時折、選手たちの計算を狂わせる北北東の強風(5.5m/s)が吹き抜ける中、福岡県の玄海ゴルフクラブ(6875ヤード・パー71)で開催された「日本シニアオープン」が幕を閉じた。第4ラウンドの平均ストロークが「72.426」と難易度が増す過酷なコンディションの中、最終日を「67」でまとめ、通算15アンダーで逃げ切った宮本勝昌が、念願の日本シニアオープン初制覇を果たした。大歓声と拍手に包まれた18番グリーン。優勝会見で宮本は「シニアツアーでああいうシーンはたぶんあんまりないと思う。シニアツアーも捨てたもんじゃないかなって思いました」と、エキサイティングな優勝争いを見せられたことへの喜びを口にした。日本最高峰のシニア大会で繰り広げられた、プロとアマの人間ドラマを振り返る。
画像: 大歓声と拍手に包まれた18番グリーンで声援に応える宮本勝昌

大歓声と拍手に包まれた18番グリーンで声援に応える宮本勝昌

宮本勝昌を頂点に導いた「後ろ足重心」と怒涛のクライマックス

「ずっと緊張してましたよ。なんせ岩本(高志)くんが素晴らしいゴルフをしていて、ミスする雰囲気がなかった。14番ぐらいからは、正直ちょっと焦っていましたね」

百戦錬磨の宮本でさえ、最終日のプレッシャーは凄まじかった。首位を守るプレッシャーがかかる中、彼は重圧の中で見事なマネジメントを見せる。15番ではティーショットを右の林に打ち込む絶体絶命のピンチを、松の葉の上という最悪のライから木々の間を抜いてパーセーブ。続く16番(パー3)でも目玉になったバンカーから絶妙なリカバリーでパーを拾った。

そして圧巻だったのが上がりの2ホールだ。17番で起死回生のバーディを奪うと、最終18番(パー5)では3番ウッドで放った2打目を14〜15メートルに見事2オン。このイーグルパットを鮮やかに沈める「圧巻のイーグル締め」で、後続の追撃を完全に振り切ってみせた。

「あんまり一喜一憂しないように普段から心掛けています。常に『後ろ足重心』で(笑)。猛牛のように『行くぞ! 行くぞ!』感はあんまり出さないようにしているんです」

アドレナリンをコントロールし、決して前のめりにならない平常心こそが、極限状態でのスーパーリカバリーと圧巻のイーグルフィニッシュを生み出したのだ。

画像: 谷口徹にいじられたチャンピオンブレザーもようやく手に入れた

谷口徹にいじられたチャンピオンブレザーもようやく手に入れた

さらに大会前、先輩の谷口徹から「お前シニアで12勝もしてるのに、まだこのチャンピオンブレザー持ってないんか! 早く勝ってチャンピオンズディナーに来い」といじられていたという裏エピソードも明かした宮本。念願の日本タイトルを手にできた背景には、膝の状態が万全でない中で「朝3時に起きて最初の飛行機で応援に駆けつけてくれた」という師匠・芹澤信雄への深い感謝があった。

ライバルたちが突きつけられた「勝者との差」

画像: 最終組で宮本と同組だった岩本高志(左)はシニア賞金ランクトップに立つ実力者だ

最終組で宮本と同組だった岩本高志(左)はシニア賞金ランクトップに立つ実力者だ

一方で、敗者たちは勝負の残酷さとシニアトップレベルのシビアな現実を突きつけられていた。

宮本と最終組で競り合い、一時は首位を脅かした岩本高志。しかし、終盤の14番でボギーを叩いて後退し、通算12アンダーの単独3位に終わった。「全てにおいて、僕の今の技術では宮本さんには勝てないなと思いました。実力の差が出たのかなと思います」と、悔恨の言葉の中に勝者との明確な壁を感じ取っていた。

画像: スコッティ・シェフラーよりも独特なスウィングを持つ、“虎さん”ことチェ・ホソンが単独2位に入った

スコッティ・シェフラーよりも独特なスウィングを持つ、“虎さん”ことチェ・ホソンが単独2位に入った

また、通算13アンダーで単独2位に入った崔虎星(チェ・ホソン)も、「宮本選手の17番バーディ、18番のプレーは素晴らしいです」と手放しで勝者を称えるしかなかった。怒涛のフィニッシュで逃げ切った宮本の勝負強さが、強烈に印象づけられた。

アマチュアの星・水上晃男が見た「魔のグリーン」

プロたちの死闘の裏で、トップアマチュアもまたコースの罠と戦っていた。出場したアマチュア5名のうち4名がシード枠の中、地区予選会から本戦に進出した唯一の通過者という超狭き門を突破してきたのが水上晃男だ。通算2オーバー(38位タイ)でフィニッシュし、大会最多タイとなる4度目のローアマチュアを獲得した。

輝かしい記録とは裏腹に、その道程は過酷を極めた。強風に加え、3番(212ヤード)や7番(203ヤード)に代表される距離のあるタフなパー3の設定と高速グリーンが苦しめた。

「苦しかった。前半は3パットばっかりで……。練習グリーンは速いのに、コースに出たら重たくて、グリーンの速さが全然合わなかった」

プロと同じ過酷なセッティングに苦しめられ、3パットを連発した苦悩を明かした水上。最終18番でもアドレナリンが出てセカンドショットを大きくオーバーさせるなど、極限のプレッシャーを味わった。それでも水上の表情は充実感に満ちていた。

「シニアのアマチュアにとって、この試合に出たくてしょうがないんです。これだけのセッティングで回らせていただけるというのは、本当にアマチュアとして最高のご褒美。楽しませてもらいました」

プロとアマが紡ぐシニアゴルフの魅力

年齢を重ねてもなお、技術を磨き、プレッシャーと戦い続けるシニアゴルファーたち。

冷静なマネジメントで日本タイトルを手にした宮本勝昌。敗北から己の現在地を知り、さらなる高みを目指す岩本高志。そして、アマチュアの誇りを胸に、プロと同じ過酷なセッティングに挑み続ける水上晃男。彼らが紡ぎ出す濃密な人間ドラマと高度な技術の応酬こそが、日本シニアオープンの最大の魅力である。

写真/有原裕晶


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