データが証明する「アイアンのキレ」とパー3の強さ
「前半戦で一番通用したのは、アイアンの感覚ですね。これがツアーに刺さっていたなと思います」。
中野がそう語るように、実際のスタッツ(データ)を見ても彼のショットメーカーぶりは明らかだ。パーオン率は70.159%で全体22位。中野自身も「ラフに行ってもいいから、とりあえずパーオンでグリーンに乗せられればパーは堅い」と語り、この安定感がスコアメイクの土台となっている。
さらに特筆すべきは、「累計スコア(パー3)」のデータだ。「9アンダー」というスコアを叩き出し、ツアー全体で堂々の3位にランクインしている。アイアンの精度が最もダイレクトに試されるパー3でのこの成績は、彼のアイアンのキレがすでにツアー屈指のレベルにあることを証明している。

東建ホームメイトカップの最終日。チップインを決めてガッツポーズをする中野麟太朗
この確かな技術は、プロとしての「余裕」を生み出した。中野は国内開幕戦である「東建ホームメイトカップ」での経験をターニングポイントに挙げる。
「最低な調子で会場入りしたんですが、試合中に焦らず修正できて、結果的に(最終日最終組の)優勝争いの最前線付近で戦えた(結果は5位タイ)。どんな状況でもなんとかなる、予選通過くらいはできるかなという余裕が生まれました」
直面する“優勝争いの壁”と「勝ち方のド忘れ」
アイアンという強固な武器を手にした中野だが、一方で明確な課題も痛感している。それが「優勝争いの壁」だ。
「悔しかったのは、優勝争い付近でのうまくいかない感じですね。『慣れていない』と言ってしまえばそれまでですが、最終組付近になると、序盤でボギーを打ったりして自分から蚊帳の外に行ってしまうケースが結構あったのが課題です」
上位には顔を出すものの、最終日のプレッシャーの中でスコアを伸ばしきれない。その要因について、彼は自身のメンタル面での赤裸々な本音を明かしてくれた。
「情けない話ですが、個人としては日本アマを最後に優勝というものを手にしていないので、勝ち方を少しわからなくなってしまっているところがあるんです。どうすれば1勝できるか、そこを思い出すのがテーマですね」

「~ジャンボ尾崎追悼大会~ ISPS HANDA 夏に爆発 どれだけバーディー取れるんだトーナメント」第2ラウンドでロングパットを決めたあとのガッツポーズ
勝ち切るためのピースを探す中野は、草津CCで開催された「~ジャンボ尾崎追悼大会~ ISPS HANDA 夏に爆発 どれだけバーディー取れるんだトーナメント」前の6週間のオープンウィークに、ナショナルチーム時代からのコーチ、ライアン・ラムズデン氏に来日してもらい、2泊3日の弾丸レッスン合宿を慣行した。
中野が目標としているPGAツアーやDPワールド(ヨーロッパ)ツアーを念頭に入れたスウィングのアドバイスを受けたという。結果的に、シーズン中盤にスウィングをいじることになり、「いきなり大きく方向転換するような感じで、結構戸惑いました。『試合に間に合うんかな、これ』みたいな」。
草津CCでは2日目に「61」を出すなど、15位タイと、なんとかなったものの、続くKBCオーガスタでは、(普段と違う高麗グリーンということもあり)パッティング面でもブレーキがかかり、久しぶりの予選落ち。とはいえ、取材の翌週にあった韓国開催の「シンハンドンヘオープン」には「最初は不安ではあるんですが、そこらへんは気持ちかなと思っています」と力強く語る。(結果は60位タイ)
海外コーチ招聘でのスウィング改革と「年間2勝超え」への挑戦
プロとしての手応えと課題が明確になった前半戦。自身でつけた自己評価は「A評価の80点」だった。
「予選通過しただけで終わらず、大体20位台以上にはいられた。後半戦に向けての伸びしろがあるということで、80点です」
残りの20点を埋めるのは、開幕前に目標として掲げた「Beyond 2 WINS(2勝を超える)」に他ならない。勝ち方を思い出したとき、この22歳のルーキーがどれほどの爆発力を見せるのか。後半戦の躍進から目が離せない。(文/山口哲平)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【次回予告】
技術だけでは乗り越えられない、優勝争いの壁。その壁に立ち向かうため、中野のプレーを根底から支えているのが、ツアーを戦い抜くための「肉体」だ。
次回の第2回【トレーニング編】では、理学療法士のトレーナーと二人三脚で取り組む、ボクシングの動きを取り入れた「異色の肉体改造」の裏側に迫る。(9月17日公開予定)
写真/姉崎正

