20ドル課金した“AI職人”のイタズラとローラースケート動画
今大会の世界選抜は、全選手のキャディバッグから個人の刺繍名を消し、全員同じチームロゴ(The Shield)のみで統一している。ミンウー自身も「バッグから名前が消えて誰のバッグか分からなくなる時があるけれど(笑)、僕らは個人のためではなく『盾(チーム)』のために戦っている証なんだ」と語る通り、「個人のエゴを捨ててチームのために戦う」という強烈な共通理念があるからこそ、ロッカールームでの無邪気なふざけ合いがチームをより一層強く結びつけている。
そして、チームルームで誰よりも底抜けの明るさを放ち、盛り上げ役を買って出ているのがミンウーだ。ニコ・エチャバリアが「彼がチームで一番のいじり役だよ」と笑いながら証言するように、ミンウーのイタズラ心は留まるところを知らない。
彼が今、チーム内で大流行させているのが、スマートフォンのAIアプリを使った面白動画の作成だ。自腹で20ドル課金して専用プログラムを入手したというミンウーは、移動中のバスやチームルーム、さらにはコース上に至るまで、暇さえあればチームメイトの顔を合成した爆笑動画を量産している。
「みんないつの間にか撮られていて、知らないうちに動画ができているんだ。僕は20ドルも払ったんだから、みんな僕に1ドルずつ払うべきだよ(笑)」と冗談を飛ばすミンウー。
ターゲットにされたキム・シウーも、「気がついたら自分がローラースケートをしている動画を作られていて、チーム全員で腹を抱えて笑ったよ。彼は最高のプレーヤーであると同時に、最高のクリエイターだね」と、呆れながらも楽しそうに振り返る。
主将も公認の「マヌケ姿厳禁ルール」とスコットへの愛

AI職人としての一面を持つミンウー・リー。ペア戦とはいえ、公式記者会見で対戦して勝ちたい相手と話していた世界No.1のスコッティ・シェフラーと初日に相まみえる(写真は26年AT&Tペブルビーチプロアマ)
この若手発信の「悪ふざけ」は、ベテラン選手や主将をも巻き込んでいる。普段は物静かで紳士的な最年長のアダム・スコットも、面白動画の輪にしっかりと加わり、一緒に爆笑しているという。
「アダムは成熟した大人だけど、僕らがふざけたり面白い動画を作ったりすると、すごく参加したがるんだ。彼の中にある子供っぽい一面を引き出せているのは本当に楽しいよ」とミンウーは語る。
この状況にはジェフ・オギルビー主将も大歓迎だ。「若い選手たちがTikTokカメラを構えているから、移動バスの中でマヌケな姿を撮られないよう、大人は気をつけなきゃいけない(笑)」と記者会見で笑いを誘った。
しかし、ミンウーがいじるのは単なる悪ふざけではない。裏にはベテランへの深い敬意がある。「アダムは長年このチームの背骨だった。2度目の出場となる僕たちがステップアップして、アダムに余計なプレッシャーを感じさせず、ただ純粋にゴルフを楽しんでもらいたいんだ」と本音を明かした。若手が盛り上げ役を買って出ている理由は、長年チームを支えてきたスコットへの恩返しでもあったのだ。
初日第1マッチの「切り込み隊長」として世界1位へ挑む!
「打倒アメリカ」という過酷なプレッシャーを前にしても、笑いでそれを跳ね除け、純粋にチームの時間を楽しんでいる今年のインターナショナルチーム。
この圧倒的な結束力を胸に、ムードメーカーのミンウー・リーは大会初日フォーボールの第1マッチ(オープニングゲーム)で「切り込み隊長」として出陣。イム・ソンジェと組み、米国選抜の世界No.1スコッティ・シェフラー&サム・バーンズ組という最強ペアに挑む。
個人の名前を捨て、ひとつの「盾」として笑いで一致団結した世界選抜が、ついに絶対王者の打倒へ向けて牙をむく。
撮影/岩本芳弘
