圧巻のスタートと、息詰まる終盤の攻防
長﨑は初日、前半で7連続バーディを奪う「29」という驚異的なロケットダッシュを見せ、6アンダーで単独首位に立つ。2日目も前半に4連続バーディを含む「31」をマーク。生命線である高いフェアウェイキープ率とパーオン率を武器に、スコアボードの最上段を快走した。
しかし、PGAツアーへの道は決して平坦ではない。勝負のサンデーバックナイン、彼を追いつめたのは、昨年の同予選会を制して本戦へ出場した小林大河を兄に持つ、小林翔音(こばやし・しょーん)だった。
2日目の前半を長﨑と同じ「31」で回った小林に対し、長﨑は4打のリードを持って終盤を迎える。しかし16番ホール、長﨑はティーショットを左にひっかけて痛恨のボギーを叩き、差は3打へと縮まった。続く17番は両者ともにフェアウェイキープから2オン2パットのパー。息詰まる重圧の中、3打差のまま最終18番へと向かった。
手に汗握る18番ホール——見せた土壇場の強靭なメンタル
小林はドライバーを鋭く振り抜きフェアウェイを捉える。対する長﨑は3Wで手堅くフェアウェイへ。ここでドラマが起きる。安全策をとったはずの長﨑が、セカンドショットをややダフり、グリーン手前にショートしてしまうのだ。隙を見逃さない小林は、見事なセカンドショットでピンそば約3メートルのバーディチャンスにつける。ギャラリーと化した日本のトップアマたちから感嘆の拍手が湧き起こった。

勝負のサードショットはスピンがかかったナイスアプローチでピンそば3.5mへ
だが、長﨑は極限状態でも冷静だった。勝負のサードショット、絶妙なスピンコントロールで放たれたアプローチショットは、ピンそば約3.5メートルにピタリと止まる。周囲の選手たちから思わず「うまい」と声が漏れるほどの一打だった。
続く長﨑のパーパットは惜しくも外れたものの、残すはワングリップほどのボギーパット。小林がバーディを沈めてプレッシャーをかければ、万が一ということもあった。しかし、勝負をかけた小林のバーディパットはわずかに外れ、勝負あり。長﨑は返しのボギーパットを確実に沈め、2打差で逃げ切り優勝。激闘に終止符を打った。
東北福祉大での切磋琢磨と、松山英樹の後輩としての誇り

ボールには「世界の長﨑」の印字があるほど、世界規模の活躍が夢と語る長﨑煌心が見事、ベイカレントクラシック by レクサスの出場権を獲得した。なお、2位~10位タイまでの10人にはプロアマ戦の出場権が与えられた
試合後、安堵と喜びが入り混じる表情を見せた長﨑は、「PGAツアーに出られるということは、まだ実感は湧かないんですが、とても嬉しいです」と素直な心境を吐露した。終盤の苦しい展開にも耐え抜いた強さの裏には、大学進学後の成長がある。
「大学に入って一番伸びたのはメンタルです」。長﨑が身を置く東北福祉大学には、昨年の日本アマ王者である佐藤快斗(3年)をはじめ、田村軍馬(4年)や西山陽斗(1年)といった今大会に出場した日本のトップアマがひしめき合っている。日々の熾烈なレギュラー争いこそが、土壇場での精神力を鍛え上げたのだ。
加えて、2位グループに3打差をつけた初日の夜、ゴルフ部の阿部靖彦監督に報告すると、「松山の大会だから、(それくらい差があるなら)後輩の煌心が優勝しないとな」と強烈なゲキが飛んでいたという。ジュニア育成に力を入れる中嶋常幸の合宿や、幼い頃から地元・宮崎のダンロップフェニックスで親交のあった偉大なる先輩・松山英樹。その後輩としての意地と誇りを見せた。
兄弟の固い絆と、世界最高峰の舞台へ向けた静かな闘志

1月のソニーオープン・イン・ハワイでは弟・大星(右)のキャディを買って出た兄・煌心(左)。「弟の予定次第だが、10月は立場を逆転させて挑みたい」と語る(撮影/岩本芳弘)
長﨑を語る上で欠かせないのが、弟・大星(たいせい)の存在だ。今年1月の「ソニーオープン・イン・ハワイ」では、日本人最年少出場を果たした弟のキャディとしてPGAツアーの空気を肌で感じた。
「海外の選手は体が大きく、飛距離も球筋もすごかった。でもその中で、弟は小さな体でもしっかり張り合えていたんです。次は僕自身がプレーヤーとして戦ってみたい」
そう語る長﨑に、本戦でのキャディについて尋ねると「今度は弟にキャディをさせてあげようかなと思っています(笑)」と、茶目っ気たっぷりに笑った。兄弟で刺激し合い、高め合うその絆が、彼のゴルフをより逞しくしている。
目前に迫る「ベイカレントクラシック by レクサス」。長﨑はすでに、世界最高峰の舞台で“観るべきもの”を定めている。
「松山選手はもちろんですが、僕はアイアンが得意なのでコリン・モリカワ選手のショットを参考にしたい。パターは少し苦手なので、ジャスティン・トーマス選手のパッティングを見てみたいです」と目を輝かせる。
しかし、ただ見学しに行くわけではない。トッププロたちが極限のセッティングの中で、どうスピンをかけ、どうアプローチするのかを学びつつ、「自分のゴルフはまだ『若い』ゴルフだとは思いますが、それでもちゃんとスコアをまとめられるんだぞ、というところを見せつけたい」と静かな闘志を燃やす。
「出場するからには優勝を目指していきたいですが、まずはしっかりと自分のプレーを突き詰めたい」
東北福祉大の系譜を受け継ぐ若き才能は、横浜カントリークラブの難セッティングにどう立ち向かうのか。世界を知るトッププロたちを相手に、恐れを知らぬ18歳の挑戦が幕を開ける。(文/山口哲平)
Hideki Matsuyama Amateur Challenge Presented by LEXUS最終順位
1位/9アンダー/長﨑煌心(東北福祉大学1年)
2位/7アンダー/小林翔音(日本大学3年)
3位/6アンダー/栗原遥大(大阪学院大学3年)
4位/4アンダー/武田紘汰(近畿大学1年)
4位/4アンダー/神永直輝(埼玉栄高校2年)
6位/3アンダー/小林匠(大阪学院大学4年)
6位/3アンダー/亥飼陽(日本体育大学3年)
6位/3アンダー/松山茉生(福井工大付属福井高校3年)
9位/2アンダー/藤井太己(東海大学九州3年)
10位/イーブン/西山陽斗(東北福祉大学1年)
10位/イーブン/本大志(米アリゾナ大2年)
12位/1オーバー/田村軍馬(東北福祉大学4年)
12位/1オーバー/佐藤快斗(東北福祉大学3年)
14位/3オーバー/石口寛樹(興国高校2年)
15位/5オーバー/清水蔵之介(日本大学3年)
16位/14オーバー/米誠ノ心(日本大学3年)
※出場選手は「世界アマチュアゴルフランキング(WAGR)上位8名」「日本アマチュアゴルフランキング上位8名」の16名

