静岡県のグランフィールズカントリークラブ(7156ヤード・パー70)で開催されている「ドラッグストア・コスモスカップ」。ムービングデーと呼ばれる大会3日目、首位と1打差の2位からスタートしたベテラン・岩田寛が圧巻のゴルフを見せた。各選手が強い風と傾斜の強いピン位置に苦しむ中、岩田は後半インコースの10番・11番・12番で怒涛の3連続バーディを奪うなどバックナインで「31」をたたき出し、7バーディ・1ボギーの「64」をマーク。通算15アンダーまで伸ばし、2位に5打差をつける完全な独走態勢に入った。今年6月の国内メジャー「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」を制している45歳のベテランが今回優勝を果たせば、45歳以上での年間複数回優勝(年間2勝以上)としては2014年の藤田寛之以来、実に12年ぶり史上7人目(18例目)という歴史的偉業となる。しかし、他を寄せ付けない強さを見せつけながらも、ラウンド後の本人の口から飛び出すのは耳を疑うような言葉ばかりだった。

地元の強者・勝亦悠斗も「同じゴルフ場をまわっているのかな」と呆然

この日の岩田の凄まじさを誰よりも肌で感じていたのは、同組でプレーし通算10アンダーの単独2位につけている地元・静岡県出身の勝亦悠斗(32歳)だ。前半からピンチの連続だったと振り返る勝亦は、同伴競技者の異次元のプレーをこう証言する。

「今日は寛さんがうますぎました。同じゴルフ場をまわっているのかなと思うくらいでした」

昨季フェアウェイキープ率1位に輝き、1R・2Rと首位を守ってきた地元の強者に、ここまでの感嘆を抱かせるほどの完成度。勝亦自身も「昨日までは自分が同伴競技者にそう思われていたのかなと思いながら、1日くらいこういう日もあるよなと思ってラウンドしていました」と、ただただ先輩のプレーに舌を巻くしかなかった。

「苦手なグリーン」で驚異の「24パット」

画像: 「パターが入ってくれた」と今日のラウンドを振り返った岩田寛

「パターが入ってくれた」と今日のラウンドを振り返った岩田寛

同組選手をそこまで圧倒した岩田だが、ホールアウト後のインタビューでは驚くほどテンションが低い。自身のプレーについて問われると、「ラッキーも何個かあり、ショットは昨日とかのほうが良かったんですけど、パターが入ってくれたって感じですね」と、まるでたまたまスコアが出たかのように振り返った。調子についても「良かったり悪かったり。いいものもあれば悪いのもあるし、なかなかずっといいっていうのは続かないですね」と淡々と語るのみだ。

実は開幕前に「ここのグリーンは得意じゃないというのを思い出した」と漏らしていた岩田。しかし、「苦手」と公言していたグリーン上で、第3ラウンドの平均パット数は1.5000(全体4位)、18ホールの総パット数は驚異の「24」を記録してみせた。

画像: 「ショットは2日目のほうが良かった」と話す岩田だが、パーオン率は全体の10位タイと上位に位置している

「ショットは2日目のほうが良かった」と話す岩田だが、パーオン率は全体の10位タイと上位に位置している

3日目までのトータルの「パーオン率」は70.371%で全体3位。第3ラウンド単体に限れば66.667%で全体10位タイ。ショットで確実にチャンスを作り、苦手と言いながらグリーン上で沈めきる圧巻のゴルフを展開している。

5打差の独走状態にあっても、ベテランの探求心が満たされることはない。「練習したいっていう気持ちのほうが今は強いんで。調整するところがいっぱいあるんで」とボヤき節は止まらない。

いよいよ迎える最終日。優勝に向けた抱負を聞かれても、「初日から今日までと変わらずに我慢ですかね。ひとつずつ、はい」と冷静そのものだ。

首位で最終日を迎えた直近2大会(2024年BMW日本ゴルフツアー選手権、カシオワールドオープン)ではいずれも逃げ切り優勝を果たしている。自己評価の低さと裏腹なスタッツ。データが示す圧倒的な実力と、決して満足しない無欲のメンタルが、岩田を導いていく。

写真/有原裕晶


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