
連覇がかかっていた神谷そらをプレーオフで下した佐久間朱莉
勝因①:プロテスト合格時の相棒「B型パター」への原点回帰
一つ目の勝因は、パターの「原点回帰」だ。ニトリレディスで優勝した時から彼女が手にしているピンゴルフ「スコッツデール B63」は、ジュニア時代やプロテストに合格した当時に使用していたものと同じ形状だった。
「あのパターは本当にいいパターだなとつくづく思うんです。自分の中ですごくタッチが出しやすいクラブなので、そこは信頼して一緒に戦っています」
パッティングに悩み抜いた時期を経て、「気分転換にあのパターを握ったら優勝できました」と笑う。かつての相棒と似た形状への回帰が、短期間での2勝(今季3勝目)に結びつく大きな転機となったのだ。
勝因②:結果ではなく「自分のストローク」に集中する○×管理

ウィニングパットを沈め、ボールを取り上げた後に大きく両手を広げて喜びを表した佐久間
しかし、道具を変えただけではない。彼女のメンタルとルーティンにも劇的な変化があった。
不調に陥っていた時期、佐久間は「入れたい気持ちが強すぎちゃって、アドレスで縮こまってしまう時があった」という悪循環に陥っていた。そこからの脱却を図るため、ここ2〜3カ月で始めた独自の取り組みがある。
それは、パットの距離を「歩数」で詳細に計測し、ヤーデージブック(ピンポジ)に記入することだ。
「以前は大体でしかやっていなかったんですが、今はしっかりヤードで歩数を測ってやるようにしています。何ヤードをどんなラインで打ったか、後から振り返れるようになりました」
そして最も重要なのが、その結果を「○×」で記録していることだ。
「入った入ってないは別として、『自分のストロークができたか』を○と×で書いています。何で打てなかったんだろうという分析と、そこだけに集中するようになって、自分のストロークだけというルーティンがだんだんできてきました」
最近はこの「○」が増えてきたという佐久間。14番でボギーを叩いた直後の15番(パー5)では、ラフからの2打目が捕まりきらず窮地に立たされたが、落ち着いて救済を受けて貴重なパーセーブ。「15番のパーはすごく大きかった」と本人が語る最大の勝負どころでも、揺るぎないルーティンが威力を発揮した。大舞台のプレーオフという極限の緊張状態でも「自分の出したい所とタッチだけに集中して打てた」という強靱なストロークを生み出したのだ。
メジャー制覇と年間女王への決意

今季3勝目で、AIG全英女子OPを制して800ptsを加算した桑木志帆の背中が見える位置まで来た
「年内にもう1回勝てたらいいなという思いでした」と、自身でも驚くほどの早さで完全復活を遂げた佐久間。彼女の視線はすでに、2週間後に控える「日本女子オープン」へと向いている。
「やっぱり国内メジャーを取りたい気持ちは強いです。国内メジャーを勝てたら年間女王も見えてくるんじゃないかと思うので、そこは目標にしたいです」
今大会の優勝で200ptsを獲得した佐久間は、通算1919.39pts(2位)に到達し、首位を走る桑木志帆(2503.18pts)との差を583.79ptsに縮めた。国内メジャー優勝で400pts、4日間大会優勝で300ptsというポイント配分を考えると、1試合で即座に逆転できる点差ではないものの、独走状態だった桑木の背中が視界に入る位置まできたことは間違いない。
原点回帰の相棒と、○×メモがもたらした揺るぎないルーティン。年間女王へ向けて猛追をかける佐久間朱莉の快進撃は止まらない。
写真/大澤進二
