石川県の片山津GC白山C(6755ヤード・パー72)で開催中のソニー日本女子プロゴルフ選手権の初日。「恐怖しか見えなかった」と話すタフなセッティングのなか、プロ2年目の平塚新夢(あむ)が、前半の出遅れを跳ね返す見事なバウンスバックを見せた。アウトスタートの前半は深いラフに苦しみ2オーバー。しかし、折り返しの10番でグリーン手前からのアプローチを直接沈めて勢いに乗ると、後半を「34」でまとめ、3バーディ3ボギーの「72」(イーブンパー)でフィニッシュ。トップがスコアを伸ばす展開のなかでも、初の大舞台で確かな粘り腰を発揮した。

リランキングの躍進と、直近の「予選落ち」という苦境

今大会に臨む平塚の心中には期するものがあったはずだ。QTランク57位でスタートした今季、本来の主戦場はステップ・アップ・ツアーになるはずだった。しかし、主催者推薦で出場した4月の「NTTドコモビジネスレディス」で5位タイに食い込むと、限られた出場枠のなかでポイントを稼ぎ、第1回リランキングで27位へとジャンプアップ。自らの力で中盤戦の出場権をもぎ取る下剋上を果たした。

ところが、レギュラーツアーの壁はやはり厚い。「EARTH MONDAMIN CUP」以降は着実に予選を通過していたものの、8月の「北海道meijiカップ」から先週の「ゴルフ5レディス」までは、すべて予選落ちと苦しい戦いが続いていたのだ(なお、ステップ・アップ・ツアーでは7月に3位タイに入るなど好調な一面も見せていた)。

直近のレギュラーツアーでのスランプ。それだけに、今大会の前半「2オーバー」という滑り出しは、そのままズルズルと後退してもおかしくない嫌な流れだった。しかし、彼女の心は折れなかった。

平塚は10万人に1人の指定難病「成人発症スチル病」という壮絶な闘病を乗り越え、7度目の挑戦でプロテストに合格した不屈のゴルファーだ。そんな彼女がいま、過酷なツアーを戦い抜き、苦境からバウンスバックするための心の支え(モチベーション)としているのが、ポケットに忍ばせている「あるアイテム」だという。

「推し」のヤーデージブックと共に。ゴルフと推し活の“二刀流”

画像: 推しメンのDa-iCE・花村想太がカバーのヤーデージブックをパンツのポケットに潜めてイーブンパー発進

推しメンのDa-iCE・花村想太がカバーのヤーデージブックをパンツのポケットに潜めてイーブンパー発進

初日のイーブンパー発進を支えた彼女のポケットに潜んでいたのは、推しメンである5人組男性アーティスト「Da-iCE(ダイス)」の花村想太があしらわれたヤーデージブックのカバーだ。

闘病という苦しい時期に彼らの音楽と出会って熱烈なファンとなった平塚は、今ではツアーシーズン中であっても、試合の合間を縫って名古屋などのライブ会場へ遠征に繰り出すほど「推し活」に励んでいる。

「推し活はいつまでできるか分からないし、いつ死ぬか分からない」

一度はベッドから起き上がることすら困難な日々を経験し、自らの命と向き合った彼女が本音として吐露するからこそ、この言葉には単なる若者の比喩ではない、ズッシリとした重みと死生観が宿っている。大好きな音楽やエンタメから得るパワーは、厳しいプロの世界を戦い抜くための不可欠な活力源なのだ。

日々の練習で基礎を徹底的に磨き上げて課題に向き合う一方で、大好きな推し活で全力でリフレッシュする。過去の大きな苦難や、直近の予選落ちという壁をも乗り越え、「ゴルフと推し活の二刀流」で自分らしく突き進む平塚新夢。タフなメジャーセッティングのなかで確かな手応えを掴んだ彼女の、2日目以降の戦いに注目だ。


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