引きずってしまいがちな我々アマチュアにとっても、大きな気づきを与えてくれる。調子が悪い日こそ、プロが実践するこれらのメンタル術を思い出し、目の前の1打に向き合ってみてはいかがだろうか。
写真/アムンディ・エビアン選手権提供
