
6月の「ヨネックスレディス」に続き、ツアー2勝目を挙げた吉田鈴
わずか2カ月でツアー2勝目を達成した要因

2日目に続き、最終日も「フェアウェイキープ率」の高さが勝利につながった
ツアー1勝目から2勝目への壁。多くのプロが苦しむその関門を、吉田鈴はわずか2カ月で突破した。
この勝因を彼女は「フェアウェイキープ率の高さと、計算されたコースマネジメント」だと分析した。
「(一勝目と比べて)あんまり実力や技術面で大きく変わったところはありません。ただ今大会は、結構傾斜の強いコースなので、ボールを付ける位置、持つ番手、そしていろんな球を打っても再現性が高かったこと、これがよかったことかなと思います。(最近は)試合に合わせた球の打ち分けやマネジメントはよくできていますね。あとはゴルフ脳というか、プレーが早くなりスムーズにゴルフができて、頭や体の疲労を少なく試合を終えられている気がします」
最終組での優勝争いという重圧のなかでも、常にフラットな精神状態を保ち続けた。気負うことなく淡々とスコアをまとめる姿は、20代前半で国内ツアー4勝を挙げ海外ツアーに挑んだ姉・優利の面影を感じさせるものだった。
転機となった16番グリーン。冷静な分析が生んだ起死回生の一打

吉田がキーホールだと感じていたのは16番(422ヤード・パー4)
彼女の試合を振り返る言葉を聞くと、余裕のある勝利だったと思う人がいるかもしれない。しかし実際は首位が変わり続ける混戦のなか、前半の吉田はスコアを伸ばせず、3打差を追う後半となっていた。それでも彼女には微塵の焦りもなく、むしろ「(優勝は)全然あり得る」と感じていたと話す。
「トップを走り続けていると、体が硬くなったり守りにいったり。何かしら体が反応してしまう部分がどの選手にもあると思います。それは私もわかるので、だから『上が落とす可能性は十分になる。私があと2つ、3つ伸ばせばプレーオフにも持ち込める』という気持ちでいました」
冷静沈着にありつつ静かに狙いを定める姿勢通り、後半スタートホールの10番(365ヤード・パー4)、12番(149ヤード・パー3)で確実にバーディを奪った。そして、最大のターニングポイントとなったのは後半の16番(422ヤード・パー4)。非常に難易度の高いピン位置に対し、吉田のセカンドショットは狙った右手前ではなく左に流れた。
「あのホールはすっごいキーホールだとわかっていました。前の組の神谷選手が打ったパッティングが1メートルちょっと行ったのを見ていたので、『左からは難しいな』と思っていましたけど、(自分も)打った瞬間左に乗ってしまって。『2パットで上がれればベスト』と思ってパットを打ちました」
残された距離は12メートル。しかし、放たれたボールは見事にラインに乗り、そのままカップに吸い込まれた。
「外れたら多分2~3メートル行ってしまうパットでしたけど、結果的には入ってくれました。優勝する選手って、そういうところがあっての優勝だと思うので、今日はついている一日だったなと思います」
この劇的なバーディによって、吉田は首位に立った。
尊敬する姉への想い。一流への階段を駆け上がる

18番で4つ目のバーディを決め、勝利を手にした吉田。両手を挙げて喜んだ後は、清々しい表情で「ありがとうございます!」と小畑貴宏キャディとハイタッチしていた(撮影/有原裕晶)
そして迎えた最終の18番(517ヤード・パー5)は、3打目をピンそば30センチにつけ完璧なバーディで締めくくった。パットを決めた後には両手を上に突き上げる姿勢も見せたが、「定番になっているのでやっている」と、勝利を決めた瞬間でも心が高ぶることはなかった。『クールすぎる』とも思ってしまうのだが、彼女はもっと先のことを考えていたようだ。
「2勝目までにかかる時間が大事だなと感じていて、時間がかかる人とそうではない人とでは成長スピードが全然違うなと思っていました。一回勝ったからといって気が緩む時間』はなかったです。次はメジャーでどのくらい自分の実力を試せるかだと思いますし、春先から落ちている体力、鈍っている部分を回復させて、大事な試合が詰まっている秋、最後まで気を抜くことがないようにしたいです。(姉は)22、3歳でアメリカへ行ったと思うんですけど、その若さで国内で4勝、しかもメジャーを取っているというのは本当に一流の選手だと思っています。なので、私は勝利数というよりかは『勝つ大会』にこだわりたいんです。(今後は)メジャーだったりで、いずれ勝てるようにしたいです」
持ち前の勝負強さや冷静なマネジメント力に加え、偉大な姉の存在を身近に感じながら、追い続ける立場で高みを目指す姿勢。圧倒的なポテンシャルは、今後さらに彼女が世界へ羽ばたく強力な武器になるだろう。(文/川野真美)
