欧州最高峰の舞台、イングランドのウェントワース(7267ヤード・パー72)で開催されたDPワールドツアー旗艦大会「BMW PGA選手権」。最終日、リーダーボードを駆け上がり見事な逆転優勝を飾ったのは、アメリカから乗り込んできたJ・J・スパーンだった。最終日を「67」でまとめたスパーン。13番で短いバーディパットを外して後退しかけた際、「もう守るものはない、思い切り攻めよう」と腹をくくった。直後の14番(パー3)でピンそばにピタリとつけるベタピンバーディを奪うと、そこから上がり5ホールで4バーディを奪う怒涛の爆発を見せ、通算17アンダーでフィニッシュ。並み居る強豪たちをごぼう抜きにし、DPワールドツアーのデビュー戦(メジャー大会を除く)となったこのビッグタイトルを鮮やかに手中に収めた。

勝因は「反骨心」と首痛からの復活

実はスパーン、3週間前のPGAツアー最終戦「ツアー選手権」で、朝起きた時に首が回らなくなるほどの激痛に見舞われ、無念の棄権を余儀なくされていた。そこから入念な治療と準備を重ね、掴み取ったのがウェントワースでの栄冠だった。

そして、彼をこの劇的な勝利へと駆り立てた最大のエネルギー。それは自分への評価に対する明確な「怒り」と「反骨心」だった。

大会の数週間前、スパーンは米国選抜キャプテンのブラント・スネデカーからの電話を受けた。それはわずか45秒ほどの短い会話で、彼が「プレジデンツカップ」のメンバーから落選したことを告げるものだった。

「スネデカーとは良い会話をしていて、チームに入れると信じていた。自分がチームから外されたのには理由があるのだろうが、私には証明すべきことがあった。今週は大きな反骨心を持ってプレーしたよ。自分がチームにふさわしいことを証明したかったんだ」

落選の悔しさを胸に秘め、「何かを証明する」という強い執念でプレーを続けたスパーン。首の故障を乗り越えた不屈のメンタルと燃えたぎるモチベーションが、タフな上がりホールでの驚異的な集中力を生み出したのだ。

溢れる“コッツウォルズ愛”とコテージの賭け

そんな闘争心剥き出しのエピソードとは裏腹に、彼の素顔はとてもユニークで愛嬌に溢れている。

実はスパーン夫妻は英国の文化をこよなく愛しており、毎年12月にはイングランドのコッツウォルズで休暇を過ごすほどだ。大のコッツウォルズ好きである妻からは、2025年にスパーンが試合で敗れた際「今度優勝したらコッツウォルズにコテージを買って!」とおねだりされていた。スパーンは「メジャーか超ビッグ大会で勝ったらね」と約束していたが、今回、DPワールドツアー最高の旗艦大会を制したことで「早速妻から不動産サイトの物件情報が送られてきているんだ」と会見で笑い話を明かした。

さらに面白いのが、彼らの熱狂的な“番組愛”だ。夫婦揃ってAmazonプライムの「クラークソンズ・ファーム」の大ファンであり、大会期間中、妻はホストであるジェレミー・クラークソンの顔写真を切り抜いた「お面」を持ってコースに駆けつけ、彼を応援していたのだ。

「妻が『サプライズゲストがいるわよ』と言っていたら、ジェレミーの顔だった(笑)。彼はスピリットとしてそこにいて、私に幸運をもたらしてくれたんだと思う」と、スパーンは笑顔で語った。

【画像】お面を持って優勝の記念撮影に参加したJ・J・スパーンの妻メロディーさん【DPワールドツアー】

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敗者への敬意と「残酷な決着」

最終日、ドラマは最後までもつれた。通算17アンダーで先に上がっていたスパーンに対し、最終組のマヌエル・エルビラが17番でイーグルを奪って17アンダーで並び、最終18番(パー5)へ。パーでプレーオフ、バーディなら優勝という場面だったが、エルビラはレイアップ後のミスから痛恨のダブルボギーを叩いて、通算15アンダー(2位タイ)で終戦。スパーンの優勝が決定した。

この残酷な決着に対し、スパーンは会見でエルビラへ深いリスペクトと共感を込めてこう語っている。

「マヌエルにとっては見るのも辛い、本当に残酷な結末になってしまった。でも、彼はこの失敗から多くを学ぶはずだ。昨年、私がプレーオフで敗れて打ちひしがれていた時、ローリー(マキロイ)がこう言ってくれたんだ。『頂点に立つためには、こうした胸が引き裂かれるような悲痛な経験を乗り越えなければならない』とね。本当にその通りだと思う」

【動画】マヌエル・エルビラ、17番イーグルで初優勝が見えたが……【DPワールドツアー公式X】

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世界に名を刻んだ新王者

画像: ウェントワースで優勝した3人目の米国人となったJ・J・スパーン

ウェントワースで優勝した3人目の米国人となったJ・J・スパーン

大学時代は奨学金をもらえず推薦なしの「ウォークオン」でゴルフ部に入り、スポンサー推薦も受けられず、すべてを自らの実力で這い上がってきた苦労人。

「異国の地で勝つことは、自分がアメリカ以外の国でもプレーし、競争できるという私に自信を与えてくれる」と語ったスパーン。反骨心をエネルギーに変え、敗者へのリスペクトを忘れない王者として、愛する英国の地でビッグタイトルを手にした新王者のさらなる飛躍に期待したい。

写真/Getty Images


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