アメリカ西海岸カールスバッド。ギア開発の聖地に位置するテーラーメイド米国本社に隣接するのが、フィッティングとR&Dの拠点「The KINGDOM(ザ・キングダム)」だ。日本メディアとして初めてこの地での取材を許された取材班は、「TP5/TP5x」ボールのリアルな性能についてインタビューを敢行。後編の今回は、同ボールで大きな注目を集める「マイクロコーティング」の全貌をレポートする。「ザ・キングダム」でのロボットによる検証実験から、超微細な「1ミクロン」の精度にこだわる理由、また最適なボールの選び方まで、ボール開発の統括責任者のジョシュ・ダイパート氏とプロダクトディレクターのマイク・フォックス氏に話を聞いた。

▼日本のメディア初潜入!「ザ・キングダム」でのインタビュー動画 本編はこちら!

画像: テーラーメイド“ボール”開発担当者に直撃!「TP5 / TP5x」の「1ミクロン」の空力革命&ロボット検証 #ボール #テーラーメイド youtu.be

テーラーメイド“ボール”開発担当者に直撃!「TP5 / TP5x」の「1ミクロン」の空力革命&ロボット検証 #ボール #テーラーメイド

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画像: 左:Mike Fox シニアプロダクトディレクター 右:Josh Dipert プロダクト ディベロップメント シニアディレクター(ボール)(撮影/田邉安啓)

左:Mike Fox シニアプロダクトディレクター 右:Josh Dipert プロダクト ディベロップメント シニアディレクター(ボール)(撮影/田邉安啓)

【実録】
コーティングの違いで飛距離・スピンはどう変わるのか?

画像: キングダムの屋内に設置されたスウィングロボットから打ち出されたボールを、複数のトラックマンをはじめとしたさまざまな解析機器で、ボールフライトを完璧に追尾・測定する(撮影/田邉安啓)

キングダムの屋内に設置されたスウィングロボットから打ち出されたボールを、複数のトラックマンをはじめとしたさまざまな解析機器で、ボールフライトを完璧に追尾・測定する(撮影/田邉安啓)

取材チームが案内されたのは、「ザ・キングダム」の広大なレンジへボールを打ち出し、弾道を追尾測定できるロボットテスト施設だ。製品テスト専門のリチャード・カークマン氏の協力のもと、スウィングロボットと弾道追尾システムを使用し、以下の3種類のボールの比較実験が行われた。

画像: 「ザ・キングダム」でロボットによる製品性能のテストを担当するリチャード・カークマン氏(撮影/田邉安啓)

「ザ・キングダム」でロボットによる製品性能のテストを担当するリチャード・カークマン氏(撮影/田邉安啓)

厚めコーティング:コーティングが厚く、ディンプルに塗料が多く溜まった状態

マイクロコーティング:最新の『2026 TP5』に施された超高精度なコーティングのボール

不均一コーティング:片側だけ厚くコーティングされた不均一な状態

画像: 左:マイクロコーティングが施された最新「TP5」 中:不均一コーティング 右:厚めコーティング(撮影/田邉安啓)

左:マイクロコーティングが施された最新「TP5」 中:不均一コーティング 右:厚めコーティング(撮影/田邉安啓)

【検証結果】
マイクロコーティングはキャリーが10ヤード伸び、最適な強弾道へと変化

ロボットの打撃条件は“完全に同一”であるにもかかわらず、コーティングの違いだけで弾道が劇的に変化した。

画像: 同じ打撃条件で3種類のボールをテスト(撮影/田邉安啓)

同じ打撃条件で3種類のボールをテスト(撮影/田邉安啓)

厚めコーティング:1回目 最高到達点 138ft(約42m)キャリー275Y/2回目 最高到達点 132ft(約40m)キャリー 277Y。コーティングがディンプル内に溜まったボールは途中でフワッと吹き上がるような挙動を見せ、キャリーロスが発生した。

マイクロコーティング:1回目 最高到達点 113ft(約34m)キャリー287Y/2回目 最高到達点 110ft(約34m)キャリー 287Y。最高到達点が最適に抑えられた強弾道を描き、2球ともキャリー287Yと伸び、トータル310Y安定した飛距離をマークした。

