
気持ちでつかんだツアー通算30勝目、メジャー4冠、永久シード。その喜びを全身で体現した
怒涛のバックナイン、17番で首位を捉えた「強気のガッツポーズ」

13番、14番の連続バーディで1打差にすると、17番ホールで首位タイに並びそのままプレーオフへ持ち込んだ
最終組から出た申ジエは、2番でバーディを先行させるも、続く3番でボギーを叩く立ち上がり。直後の4番ですぐさまバーディを取り返したものの、気温18.1度、冷たい雨が降りしきる難しいコンディションの中で我慢のゴルフが続いた。前半9番を終えた時点でスコアは通算8アンダー。首位を快走する桑木志帆とは3打差が開き、ビハインドを背負ってサンデーバックナインへと折り返した。
この重苦しい空気を振り払ったのが13番(383ヤード・パー4)のバーディだった。
16メートルという長いバーディパットを沈めると、右手を天高く突き上げて会心のガッツポーズ。勢いそのままに迎えた14番では、3打目の120ヤードを9番アイアンで打ち、ピン左1メートルという絶好の位置にピタリと寄せた。桑木が長めのパットを凌いでパーとする中、申は確実に沈め、今度も右手で力強くガッツポーズ。1打差に肉薄し、ギャラリーからは大歓声と口笛が沸き起こった。
さらに16番でしぶとくパーセーブを決め切ると、迎えた17番。ここでも50センチのパットを確実に沈め、ついに通算11アンダーで首位タイに並び、勝負はプレーオフへと持ち越された。
「日本の歴史にもっと残りたい」メジャー4冠への思い
今回の勝利には、並々ならぬ特別な思いが込められていた。申ジエにとって、日本女子オープン制覇は史上初となるメジャー4冠がかかるだけでなく、永久シード獲得という大きな意味を持っていたのだ。
「昔よりはチャンスが来るのが少なくなっていて1試合1試合がすごく大事。心から一生懸命頑張るしかないと思っています。今大会は無意識でも力が入るくらい、プレッシャーがあります。でもプレッシャーは好きだし、皆さんの応援が熱いので、最終日は全部を見せるプレーがしたい。ここにいる選手よりは私は経験があるので、調子がいい桑木選手と回ればいい流れで勝負できるかなと思います」(申)
ベテランならではの覚悟。前日に語った通り「日本のゴルフ界の歴史にもっと残りたい」という強い思いが、我慢のラウンドを支え続けた。
死闘を制したプレーオフ3ホール目、言葉に詰まらせた歓喜の涙

「嬉しい涙というのが、今日わかりました」
桑木との一騎打ちとなった18番でのプレーオフ。互いに一歩も譲らない緊迫した展開が続くなか、決着がついたのは3ホール目だった。集中力を研ぎ澄ませてピン右の4.5メートルの優勝パットを沈めた瞬間、申ジエは両手を挙げて渾身のガッツポーズ。そのまま天を仰ぎながら上体をのけぞらせると、苦楽を共にしたキャディと熱く抱き合い、「フーっ」と大きく息を吐き出した。

3ホールのプレーオフ後、お互いを称え合った桑木と申
惜しくも敗れた桑木は「ジエさんがいいプレーをしていた。悔しいです。信念……気合を感じました」と勝者に脱帽しつつ、「私も80%でプレーできていた。あとは気持ちでした」と激闘を振り返った。
直後の会見では、申ジエが「優勝で泣いたことはない。この『日本女子オープン』は過去に3回ほど2位を経験していて、優勝が近いと感じていた大会でした。今日はいいプレーをして歓声もすごかった。今までは嬉しさから来る涙がわからなかったけど、今日わかりました。この優勝は本当に嬉しいです。本当にありがとうございます。(今大会に)優勝すると、ゴールドのバッチがもらえる。これが欲しかった」と、言葉に詰まりながらもあふれる喜びを語った。

最後には最高の笑顔を見せた
「あと一勝は近いと思っていたけれど長かった。ずっと待っていた優勝、この優勝のために頑張っていました。(この優勝で)私のゴルフはまだ行くと感じました。永久シードも取ったので、ずっとゴルフができる。これで満足ではなく、気持ちを切り替えて新しい出発点としていきたいです」
通算30勝、メジャー4冠、そして永久シード。過酷な重圧と冷たい雨を乗り越え、ついに日本ツアーの歴史にその名を深く刻んだ元世界女王は、万感の思いを胸に賜杯を掲げた。
撮影/岡沢裕行
