ゴルフIQの高いオールラウンダー
ジュニア時代からコーチを務める今野康晴プロ(ツアー通算7勝)は、彼女について「ショットもアプローチもパットも卒なくこなすオールラウンドなプレーヤー」だと語ります。今大会でキャディを務めた小畑貴宏氏は「8番ホールのパーが大きかった」と振り返ります。スコアを伸ばしやすい前半でパーを並べていた吉田選手は、8番ホールでティーショットをラフへ外し、2打目をグリーン手前の花道へ刻みました。そこから「上ってピンを過ぎると下る」という難度の高いアプローチをピン奥2.5メートルへ寄せ、このピンチをしっかりと切り抜けてパーセーブ。難度の低い前半でスコアを崩さずに流れをキープできたことで、小畑キャディは「まだ優勝の目は十分にある」と感じたそうです。
後半に入ると、小畑キャディの読み通りに4つのバーディを奪う猛チャージを見せ、2位に2打差をつけて見事に勝利を手にしました。
「昨年は3度キャディを務め、今季は2度目ですが、昨年に比べてショット力が段違いに上がっています。トレーニングの成果はもちろんですが、ボールのライや番手選び、状況に合わせてドローもフェードも自在に打ち分けられるようになっています」と小畑キャディ。初優勝時にバッグを担いだ川口大二キャディも同様の進化を語っており、高められた技術を現場で適材適所に発揮する「ゴルフIQ」の高さは見逃せません。
箱根の涼風が吹く大箱根カントリークラブで開催された今大会は、例年通りグリーンの仕上がりが素晴らしく、3日間を通して12フィートを超える高速グリーンでした。ラフからのショットではピン周辺に止めることが極めて難しくなるため、「ラフに入れないこと」「パーオン率を上げること」が上位進出の絶対条件となっていました。
パーオン率1位は54ホール中43回を捉えた佐久間朱莉選手ら3名で、吉田選手は54ホール中39回をパーオン(パーオン率72.2%)。さらに平均パット数は「26.33打」で全体の3位タイと、ショットとパットが高次元で噛み合っていたことが公式スタッツからも証明されています。
フェードもドローも操りピンを攻める
球筋を打ち分けるポイントですが、スウィング自体を過度に変える必要はありません。ボール位置やアドレス時の体の向きを調整するだけでも、十分にコントロールが可能です。
ダウンブローで捉えるアイアンショットは、ヘッドの最下点の手前でインパクトを迎えるため、自然なクラブ軌道はインサイドアウトになり、ドローボールが打ちやすくなります。一方、アイアンでフェードを打つためには、ボールを左足寄りにセットし、スタンスや体の向きを左へ向けます。スウィングプレーンの向きを左へ傾けることで、ややアウトサイドインの軌道でボールを捉え、意図したフェードボールを打ち出すことができるのです。

オーソドックスなスクエアグリップで握り、手元を体の正面に保って始動する
一般的に「ドローボールは飛距離が出やすく、フェードボールは飛距離が落ちる」と言われますが、その理由はスピン量の違いに起因します。フェードボールは入射角がドローボールよりも鋭角になるため、バックスピン量が増え、硬く速いグリーン上でもボールをピタリと止めやすくなります。ただし、ロフトのあるウェッジでフェードを狙う際は、左への引っ掛けが出やすくなるため注意が必要です。

しっかりと地面を踏み込んでから切り返す
吉田選手はドローボールをベースにしながらも、こうした弾道の仕組みを感覚だけでなく頭で深く理解しています。残り距離やボールのライ、風向き、ピン周辺の傾斜を冷静に計算し、最適な弾道を選択することで、バーディチャンスを作り出す確率を飛躍的に高めているのでしょう。
初優勝を果たした際にも、練習日にトラックマン(弾道測定器)を用いて2時間ほど58度のウェッジだけを黙々と打ち込んだと言いますから、自身のプレースタイルにおいて何が生命線になるのかを熟知しているのだと感じます。2024年のプロテストに合格したプロ2年目・22歳の若さで複数回優勝を果たした裏には、こうした優れたゴルフIQが存在することに感心させられるばかりです。

ひざを伸ばしても頭の高さは変わらない
小畑キャディは「彼女はバーディ合戦の展開よりも、メジャーのような難セッティングで真価を発揮するタイプ」と評しています。「日本女子プロゴルフ選手権」や「日本女子オープン」といった秋のメジャー大舞台で、どのようなハイレベルなプレーを見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。
写真/有原裕晶