不均一コーティング:1回目 最高到達点 126ft(約38m)キャリー284Y/2回目 最高到達点 125ft(約38m)キャリー 278Y。片側だけコーティングが厚いボールは、空中で空気抵抗のバランスを崩し、狙いから大きく右へスライスしていった。

コーティングの厚みやムラだけで、最高到達点が約20フィート(約6m)もブレ、キャリーは10ヤードロス、そして球が曲がってしまう事実が証明された。そしてこれはインパクトが正確無比なロボットテストであることを考えてほしい。打点のズレが頻繁に起こるアマチュアゴルファーが打てば、弾道への影響はさらに大きくなることは明らかだ。

【Question 1】
マイクロコーティングの効果と「1ミクロン」へのこだわりとは?

実験を目の当たりにした取材チームは、再びインタビューエリアへと戻り、マイクロコーティングがもたらす真の効果と技術的背景について尋ねた。ダイパート氏は開発現場における妥協なき精度へのこだわりから語り始めた。

「ディンプルの開発時、私たちは1ミリの1000分の1である『1ミクロン』単位で金型工具を精密設計しています。しかしどれほど金型を精密に作っても、再外層のコーティングにばらつきが生じては意味がありません」

画像: ディンプルは1ミクロン単位の精度で製作される(金型は前作のもの)(撮影/田邉安啓)

ディンプルは1ミクロン単位の精度で製作される(金型は前作のもの)(撮影/田邉安啓)

なぜコーティングという最終工程がそれほど重要なのか。コーティングには「防汚性・耐摩耗性・耐久性」の意味があるが、ダイパート氏は空力学の観点から、その決定的な理由を説明する。

「ボールがフェースを離れた瞬間、空力で関係するのは『風がどのように流れているか』だけです。空気と接するのは一番外側の表面であり、風と接しているのはディンプルそのものではなく『コーティング』なのです」

従来のコーティングの工程では、ディンプルの底部に塗料が溜まったりムラができたりすることで、設計値からのズレを生み出していた。それが空中での抵抗につながって吹き上がる原因となり、弾道のばらついていたのだ。だからこそ、設計通りのディンプル形状を完璧に再現する極薄かつ超精密な「マイクロコーティング」が不可欠となったのである。

【Question 2】
コーティングの不均一が判明したきっかけは?

これまで誰も注目してこなかった「コーティングの不均一やムラ」。テーラーメイドはいかにしてこの目に見えない課題に気づき、解決へと至ったのか。その真相について尋ねると、ダイパート氏は「ザ・キングダム」の測定環境が始まりだったと明かした。

画像: 「コーティングという『目に見えない課題』に気づいたことが大きな技術革新につながりました」(ダイパート氏)(撮影/田邉安啓)

「コーティングという『目に見えない課題』に気づいたことが大きな技術革新につながりました」(ダイパート氏)(撮影/田邉安啓)

「きっかけは高度な弾道追尾システム(DARTS)でした。ロボットテストで初速もスピン量も全く同じデータなのに、飛び方が異なるボールがあることに気づいたのです」

なぜ同じ条件下で打ち出されたボールが違う飛び方をするのか?」という疑問を抱いた開発チームは、ボールを半分に切断し、顕微鏡の下で断面を精密に観察するという地道なアプローチを開始した。フォックス氏は語る。

「観察の結果、コーティングの厚みの偏りや溜まりが原因だと判明しました。コーティングは肉眼で見えないため、私たちはこれを『目に見えない課題』と呼んでいます。そこで工場にコーティングの厚みを超高精度に測定できる測定システムを構築、誰も気づかなかった問題を特定し解決できたことは、業界の水準を塗り替える大きな技術革新となりました」

画像: コーティングの違いを可視化したイメージ。右がマイクロコーティング、左が従前のコーティング。コーティング均一さに違いがあるのが見て取れる

コーティングの違いを可視化したイメージ。右がマイクロコーティング、左が従前のコーティング。コーティング均一さに違いがあるのが見て取れる

この「目に見えない課題」へのアプローチについて、ダイパート氏はこう補足する。

「軍事規格でさえ私たちが追求する超高精度のコーティングは求めていません。血液の赤血球レベルのミクロン単位の誤差へのこだわりが、他ではなしえない一貫性を約束するのです」

【Question 3】
「TP5」と「TP5x」、選び方の基準は?

