18回目の出場となるローリーにとって、本大会は2009年にアマチュアとしてセンセーショナルな初優勝を果たし、プロキャリアを切り拓いた原点の舞台だ。一方のハリントンは、今大会でレジェンドであるセベ・バレステロスがスペインオープンで保持していた記録(30年連続)を更新し、DPワールドツアーに組み込まれているナショナルオープン史上最多となる「31年連続出場」という偉業を達成する。
母国開催のナショナルオープンということもあり、彼らへのギャラリーの期待は当然のように高い。ハリントンが「どの選手にとっても母国のナショナルオープンは『第5のメジャー』であり、メジャーと同等の重圧がかかる」と語る通り、大歓声の裏には巨大なプレッシャーが渦巻く。しかし、会見で2人の口から語られたのは華々しい優勝宣言ではなく、ゴルフというスポーツが持つ「残酷さ」と、それに耐えうる「忍耐」についてだった。
ローリーの赤裸々な本音「運に見放された時期」
今年のシェーン・ローリーは、あと一歩のところで勝利を逃す「あと少し」のゴルフが続いている。メジャー大会でも良い位置につけながら、サンデーバックナインで突き放される展開を経験してきた。彼は現在の胸中を、包み隠さずこう吐露している。
「物事が自分に有利に働かないときは、コースから上がるたびに、毎日考え得る最悪のスコアを出しているような気分になる。ここ数カ月は、まさにそんな日々だった」
トッププロであっても、結果が出ない時期には心が擦り減っていく。しかし、ローリーは自らのゴルフを決して見失ってはいない。「スタッツを見れば、決して悪くない(※PGAツアーのSG: Totalは+0.595で38位)。自分がやっていること、練習方法を完全に信じているし、大きく逸脱する必要はないんだ」と語り、3〜4カ月の不調でキャリアが壊れるわけではないと自らに言い聞かせている。
例年の秋シーズンは、試合のやり過ぎによって「ただ消化試合をこなしている感覚」に陥っていたというローリー。だが今年は、BMW選手権出場を逃したことで意図せず手に入った3週間のオフにより、肉体的にも精神的にも完全にリフレッシュした状態で母国戦を迎えることができている。
そして何より、苦しい時期に彼を突き動かす最大の原動力が存在する。
「今後12カ月間、自分が毎朝ベッドから起き上がる理由のすべては、2027年に地元アイルランド(アデアマナー)で開催されるライダーカップに選出されて勝利することだ。考えるだけで鳥肌が立つ」
明確な目標を胸に、苦しみながらも前を向くプロの意地がそこにはあった。
先輩ハリントンの視点「彼は今、最高のゴルフをしている」
そんなローリーの現状を、練習ラウンドを共にする大ベテランのパドレイグ・ハリントンはどう見ているのか。彼は後輩の苦悩を深く理解した上で、こう断言してみせた。
「シェーンは今、私がこれまで見た中で最高のゴルフをしている。ただ、結果が伴っていないだけだ。何しろ彼は今年、練習ラウンドで毎日私からお金を巻き上げているんだからね(笑)」
冗談めかしながらも、後輩の調子の良さを自信持って代弁するハリントン。ゴルフとは、時に非常に理不尽なスポーツだ。ハリントンはローリーの不運なバウンドを例に挙げ、「素晴らしいショットがほんの少しの不運で台無しになる。それがゴルフというゲームだ」と代弁する。さらに、重みのある自らのキャリアデータを引き合いに出して語った。
「私はキャリアで44勝したが、2位も42回ある。自分のミスで逃した勝利もあれば、他人がただ素晴らしかった日もある。勝つことは想像以上に少ないからこそ、勝った時は心から楽しまなければならない」
大ベテランだからこそ知る、勝利の喜びよりも、圧倒的に長い敗北とフラストレーションに耐える時間。結果が出ない時期にいかに自分を保ち、ブレずにいられるかが長くゴルフを続けていける資質だろう。
プロの流儀:「グラスは半分も満たされている(The glass has to be half-full)」

アイルランドが誇る2人のメジャー覇者、パドレイグ・ハリントンとシェーン・ローリー(写真はどちらも26年全英オープン)
ローリーは現在の自身のメンタリティを「グラスは半分も満たされている」と表現した。目の前の結果に一喜一憂して悲観するのではなく、残された可能性に目を向け、どこまでもポジティブに捉えようとする姿勢だ。
最高峰の舞台で戦うプロたちがいかにして己の心と向き合い、次の勝利を信じてクラブを振るのか。原点である「第5のメジャー」で挑むローリーの苦悩と、偉業を打ち立てたハリントンの温かい視点は、私たちアマチュアゴルファーにとっても、不条理なゴルフというゲームと向き合うための大きなヒントを与えてくれる。
写真/R&A