革新的な5層構造とマイクロコーティングによって、どちらも飛躍的な進化を遂げた「TP5」と「TP5x」。ゴルファーが実際にショップやコースで自分に最適なモデルを選ぶ際、どのような基準で選ぶべきなのだろうか。これについてフォックス氏は、プレーヤーの優先順位を見極めることが第一歩だと語る。

「最も重要なのは、『プレーで何を最も優先するか』です。ドライバーでの初速を最大化し低スピンを求めるなら『TP5x』、ソフトな打感とアプローチでの操作性を重視するなら『TP5』が向いています」

画像: ソフトフィールとグリーン周りのスピン性能はそのままに「TP5x」と同等の飛距離性能を得た「TP5」(左)と、卓越した初速性能と最適スピンを生む「TP5x」(撮影/三木崇徳)

ソフトフィールとグリーン周りのスピン性能はそのままに「TP5x」と同等の飛距離性能を得た「TP5」(左)と、卓越した初速性能と最適スピンを生む「TP5x」(撮影/三木崇徳)

さらにダイパート氏は、最新モデルにおける性能向上が従来のボール選びの常識を変えたと指摘する。

「最新の『TP5』は、コアの大型化により過去最高に初速が速く、『TP5』と『TP5x』の飛距離性能はほぼ同等です。そのため、現在は純粋にスピン量と打感の好みで選べるのです」

かつてのように「飛距離を取るか、打感・スピンを取るか」という二者択一で悩む必要はなく、自分のプレースタイルや好みのフィーリングに合わせて素直に選択できるのが、最新「TP5/TP5x」の強みである。

【Question 4】
開発担当者の現在の使用ボールとその理由は?

では、数々のデータと開発の背景を知り尽くした開発担当者自身は、普段どのモデルを自らのプレーで愛用しているのだろうか。

まずダイパート氏に尋ねると、自身のプレースタイルと求める性能を理由に挙げて苦笑交じりに答えてくれた。

「私は『TP5x』を使っています。とにかく飛距離が必要で、できるだけ遠くへ球を飛ばしたいからです(笑)。少し低スピンなほうが飛距離が伸びるため選んでいます」

一方のフォックス氏は、長年愛用してきた「TP5x」から最新の「TP5」へとスイッチしたという。今回のモデルチェンジによる劇的な性能アップの実感を実感したからだ。

画像: フォックス氏が愛用する「TP5 パフォーマンス ツアーストライプ」

フォックス氏が愛用する「TP5 パフォーマンス ツアーストライプ」

「私は『TP5』の『パフォーマンス ツアーストライプ』を使用しています。実は10年ほどずっと『TP5x』を愛用してきました。身長の割には飛ぶほうではないので。ただ、打感は昔から『TP5』が好みでした。しかし今回の『TP5』は『TP5x』と同じくらい飛ぶようになり、飛距離を犠牲にすることなく欲しかったフィーリングを得られる。約10年ぶりに『TP5』へ戻りました」

目に見えない問題を解決したボールが、さらなる信頼を生む

インタビューの締めくくりとして、フォックス氏はゴルフボールというギアが持つ本質的な重要性を語った。

画像: 「最新の『TP5』シリーズの弾道安定性には絶対の自信があります」(フォックス氏)(撮影/田邉安啓)

「最新の『TP5』シリーズの弾道安定性には絶対の自信があります」(フォックス氏)(撮影/田邉安啓)

「『ゴルフボールは毎ショット必ず使用する唯一の道具』、これは私が大好きなフレーズです。だからこそ、ボールごと、ショットごとに完全に同じパフォーマンスを発揮しなければならない。これはプロ、アマチュア問わず、ゴルフにおいて何より重要なことなのです」

「ザ・キングダム」での発見、1ミクロンへの執念、そして超高精度なマイクロコーティング技術。目に見えない課題に挑み続けた開発者の情熱が、すべてのゴルファーにブレない強弾道と再現性をもたらしてくれる。

(次回へ続く:打感と飛距離を高次元で両立! アイアン開発インタビュー)

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画像: www.taylormadegolf.jp
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